欺す衆生

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103395324

感想・レビュー・書評

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  • 話が上手くいき過ぎ。でも、回りくどくないのでどんどん引き込まれて、読むのをなかなか止められなかった。
    そういう意味では読んでる方も欺されたのかも。
    とはいえ、内容は正しく「反吐が出る」内容である。

    最初はまだ「良心」が見え隠れしていて、家族のためにお金を稼ぎ、それでも家族にはそっぽを向かれてかわいそうな人だと思ったが、とんでもない。
    自ら「ビジネスマン」を名乗りながらヤクザと詐欺を重ねていくのだから。
    こんな話がハッピーエンドを迎えるわけはなく、清々しい気持ちになるわけもない。
    どんな風に着地するのか、ただそれだけが知りたくて読み進めた。
    最後はなんだか煙に巻かれた気がするのは気のせいか。
    主人公がなぜ詐欺師の才能があったのかは最後まで謎だし。最初は気の弱い、仕事の出来ないサラリーマン風だったのに。

    オレオレ詐欺を禁じ手といい、強欲な金持ちだから欺され搾取されるのは当然というような書き方をしていたが、だからと言って詐欺が許される行為ではないはずである。
    腐った社会に実際自分は生きているんだと痛感した。

  • 読み進めば進むほど恐い…ただただ恐い。
    だけど、止まらん。
    これが恐いもの見たさ。
    隠岐は大丈夫なのだろうか?
    親が親なら子も子。
    娘たちがこれまた最悪。

  • ページをめくる手が震えた。まさに怖いもの見たさ。

  • 悪徳業者・横田商事で詐欺まがいの商売をさせられていた隠岐。
    社長が殺され会社がなくなったのを機に、
    過去を消し去ろうと真面目に働くが、
    元・横田の因幡が一緒に事業を立ち上げ一儲けしようと持ちかけてくる。

    原野商法、牛肉商法。
    実際にこういう詐欺はあったのだから、
    書かれていることは現実に則しているのかもしれないけど
    こんな簡単にことが運んで儲け続けられる?と 腑に落ちない。
    いろいろな場面で、人の感情についてリアリティがないように思える。
    こんな男が、こんな家族に対して、
    いつまでも家族のため家族のためって…
    白々しい…


  • だましてだましてだまされてだまされて、
    なんか出てくる全員が詐欺師、
    最後まで色んな登場人物にだまされ続けられた。
    また、ストーリーの中に実際に起こった事件やエピソードなども散りばめられていて、ストーリー的にも500ページ一気に読みすすめさせられました。面白かった。最後までだまされた。(いい意味で)

  • 面白かった。欺し続けた人間の末路に何とも言えないものを感じた。

  • 久々に引き込まれたノワール小説。欲にまみれた人間模様が怖しいほど描かれている。
    最初は騙された側の隠岐が、借金や家族を守る為詐欺に手を染めたのが、本人の意思に関わらずドンドン大きな詐欺に手を染めていく。翌日仕事があるにも関わらず、一気読み。

  • 久しぶりに小説を読んだ。読み始めたらぐいぐい引き込まれて、あっという間に読み終えてしまった。
    豊田商事事件の残党(投資詐欺グループ)とそれに絡んでくる経済ヤクザをベースにしたお話。ここだけの話、おいしい話、楽して金儲けに群がる面々を見ていたら、蜘蛛の糸を思い出した。

    小説内にチラッと登場する怪しい単語の数々。グリコ森永事件、原野商法、和牛商法、投資商法、地面師、ホステス殺人事件、金富士、連続保険金殺人事件、オウム真理教…、そして時の流れは容赦なくバブルとバブル崩壊へとつながっていく。とにかく魑魅魍魎がする跋扈する物語だった。投資詐欺、高利貸し怖い…。

    1980年から2000年代の悪徳商法事件の集大成みたいな本で、途中からこれは隠岐の「こうだったらいいなぁ…」という幻想、妄想なんじゃないかと思ったりもしたけど、砂州が凍り付いて動けなくなっていたりする描写があるから幻想ではないのかもしれない。正直わからないまま読み終えてしまった。

