小澤征爾さんと、音楽について話をする

  • 新潮社
4.11
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  • Amazon.co.jp ・本 (375ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103534280

作品紹介・あらすじ

小説家はマエストロを聴き尽くす。東京で、世界の様々な場所で、時間を忘れ自由に語り合った一年に及ぶ日々。不世出の指揮者、その煌めく魂に触れる迫真のロング・インタビュー。

感想・レビュー・書評

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  • 村上RADIO 特別編
    小澤征爾さんの遺した音楽を追って【2024.4.29】
    https://www.tfm.co.jp/murakamiradio/
    https://ameblo.jp/yasuryokei/entry-12850421514.html

  • マエストロ×MURAKAMI

    音楽のことは全然わからないけど、正気の範囲をはるかに超えた音楽好きの春樹さんのおかげでまるで自分が小澤さんと話しているかのよう

    グスタフ・マーラーについて語り合う所が特に印象的

    #小澤征爾さんと音樂について話をする #小澤征爾 #村上春樹 #読書 #読了 #読書記録

  • 小澤征爾さんが亡くなられた時の、村上春樹さんの寄稿文。親友というより家族、いや自分の一部を無くしてしまったような哀しみが伝わってきた。

    インタビューと言うより二人のクラシック音楽を仲立ちにした音楽&人生談義である。
    村上春樹さんはジャズおたくだと思っていた。それは間違いだった。クラシックを含む音楽おたくだった。おたくは適切ではない。音楽は、村上さんの身体、生活の一部であり、理解も限りなく深い。たぶん、リズムとメロディが染み込んでいるのだろう。
    文章を書くうえで、音楽からリズムを学んだという村上さん。そういえば、長編もリズミカルな文章と独特な比喩にひきこまれ、あっという間に最後まで読んでしまっでいる。
    小澤さんの演奏に対する感想も、素人のそれではない。系統的に注意深く聴き込み、味わったものの感想だ。村上春樹、恐るべし。
    小澤さんに影響を与えた「カラヤン先生」とバーンスタイン。そして齋藤秀雄先生。小澤さんの骨格は齋藤先生からできている。
    スイスで若手音楽家にセミナーを開き、ロバート・マンさんと指導する章が圧巻だ。
    「ネジを締める」という追悼文の言葉も出てきた。小澤さんのマジックと若手音楽家のスパークで、弦楽四重奏が変容していく。そのさまを村上さんが、如実に文章で描いていく。
    二人の天才のスパーク、面白い!

  • 刊行当時入手して、おもしろく読了したことになっているが、何も記録がないので、2024年2月、小澤征爾の訃報を聞いて改めてじっくり読み直した感想を書く。

    ***
    小澤征爾が病後療養中だった2010年11月から2011年7月にかけてさまざまな場所で行われたインタビュー、村上春樹自身が録音した会話を書き起こして、小澤征爾とともに検討しまとめあげた本。指揮台に立てなかった期間ということで、世界を飛び回り先々の予定でいっぱいいっぱいで多忙だった状況ではとても息抜きにはなりえなかった音楽の話や過去の回想をかなりつっこんで引き出すことに成功している。その意味で、かなりの音楽好きで分析的に言語化できる作家がたまたま近くにいて話を聞き出して世の中に共有してくれたのは奇跡的なありがたいことだったと改めて思う。話し言葉は文字起こししてずいぶん整理してはいるだろうけど、小澤さん「とても」=「めちゃ」だったんだなあ…

    全体を通して、小澤征爾にとって、カラヤンはあくまで「カラヤン先生」、対するバーンスタインは「バーンスタイン」あるいは「レニー」であり、その指揮についての考えも師弟関係も対照的なものであったことがにじみでていた。そしてなにより斎藤秀雄先生の存在感、十代のうちに徹底的にたたき込まれた指揮者としてオーケストラを仕込む技術のおかげで、若くても言葉のハンデがあっても外国の一流オーケストラでいい仕事ができたのだと断言しており、自分が斎藤秀雄から受け取ったギフトを次世代に渡すためなら骨身を惜しまない姿勢だったのが印象的だった。
    ただ、(「狂言サイボーグ」と同じような)型を徹底的に叩き込むという方法に感謝しつつも、自分は相手に合わせた穏やかな指導をとったあたりが興味深かった(秋山和慶の追悼文に「臨終の床にあった斎藤先生が、小澤さんと僕の目を交互に見て「ごめんな」と言ったことがあるんです。「君らをよく怒ったのは僕が未熟だったから」。あの言葉がずっと、音楽や人間というものに対する小澤さんの愛の根源であり続けたのではないか」とあったが、つまり未熟な指導を乗り越えた指導を探って得られた結果といっていいのだろうか)。

    言葉などとびこえて音楽でコミュニケーションができるからいいのかと思いきや、言葉ができなくて外国の音楽家とじゅうぶんつっこんだ話ができなかったことを(繰り返し)すごく悔いているのはちょっと意外だった。政治的駆け引きから距離をおいたり、雑音が直接届かないぶんのびのびとしていらられるというメリットもあったと思うが、本人にとってはいろいろ不便でコンプレックスだったし、ほんとうは音楽についてプロフェッショナル同士でもっと議論したかったのかな…

