- Amazon.co.jp ・本 (292ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103668138
作品紹介・あらすじ
東京から引っ越してきた仁美、リーダー格で人気者の心太、食いしん坊な無量、眠るのが生き甲斐の千穂。4人は、友情とも恋愛ともつかない、特別な絆で結ばれていた。一歩一歩、大人の世界に近づいていく彼らの毎日を彩る、生と性の輝き。そしてやがて訪れる、それぞれの人生の終り。高度成長期の海辺の街を舞台に、4人が過ごしたかけがえのない時間を、この上なく官能的な言葉で紡ぎ出す、渾身の傑作長篇。
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
久しぶりのポンちゃん!
『無銭優雅』はタイトルがよすぎて中身が期待はずれだったので(悪くはなかったけど。。)、あまり期待せずに読みました。
フトミ、てんちゃん、チーホ、無量。
4人の男女が小学生から高校になるくらいまでを描いた思春期小説。
『蝶々の纏足』『風葬の教室』『放課後の音符』『ぼくは勉強ができない』などが好きな人なら、好きだと思います。
田舎の転校生設定なので、くらもちふさこの『天然コケッコー』っぽいハツラツとした感じもあったり。(あそこまで田舎じゃないけど。)
とにかくポンちゃんの十八番。面白かった!!
まず、章が変わるところで4人の死亡記事が冒頭に来る構成なんだけど、これが興味をめちゃくちゃ刺激する。そして、最後の章の死亡記事で、最初につながる。
食欲、睡眠欲、性欲と人間三大欲求の愛弟子たちが愛らしい☆☆
てんちゃんとフトミがくっついてほしかったから
(こう思っちゃう所が漫画脳で子どもっぽいですが、やっぱり、ね。)
少し寂しかったけど、これが現実かなぁ…なんて思いました。
自分のこととか思い出して、胸がちくちく傷みました。
ーーー
アマゾンでは「前と同じ」っていうレビューもあったけど、
それってダメなことかなぁ?
いちいちどっかに行って小説書くために世界を広げなくても、この世界を突き詰めるのもいいじゃん。
私は過去の作品は滅多に読み直さないし、詳細は忘れてしまうから、「キターーー」って感じでした。
しかも、ポンちゃんもお年だからか、自伝的小説の要素が濃くなったのかなぁって思いました。
比べるのはよくないけど、続けて読んだ桜庭一樹の『私の男』と比べると、小説としての完成度が雲泥の差だな。 -
『春の日、互いの間で揺らした、あの蓮華草の紐で、確かにつながれていた自分たち。あの時から今に至る自分たちの思いなど、誰にも解ってもらえっこないのです。
だって、他人なのですもの。家族のような結び付きを証明する術がありません。その事実が、今、唐突に彼女をあせらせているのです。』
4人+1人の絆の物語り。自分たちの欲望に素直なようでいて、自分たちが本当に何を求めているのかを完全には理解しきれない、小中高生時代の物語り。
やがて彼らに訪れる死が、どこか、“らしさ”を体現していて、悲しさが込み上げてくる。 -
やらないほうがよほどエロい。
-
150910 性の目覚めがテーマ。性教育って親も学校もこんなふうに生々しく教えてはくれない。子どもの時は触れちゃいけない事なのかな?ってそういう話題を避けてたなあ。最後まで読んでみて、単にエロティックなだけでなく一種の純真さを覚えた。
テンちゃんの息子と仁美の関係(とそこに至るまでの過程)が気になるところ。 -
生と性に真剣に向き合う子供たちと、端的な死亡記事。そこに至るまでのことを想像すると尽きない。タイトル通りの中身だと思う。
-
お薦めですか?
子供たちと生、性。
晩年の子供のような山田詠美ワールドが展開されているのでしょうか。
これも読んでみたいです。
9n...お薦めですか?
子供たちと生、性。
晩年の子供のような山田詠美ワールドが展開されているのでしょうか。
これも読んでみたいです。
9nanoka さんの読んだ本、全部貸して欲しいです。(笑)
夜ふかしの文学少女になってますね。
読書量凄いですね。尊敬。(笑)2014/09/03
-
-
読書をしていると、たまにどうしようもなくその時の自分が求めていたかのような本に出会う時がある。
「学問」は久しぶりに私にそんな感覚を味合わせてくれた。
自分でもわからないくらい、ずっとドキドキして読んでいた。
読み終わってからも続く気持ちの高ぶりが心地よくて幸せ。 -
あの行動はこの感情から来てたのね。
自身の過去の失態を整理せずにはいられません。 -
山田詠美の長編小説。彼女の小説には、“僕は勉強ができない”に代表されるように思春期特有のみずみずしい感受性を持つ人物が登場することが多く、遠い日の感情が呼び起こされます。
主人公の仁美 (愛称フトミ) は、7歳のときに転校してきた土地で一生のかけがえのない友達に出会いました。このひとに付いていくと決めたテンちゃんこと心太、そしてチーホこと千穂、ムリョこと無量の仲良し4人組。
子供時代は、世界感が狭いために友達関係は重要な心の位置を占めます。ちょっとのことでけんかしたり仲直りしたり・・・異性に対しては好きな子にいじわるしたりと思わぬ行動に出たりするのです。
そんな思春期の入口の微妙な心の動きを織り交ぜながら、彼女の中の“得体のしれないもの”を軸に彼らの成長の過程を追っていきます。
男の子と女の子が何で別になって保健の先生から話を聞くのだろうか・・・
あの頃、そう思ったひとは少なくない筈。性別は生まれたときからあるのにその仕組みに気づく年頃はとにかくうしろめたさがつきもの。こっそりその方面の知識を仕入れるために、婦人雑誌の袋とじの部分を盗み読みしたりしたのが懐かしく思い出されたりします。
頭で理解する知識と大人への準備を始めているからだとのアンバランス。秘密の儀式と性体験との違いを知ることになったり・・性の不思議さや悩みは彼女らも共通であるし真剣です。ひとつひとつの体験がみんな宝物になります。
大人に近づき“学ぶこと”をひと通り終え、あの頃の輝きを失っても、ひとはひとりでいつかは死んでゆく存在であるが故、人生の入り口で学んだことの意義は大きいのです。