ねむり

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 1592
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  • Amazon.co.jp ・本 (93ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103534266

作品紹介・あらすじ

覚醒する新世界。目覚めつづける女の不定形な日常を描いた短編『眠り』が、21年ぶりの"ヴァージョンアップ"を経ていま再生する-ドイツ語版イラストレーション、日本版のためのあとがきを収録した、村上世界の新しい「かたち」。

感想・レビュー・書評

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  • 久しぶりに魂が喜ぶ?本に出会えました。
    美術書のような装丁で、挿絵も個性的で楽しめます。不眠から広がって行くお話です。

    個人的な事で恐縮なのですが…私は事象をなぞるような細かい理屈っぽい描写が好きで、そんな表現から自分の感覚が研ぎ澄まされ、キャッチした物で気持ちが高揚するという[流れ]が好きです。そこに芸術を感じます。

    この少し長めの短編小説は、その[流れ]を何度も楽しませてくれました。共感できる箇所も多数で…。何で村上春樹さんはこんなに女性のことがわかるんだろう。気持ち悪いくらいです。

    明瞭簡略だったり、言葉に言外の意味を含ませることが少なくなった最近の読み物では刺激が足りないので、とても楽しめました。

  • 村上節が軽減されてて読みやすい。眠れなくなった私が、自分の傾向によりただ生きていて、眠りによりそれが矯正される、その繰り返しと気付いて、眠るべき時間をを自分の世界の拡張に使う。トルストイの世界を隅々まで堪能したり、世界は明日もそのままと確信し眠る夫や子供を見つめたり…最後には死について、誰もいない世界で(今まさに起きているように)覚醒する事が死なのかもしれない、と思う。彼女が乗った車が男性に揺らされてひっくり返される、それは彼女が漫然と生きてきた世界から変化することを表しているのか、それとも事件なのか?なにかを自分から追い出したくて、1時間もプールで泳ぐ彼女。結婚当初から夫は醜くなり、自分は若返っている。世界から逸脱して逆走したいと感じているのかな?

  • イラストレーションブック・シリーズの一作。眠れなくなった主婦の日常を描く。トルストイを読み、プールで泳ぎ、何一つ変わらない日々の中で。

    途中までは、これぞ「春樹ワールド」っ感じで淡々と進むんだけど、ラストは「ここで終わり?」と気になってしようがない。覚醒した暗闇、にも魅かれるけど。

  • 装丁と挿画が幻想的で美しいことに感激します。いつまでも眠らない主人公(ちなみに不眠症ではありません)、ありゃ~どうしたの? と思いながらぐいぐい引き込まれてしまう、ある種の狂気に脱帽。とても短いお話なのですが、生きる、ということについて苦悩した哲学的作品に仕上がっていると思います。

    「……それでは私の人生とはいったい何なのだろう? 私は傾向的に消費され、そのかたよりを調整するために眠る。それが日々反復される。朝が来て目覚め、夜が来て眠る。その反復の先にいったい何があるのだろう? 何かはあるのだろうか? いや何もない、と私は思う。たぶん何もない。ただ傾向と是正とが、私の体の中で果てしない綱引きをしているだけだ」

    あとがきを見ると、この作品は、「ノルウェイの森」の大成功の後、作者が小説を書く気持ちになれなかったころに書かれたようです(それでもこんな短編が誕生するから凄い……)。きっと世間の称賛のみならず羨望やら怨嗟といった様々なプレッシャーやストレスがあったのかもしれないな……。

    「これが本来の私のあるべき姿なのだ、と私は思った。大事なのは集中力だ、私はそう思った。集中力のない人生なんて、目だけ開けて何もみていないのと同じことだ」

    主人公の危うい苦悩にはらはらとし、その眠ることのない哲学にちょっぴり共感しながら楽しく読了。
    そして私はぐっすり眠ります(^^♪

  • (2024/1/20読了)
    タイトルを見て、既読の本と思ったけど、読書記録にはないし。で、読み始めたら、読んだ記憶がぼんやりと。でも、最終的にどう言った話だったのか、イラストにも覚えがない。
    そして、本書巻末の村上春樹さんのあとがきを読んで納得。「TVピープル」という短編集に収録されていたのだった。成功を収めた後、書けない時期を経て書かれたとのこと。
    「TVピープル」を私が読んだのは2014年。このブグログの本棚に収まっているので感想を見たら、今とは違う受け止め方をしていた。
    17日間眠らない女性。眠らない日が進むほどに、体からも頭からも余計なものが(余計…)削ぎ落とされていく。
    その余計なものは、多分、妻となった者や母となった者の心の奥底にある、そう思ってはいけないモノなのだと私は思う。
    男性がこの感情を言葉に表していることは、流石だと思う。
    独特なイラストは、本書は実はドイツの版元である美術書を出しているデュモン社から出たモノで、それを日本版にしたからだそう。最初のセミには驚愕した。
    同じような装丁で、「バースデーガール」がある。内容は忘れてしまったけど。