  • 小澤征爾さんとの対談を春樹さんがまとめたもの。一流の音楽家と小説家が対談して、音楽という掴みどころのないものをどう言葉に置き換えるのか、とても興味深く読んだ。

    グールドに関しての話から始まり、小澤さんのバーンスタインやカラヤンといった指揮者との思い出、指揮したベートーベンやマーラー、あとはオペラについても語る。スコアを読みふけることや、楽団との関わり方など、指揮者がどうやって音楽を立ち上げていくのか、その世界を垣間見れた気がした。

    小澤さんの知識も記憶力もすごいのだが、それに食らいつく春樹さんもすごい。基本的には春樹さんが小澤さんに質問するような形で対談は進むが、その逆に春樹さんが会話をリードして小澤さんがそれに合わせるような場面もあり、即興的なジャズセッションを見ているような感覚になった。この二人の組み合わせって本当に貴重なものだと思うし、個人的にはクラシックに関して知らないことがたくさんでとても勉強になった。

  • 小澤兄弟の放談会の本を読んだあと、何かの拍子にこの本のことを思い出して読了。素晴らしい企画、素晴らしい本である。
    小澤征爾さんというのは当たり前だが音楽家であり、音楽を作るプロフェッショナルである。だから、小澤さんの考えていることを知るにはその音楽を聴けば十分なのかもしれないが、言葉でも知りたいというのが人情である。だがマエストロにその複雑すぎる思考(ですらないかもしれないもの)を自ら言語化してもらうのは大変な難題だろう。そこに果敢に挑み、私たちにも読めるようにしてくれたのが、言葉のプロフェッショナルである村上春樹さんである。
    春樹さんは昔からインタビューという形式に興味を持ち大切にしてきた。日本では対談という形にされがちなところを、インタビューと対談は全く違うとしてインタビューに拘っていた。その面目躍如とも言うべき一大インタビュー本である。
    春樹さんがインタビュワーに徹して交通整理しつつも、マエストロの記憶を深く深く辿っていくところが、やはりワクワクするほど面白い。あとがきでマエストロ自身が書いているとおり「すごい量の想い出がぶりかえし」「なんだかわからないけど、すごく正直にコトバが出てきた」様子がまざまざと想像できるのである。インタビューってとても難しいものだと思うのだが、こんなに上手にインタビューできたら聞く方も話す方も本当に楽しいことであろう。
    ベートーベン、ブラームス、マーラーなど、とりあげられている音楽そのものに興味のある人はもちろん面白いだろうが、もっと普遍的に、プロアマ問わず音楽というものに真摯に向き合ったことのある人は、きっと何か心に響くものを見つけられるに違いない。
    あと、章の間に「インターリュード」という項目があるのだが、ここの文字組が絶妙で、本当に間奏曲のように場面転換的に働いていて感動した。本文が一段組で息を長めに読むように組んであるのに対して、インターリュードは2段組で少しくだけたフォントでカジュアルに組んであり、軽い呼吸で読める感じなのである。おかげで章間でも巻を措くこと能わず一気呵成に読んでしまいましたがな。あー面白かった。

  • 162春の祭典、指揮が難しい。作曲者自身が上手く指揮出来なくなって改訂版を出したらしい※印税切れ対策?説も
    40 カラヤン先生は長いフレーズを作っていくことを重視
    レニー(バーンスタイン)は天才肌
    マーラー、オーケストラの使い方がすごく上手い。楽譜には指示ビッシリ
    マーラーは突然変異、ドイツ音楽の流れではスコア読めない
    オペラのセット、貸し出しで元をとる、ウイーン。
    ミラノ、オペラのブーイングは文化

  • 予想以上に面白かった。小澤征爾さんと村上春樹さんがCDを音楽をかけながら、「ここは」「ここは」としゃべっているのをそのまま書き連ねている、かのように見える。これはある種、掟破りなんだけど、絶妙のト書きがはいって、くつろいだ場に同席しているよう。小澤氏からお宝ネタを引き出す村上氏のクラシック音楽に対する博識ぶり(オタクぶり)、鋭い視点は特筆ものなのだけれど、本書を比類ないものにしているのは、さりげなく置かれた表現の的確さ、すなおさが真水のようにさわやかで、さらさらゆくよ、と軽快に流れていくから。彼は「文章はリズムだ。良い耳がないとよい文章は書けない」と中に挟まるコラムで企業秘密!を明かしてくれているが、やっぱりそうなんだ。文章自体だけではなく、会話にからめるコラムのありかた、要所要所で微妙に変えるフォント(字体)までリズミカルに構成された、これはひとつのセッション、演奏なのだ。もちろん、一番の腕の見せどころは、音楽を言語化するひとつひとつの練られた言葉。音を文章であらわすことを試みるひとはみな、これを勉強しましょう、と言いたい。プロとファンの、村上氏いわく「高い壁がある」関係。しかし「通路は見つけていくことが、何より大事な作業」そのとおりなのだ、あぐらをかいてはいけない。その努力を怠ってはいけないと、肝に銘じた次第です。

  • 小沢征爾とは、何者なんだろう。
    どうしてこんなにも、自分の好きなこたに向かっていくことができたのだろうか。

    この世代にはいるのだろうか?
    オノヨーコや、草間彌生、コシノジュンコ。塩野七生もそうか。

    戦争で抑圧されて、飛び出た世代。


    世代論だけではないと思うかわ。

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