しんせかい

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 857
感想 : 140
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  • Amazon.co.jp ・本 (163ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103503613

感想・レビュー・書評

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  • 第156回芥川賞受賞作。

     受賞作品はなるべくチェックはしている。本作品も、あの富良野塾のOBが、そこでの体験を元に記したことも知った上で読んだ。
     正直、微妙だ。私小説的な作品では『苦役列車』(西村賢太著)、『共喰い』(田中慎弥)等、後世に残りそうな力作が近年あり、どうしてもそれらと較べてしまう。うーん、かなり微妙だ。

     自分の十代の【谷】―すなわち富良野塾だ―の修行体験を淡々と記したもの。時折、自分で自分を見つめるかのような、金縛りの時に出会う幻影のような男の存在も、それがなんの暗喩だったのかうかがい知れない。ただ、単に、淡々と1年間の日々が綴られていく。

     一時、芥川賞に顕著だった(と思っている)、スタイルが突飛な(斬新な?)、表現力が注目を集めるような作品ほど、奇をてらった文体でもないけど、読点で繋いでく、稚拙な文体も、肌に合わなかった。

    「・・・といったからで、だからそんなことはほんとうにたまにしかなくて、なのにけいこは彼女だということになっていて、仲が悪いわけでもなく、むしろ良かったし、だから強く否定するのも変だし、否定する理由もとくになかったので、それはたぶんけいこも、だからそういうことになっていて」

     って、お前は「北の国からの」の純かぁ!とイラついた。

     この文章も、微妙だ。

    「・・・のだけどさすがに【先生】の本職である脚本家についての授業はむつかしく、少なくともぼくにはむすかしかった。」

     どことなく素朴で、なんか良いのかもしれない。でも、どこか、なにか足りないと思う気持ちのほうが強く、こうしたボーダーライン上の表現を、どっちに捉えるか(良いか、悪いか)で、本作の評価が決まるのかなあ。

    うーん、微妙だ。

  • よくわからん

  • 俳優と脚本家養成のための「谷」.2期生として入っての1年間を自給自足的な生活を通して描く.スミトの色々考えたり思ったりしていることとほとんど喋らないことのギャップがこの物語の全てだ.心の中のぐるぐるした事をそのまま吐き出したかのような文章,文体がゆったり船に揺られているかのような感があり,軽い酩酊気分で読み終えた

  • 芥川賞・・・って何故?~まだやっていない恋人と別れ、北海道にやってきて、脚本家の先生の下で、俳優志願者やシナリオライター志願者と共に、俳優修業というよりも、谷作りに励む。1期生のいる中で、2期生として1年を過ごし、1期生が卒業して、1年谷で過ごして1年後谷を出た。関西の倉庫で働いていて、間違って配達された新聞の広告を見て応募し、新宿に宿をとって新橋で試験を受けて合格したのだったが、前日深夜、新宿の公園で仔アライグマを飼っているホームレスが練炭自殺をすると言っていた気がするのだが…~明らかに倉本聰が作った富良野塾。まだ、あるんですね

  • 芥川賞受賞作というから読んでみたが、やはり芥川賞受賞作に面白いものなしというか純文学とはそう言うものなのか?しかし自分の世界に閉じこもった独善的なものが多いように思うし、日本独特とも思える私小説的なものも多いように思える。本作も倉本聰の富良野塾での経験を書いただけの悪く言えば日記みたいなもので読むに値しない、二度とこの作家を読むこともないだろう。

  •  第156回芥川龍之介賞受賞作。

     俳優を目指す主人公が、俳優と脚本家を育てる【谷】での共同生活に参加する。彼の名はやましたすみと。読者は間違いなく、私小説?倉本聰氏が主催する富良野塾?と、ピンとくるだろう。しかし主人公はかの脚本家を知らずに参加したらしい。読み進めるほど、浮世離れした彼から目を離せなくなる。小学生の作文のような(いい意味で)ピュアな文章。澄んだ目を通して描かれる情景。
     物語は淡々と進むし、何も起こらない。ザ・純文学ってかんじ。「コルバトントリ」よりは格段に読みやすかった。

  • スミトの共同生活が淡々と進み何もなく終わった。
    混沌としている。
    純文学って難しい。

  • 第156回芥川賞受賞作品の山下澄人氏「しんせかい」読了。
    淡々としているがゆえに、山もなければ谷もない、青春小説と呼ぶには無機質で不可思議な小説が出来上がった感はあれど、最後の2行で一気に引き込まれる。ただ、読む人によっては一気に否となりそう。
    もう一作品、掲載されている短編がありますが、掲載順が反対だともう少し「しんせかい」のイメージがつかみやすかったかも。
    まあ、芥川賞らしい作品でした。


    『ゴロウ・デラックス』
    #239:2017年2月23日放送分

  • しんせかいをよみました。しんせかいは第156回芥川賞受賞作品です。

     主人公の「スミト」が著名な演出家のもとに弟子入りし、山奥の「谷」で共同生活を送るという内容です。この話は、作者である山下澄人さんが、青春時代を過ごした倉本聰率いる富良野塾での日々がモチーフになっています。富良野塾では俳優や脚本家を目指す若者が共同生活をおくりながら、地元の農家から依頼される作業の対価を生活費とし、暮らしています。そのような境遇においた若者のお話ということで、当然若者の青春群像劇が展開されるものと考えて読み初めましたがすこし景色が異なるようでした。

     「スミト」には地元に残してきた恋人未満の女友達、「谷」で仲良くなった女性などがでてきますが、青春小説にありがちな男女の思いの交差はありません。また、「谷」での仲間たちとの会話も多くは空虚な交換が行われているにすぎません。彼のコミュニケーションに難があるのか、それともフィクションの中に主人公が存在しているのか私の中の疑問が芽生えながら話は終盤になり、スミトは読者に対して最後に思いも寄らない言葉を投げかけ物語りは終わります。スミトがここまで重ねてきた言葉はなんであったのかと考えさせられる物語です。

  • 富良野塾の二期生としての自分の経験を踏まえて…らしいのだが、珍しい体験というだけで何にも私には響くところのない芥川賞でした。文芸春秋の評をうっかり先に読んでしまって「裸の大将」という表現を見つけてしまったので、もう最初から最後までその語り口でしか入ってこなかったせいもあるのかも。
    何につけても青春は痛いものだが。

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著者プロフィール

1966年、兵庫県生まれ。富良野塾二期生。96年より劇団FICTIONを主宰。2012年『緑のさる』で野間文芸新人賞を、17年『しんせかい』で芥川賞を受賞。その他の著書に『ギッちょん』『砂漠ダンス』『コルバトントリ』『ルンタ』『鳥の会議』『壁抜けの谷』『ほしのこ』がある。

「2020年 『小鳥、来る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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