  • 村上春樹の本てなんでこんなにももう一回読み返したいって気分になってと終わるんだろう

  • 村上春樹の、少し長めの短編。力を抜いて読める。

  • 定期的に村上春樹を読み漁る時期が来る

  • 1980年代に書いた本を、イラストを入れて書き直したという本だというが、私は初めて読んだ。
    就寝前に読み始めたが、先が気になり、一気に読んでしまい、その後眠れなくなった。

  • あなたにはあるものが私にはない。でも、それって変?変ではあるけど許容できる?
    捉え方一つで無限の可能性になること。
    退屈でどうしようもない人生を二度と忘れられない一日に誰しも変えられる。
    もう、戻ってこれないかもしれない、それでもやりたいならやればいい。あなたの人生はあなたのもの。

  • 素敵だった 前に読んだ同じ短編よりも少しバージョンアップしてる

    同じ毎日を繰り返すことの退屈さ、
    永遠に続くことなどないのに、一定期間は本心でなくても繰り返すことができる、
    そんな自分が分離しているような感情に以前はよく悩まされた

    「それではあの時代に、私が本を読むことで消費した厖大な時間はいったい何だったのだろう?」p44


  • 眠れなくなってから17日目の女の話。
    歯医者の夫も小学生の息子も女が寝ていないことに気づいていない。夜がふけると女は長編小説を読み、アルコールをたしなむ。それでも眠気は訪れない。日中もチョコレートを齧りながら読書に励む。睡魔はやってこない。
    誰もいない夜の港に車を停め、物思いにふける女。その車を揺らす二人の男。彼らはいったい何なのか。なぜ女は眠れないのか。答えは教えてくれない。(たぶん答えなんか最初からない)

    ------------------------------

    読みやすいかわりに、わかりやすい答えを用意してくれない村上春樹の短編。
    ふんふん言いながら簡単にページをめくっているが、理解できているかどうかはわからない。夜、寝ているが本当に寝ているかはわからないし、本当に日中起きているかだってわからない。読み終えた後、そういうことを考えた。自分が何を考えているのかわからないし、頭を使って考えているかもわからない。

  • 眠れない夜に。どこに行き着く訳ではないけども。

  • 私の大好きな短編「眠り」のイラストレーション付き単行本。
    深い群青と鋭いシルバーのコントラストがとても素敵な雰囲気をつくりあげています。
    「眠り」は一度読んですぐ気に入って、読み返すのはそれ以来なのですが、そのときとはまたちがった面持ちがありました。
    どんよりとたちこめる死の影と、果てしなく果てしなく広がる精神世界。
    死ぬということが、永遠に覚醒し続けることだったら?
    底のない暗闇をただじっと見つめていなければならないだけだとしたら?
    まるで私も彼女のシティに閉じ込められたかのような息苦しさを感じていました。
    アンナカレーニナ読みたい。
    あとがきで、この短編の執筆背景について語ってくださっているのもファンとしては嬉しい。
    窓から見える人々は楽しげで、陽気で、鮮やかな原色の花があふれる、春のローマ通りの光景。
    やれやれ、これからまたなんとかやっていくしかないな、という爽やかで気持ちの良い諦念にも似た決意。

  • 2016/8/31
    村上春樹ではある。

  • やっぱり村上春樹の文体は心地いいなあ。
    アフターダークにも似た感覚。
    時間を置いてもう一度読もうと思う。

  • アカデミーヒルズでの待ち時間30分で読みました。
    これまた独特の世界。
    カフカの変身を思い出しました。
    ちょっと気持ち悪いけれど、でもやっぱり好きです。
    ただ、表紙をめくったところにびっしり描かれたセミには、ちょっと勘弁して欲しいです。

  • 挿絵の評判が良かったが、あまりに主張してきてワタシはダメだった(- -;) 村上作品は自分の中でじっくり読みたいナ。

  • 新書くらいの厚さで新書を二回り大きくしたハードカバー。
    なんだか持ったときの感触が心地いい。
    絵本のように紙が厚いのも手触りが良かった。

    ふんわりした終わり方をするのかと思っていたら、
    ラストが後味が悪いというか、怖い終わり方でびっくりした。
    「世にも奇妙な物語」でやってもおかしくないような感じ。

  • ものすごく眠れない、不眠の時期にこの本と出会いました。
    不眠の女性のお話とのことで、運命だと思いました。

    これで共感しながら読める!と思ったのもつかの間。
    この本は、とてもよく眠れる本でした(苦笑)

    この本のページを繰ると、あっという間に睡魔が訪れ、
    毎回、深い眠りを満喫することができました。

    そんな訳で、私にとってこの本は、本来の意味での「ねむり」の本でした。

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著者プロフィール

1949年京都府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。79年『風の歌を聴け』で「群像新人文学賞」を受賞し、デビュー。82年『羊をめぐる冒険』で、「野間文芸新人賞」受賞する。87年に刊行した『ノルウェイの森』が、累計1000万部超えのベストセラーとなる。海外でも高く評価され、06年「フランツ・カフカ賞」、09年「エルサレム賞」、11年「カタルーニャ国際賞」等を受賞する。その他長編作に、『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』『街とその不確かな壁』、短編小説集に、『神の子どもたちはみな踊る』『東京奇譚集』『一人称単数』、訳書に、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『フラニーとズーイ』『ティファニーで朝食を』『バット・ビューティフル』等がある。

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