    人間を動かす原動力は金で、群がる人間すべてを飲み込んでこの世は稼働しているのか?政治、経済もそうやって回っているのかと思った。薄ら寒くなった。読んでいると「真面目にやってるのがバカみたいじゃん…」と思ってしまったのは内緒。とにかく騙したもの勝ちの世界だった…。

    隠岐は因幡のあたりで感覚のネジが飛び一線を越えてしまったように思う。人を騙して欺いて自分の心や気持ちも欺き全てが麻痺してしまったのだろうか。

    映画にすると面白いんじゃないかな。たぶん…。

  • 読書備忘録577号。
    ★★★★★。
    社会を揺るがす大事件をモチーフにエンターテイメント小説に仕立てることに掛けては右に出るものなし!
    面白過ぎました!
    悪質な詐欺商法で有名となった豊田商事。この作品においては横田商事。ただ、この物語では横田商事の話ではない。
    主人公隠岐隆は元横田商事社員。横田商事が潰れたあと、弱小文房具メーカーの社員として妻と娘2人と慎ましやかに暮らす。そこに現れた同じく元横田商事の幹部因幡充。横田の同じ轍を踏まない詐欺商法を隠岐に持ちかける。
    原野商法。全く価値のない原野を、大規模開発が予定されていると騙し高額で売りさばく商法。
    詐欺は見事に成功し、次のステップに移行する2人。
    次は和牛。存在しない和牛を買わせ、高額配当で還元するという詐欺。これも順調に伸びる。
    隠岐は身の安全の為、表の職業として投資顧問会社を立ち上げ、こちらも順調に成長する。しかし、この会社を任せていた社員に持ち逃げされ、その補填の為に詐欺で得た資産を当ててしのぐ。災厄は突然降りかかってくる。やくざのフロント企業を仕切る蒲生という男から連絡があり、詐欺行為と損失補填のカラクリで強請られる。下手に出れば骨の髄まで吸い尽くされると覚悟した隠岐は蒲生と一蓮托生のビジネスを持ちかける。
    ひとまず危機を回避した隠岐だが、次から次に困難が襲う。その都度、困難を回避するために人を騙し、陥れ危機を回避していく・・・。
    まさに人(衆生)は他人を騙す生き物。
    隠岐の会社を乗っ取る為に社員として潜り込んだ保険金詐欺殺人犯の聡美との騙し合い。
    再び原野商法での中国マフィアとの騙し合い。
    中国マフィアを渡り合うために、やくざと更に深い抜けられない沼にはまり込む隠岐。
    アフリカの経済支援を偽ったリベリア・ファンド詐欺。
    結婚詐欺師として長女に近づき、隠岐の全財産を騙し取ろうと狙う男がとの騙し合い。
    あらゆる騙し合いに相手の上を行く戦略で生き残る隠岐。そして、驚きの結末。めっちゃ楽しい結末。
    凄い!まさにエンターテイメント小説。映画化したら面白いと思う。

  • 詐欺師にこんなに感情移入するとは思いませんでした。
    豊田事件をモチーフにした導入部から、主人公が次第に詐欺の才能を開花させていく裏サクセスがハラハラします。えぐい展開が沢山在りますが、特別グロもなくぐいぐいと読まされてしまった。
    どんどんスケールアップしていく詐欺内容と、次第に壊れていく家族にはどう手を付けて良いのか分からない所もギャップが有って引き込まれます。傑物も家族がアキレス腱っていうのは分かります。
    弱い所を狙わない詐欺でも人を騙している事には変わり有りませんが、美学の有る犯罪小説てのはやはりとてもいいものです。

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著者プロフィール

1963年、大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部文芸学科卒。2010年『機龍警察』で小説家デビュー。12年『機龍警察 自爆条項』で第33回日本SF大賞、13年『機龍警察 暗黒市場』で第34回吉川英治文学新人賞、15年『コルトM1851残月』で第17回大藪春彦賞、『土漠の花』で第68回日本推理作家協会賞、19年『欺す衆生』で第10回山田風太郎賞を受賞。近著に『暗鬼夜行』『奈落で踊れ』『白日』『非弁護人』『機龍警察 白骨街道』などがある。

「2021年 『ビタートラップ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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