- Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103534365
作品紹介・あらすじ
これが、世界で読まれるニッポンの小説! 日本と西洋、男と女、近代的生活その他のナンセンス、災厄など七つのテーマで選ばれたのは、荷風・芥川・川端・三島、そして星新一・中上健次から川上未映子・星野智幸・松田青子・佐藤友哉までの二十九の珠玉。村上春樹が収録作品を軸に日本文学を深く論じた、必読の序文七十枚を付す。
感想・レビュー・書評
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ジャンルを分けた新旧の作家の短編集。
テーマの分け方が、特に後半の「災厄 天災及び人災」がペンギン・ブックスらしい。序文を含め、村上春樹が3回登場するところもらしい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
三島由紀夫「憂国」切腹の描写で貧血をおこしてしまった
切腹を綺麗な物として捉えているせいか目を背けるタイミングを逃してしまった感じ
ホラーとかだと血みどろ表現も来るぞ!と分かるので心づもりが出来るのだけれどストレートに受け止めてしまった
切腹愛が凄いです -
まさしく福袋のような短編集でした。
初めて聞く、知らなかった作家もおり、知っていても未読の小説もたくさんありました。
ラインナップされた作家の守備範囲も広く、近代から2010年代まで男女ジャンル、時代背景まで多様でした。
結果、わたし自身の守備範囲も広がりました。この意味でも読んだ価値のある書籍だと思います。
個人的なベスト5をあげるなら
青来祐一 虫
佐伯一麦 日和山
中上健次 残りの花
国木田独歩 忘れえぬ人々
澤西祐典 砂糖で満ちてゆく
でも、
大庭みな子 山姥の微笑
阿部昭 桃
宇野浩二 屋根裏の法学士
内田百聞 件
星野智幸 ピンク
小川洋子 「物理の館物語」
もよかったな…。 -
阿部昭知れてよかった
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摂南大学図書館OPACへ⇒
https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB50140409 -
ジェイ・ルービン(Jay Rubin, 1941年 - )は、アメリカの日本文学翻訳家、研究者。ハーバード大学名誉教授。
特に村上春樹の作品を複数英訳したことで広く知られているが、芥川龍之介や夏目漱石の翻訳も行っており、また、日本語の学習書や文学評論も出版している。
(Wikipediaより抜粋)
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ジェイ・ルービンって誰だ、という素朴な疑問が、読み終わって数日後の今日、ついに解決された。彼が誰なのかわからないまま、村上春樹が序文を書いているという一点に惹かれて、図書館で借りた。海外の(おそらく村上春樹と何らかの関係がある)人が選んだ、日本人作家の短編を集めたアンソロジー。決して有名どころの作品ばかりではない。村上春樹自身、収録されている作品のうち、数作しか読んだことがなかったという。どんな作品に出会えるか心を躍らせながらページを開く。
一作目、永井荷風「監獄署の裏」。
二作目、森鴎外「興津弥五右衛門の遺書」。
…無理。飛ばす。ほとんど返却しそうになる。
三作目、三島由紀夫「憂国」。
世界が崩れ落ちていくような気がした。激震。これはやばい。まじで、やばい。恥ずかしながら、三島由紀夫は初めて読んだ。映画「11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち」は観たことがあったし、撮影の際に「横文字の俳優が三島由紀夫を演じるわけにはいかない」というぶっとんだ理由で芸名を変えてしまうほどの情熱で主演にあたった井浦新さんが芸能界で一番好きだけれど、小説は読んだことがなかった。息をすることを忘れてしまいそうなほどの、緊迫、陶酔、絶望、愛。昭和初期が舞台と知りつつ、主人公が「武山信二」という普通に友達にいそうな名前だったり、夫の切腹を見届けた妻がいきなり「ガスの元栓を調べ」だしたり、ともすれば身近な出来事のように感じてしまう描写が出てくるたび、読みながら胸のあたりがぞわあっとなった。三回読んで、まだ足りなくて、Amazonで新書を買った。「憂国」が三作目でよかった。四作目だったら、きっと読む前に返却していた。
おもしろいと感じる作品はその後もいくつか出てきたけれど、「憂国」の衝撃が凄まじすぎて、もうそれどころではなかった。かろうじて、小川洋子さんの「『物理の館物語』」で少しだけ冷静さを取り戻したものの、読了後に残ったのはやはり「憂国」の余震だった。いやはや。
Amazonで頼んだ新書というのは「花ざかりの森・憂国―自選短編集」というもので、三島由紀夫本人が選出した短編集であるらしい。できることならAmazonの倉庫に押しかけてしまいたいくらい、到着が待ちきれない。プライム会員でよかった。明日には届く。 -
あまりに種種雑多なので読みやすいものだけをひろい読み。選者の好みからか、かなり癖のある作品が多いと感じた。村上春樹の序文が一番読みやすかった。
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解説の村上春樹さんが言うように、まさしく「射幸的」つまり「当たり外れ」のある福袋的な一冊。けれど、そこが逆に良い。どうしても特定の作家さんに偏って読んでしまう私にとっては、こういう読み巧者が編んでくれるアンソロジーはとてもありがたい。
編者は日本文学の英訳の大家。芥川龍之介の「羅生門」の英訳などがペンギンブックから出ている(これも面白かった。「下人」が「servant」になるだけで随分と作品の印象が変わるもんだなと思って、興味深く読んだ)。
個人的にはディストピア文学の担い手として面白そうな作家さんを知れたのが一番の収穫。星野智幸さん、これから読んでみようと思う。あとは、松田青子さん、青来有一さんも気になった。 -
久しぶりに日本の小説でも読んでみるかと思って、図書館で借りた。収録されている29編の作品のうち、読んだことがあるのは、星新一の「肩の上の秘書」だけだった。名前も知らない作家の方が多い。星新一以外でおもしろいと思ったのは、「桃」(阿部昭)、「ケンブリッジ・サーカス」(柴田元幸)、「工場のある街」(別役実)、「砂糖で満ちてゆく」(澤西祐典)、「件」(内田百閒)。三島由紀夫は性に合わないことを、数十年ぶりに再確認した。小川洋子と国木田独歩と村上春樹の作品がこの順番で並んでいて、日本で編纂されたらこうはならないだろうと、ちょっと感心した。2019年3月31日付け読売新聞書評欄。