- Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103808510
感想・レビュー・書評
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源氏物語千年紀にちなんで、有名なエピソードを現代語で書き直したアンソロジー。
ほとんどそのままの新訳もあれば、性格や心境を独自に書き込んだもの、まったく別な時代の話にしているものも。
なかなか変化に富んだ面々なので、楽しめました。
年の初めに読もうと、図書館から借りておきました。
2011年に別なタイトルで文庫化されています。
松浦理英子「帚木」
え、一番最初が空蝉?と思ってしまった‥
なるほどねえ~ある意味、現実味のある女性?
紀伊守の父の後妻という受領階級の人妻で、身分の高い貴公子に迫られまくって一度はそういう仲になったが、その後は源氏をきっぱり拒絶した女性。
源氏はまだ10代と若く、正妻の葵に冷たくされてふらふらしていた時期。
雨夜の品定めで中流階級の女性がいいと聞かされて、好奇心を起こしたもの。
当時はまず通い婚が主流だったけど、この場合は夫が同じ屋敷内に戻っているので、そりゃ、続けたくないんじゃない?
もし違う立場だったならと、空蝉が内心考えるのも正直な。
江國香織「夕顔」
どこか頼りなげで素直な夕顔。
男性の人気ナンバーワンだそうですよね。
ほとんど人生をあきらめているかのような面と、ふわふわと女っぽい面と。
夕顔はまあ‥
六条御息所がかわいそうなのよね。
角田光代「若紫」
現代版に大胆な書き直しをした辛口な作品。
東南アジアかどこか?父に売り飛ばされた少女が、まだ店には出られない年齢で下働きをしている。
そこへ現れた金持ちの男に、自分を引き取らせようと思い‥?
町田康「末摘花」
これ、傑作!吹き出しちゃいました。
美貌を誇るいい調子の若者の一人称で、でもけっこう周りに振り回されているのね。
頭の中将がストーカーめいたキャラになっていて、おかしい。
末摘花の家が質素を通り越した貧乏なのを勝手に理想化するあたりも、いかにも。
金原ひとみ「葵」
現代に舞台を移し、光の母親も生きているが上手くいっていないという設定。
妊娠がわかって動揺する葵と、頼りない若い夫?の光。
いつしか強くなろうとする葵。
生々しさで読ませるが、源氏物語と関係なさすぎかも。
島田雅彦「須磨」
別れの寂しさを嫋々と描いて、独特な雰囲気。
歌のやり取りを丁寧にしていく文化が、ありありと感じられます。
日和聡子「蛍」
源氏の元に引き取られている玉鬘の君。
父親のように思っていた源氏に言い寄られて困惑する。
源氏はほかの男性に引き合わせることも考えていて、玉鬘の姿を垣間見させるために蛍を飛ばすという手も使う。
落ちがないけど、当時の生活ぶりや源氏の考えが出ているくだり。
桐野夏生「柏木」
尼になっている女三の宮の一人語りが、面白いです。
皇女だったが、14で40歳ほどの源氏に降嫁した。
ほんとうは三の宮は気が進まなかった。
教養豊かな美女揃いの六条院の館で、源氏は紫の上に気をつかって、あまり渡っても来ない。
おっとりして気が利かない三の宮は、何かと叱られてばかり。
柏木に姿を見せたうかつさは、実は確信犯だったという。
小池昌代「浮舟」
現代の女性が、わがことのように浮舟を感じ取る。
一人暮らしで、勤めて50年になる会社でもうすぐ定年を迎える。
源氏物語にはまり、毎晩読みふけっていた。
浮舟の心境を実感する様子が無理なく描かれていて、いい読後感でした。 -
源氏物語を、9人の作家さんがそれぞれの解釈で描いた作品集です。
企画が面白いですね。アレが良かった悪かったと、勝手な批評を読者が自由に言いやすいところが楽しい。私も一言♪
他の方のレビューを読むと、町田さんの末摘花の人気が高いみたいだけど、私てきには全く刺さりませんでした・・・
私のイチオシは角田さんの若紫。
角田さんの作品は「八日目の蝉」しか読んだことなくて、それが私には合わなかったから他の作品を読む気がしなかったんだけど、いやーわからないものです!
雰囲気作りも、源氏の胡散臭さ加減も紫の状況も、あの場面設定の中、原作に忠実、としか言いようがない。この一作で、角田さんの他の作品もチャレンジする気になりました。。
次点は桐野夏生さんの柏木。
こんなに人気作家なのに、なぜか桐野さんの作品は読んだことなくて・・・視野が狭かったかな。
源氏の老いからくるいやらしさがとても自然。女三宮の心情が理屈にかなってる。
この企画、第二弾もやってほしいな。いろんな作家さんのセンスがみえる、というか、私との相性がわかる気がして楽しかったです。 -
源氏物語の54帖のなかから、9人の作家がそれぞれ好きなものを選び仕立て直した作品集。
豪華な作家陣にひかれて手に取ったのだが、なんとも読みごたえのあるぜいたくな一冊だった。
原作に忠実に淡々と訳しているものから、砕けた口調のもの、時代や場所の設定を変えて独自の物語にアレンジしたものまで、作者の個性ごとに読み比べができるのも楽しい。
なかでも、女性のしたたかさを仕込んだ角田光代、桐野夏生がおもしろかった。この二人は日頃から好きな作家なのだが、こういうところでもぴんと来るんだ、と妙な部分で納得も。
原典のあらすじが添えてあるのは助かったが、人間関係がややこしく、原典に精通しているわけではない私には、人物の相関図がほしかった。
あとは、ぜひ続編を読んでみたい。
源氏物語は長くて手を出せずにいたが、最近角田光代の訳が出たので、これを機会に挑戦してみようかな。 -
9人の現代作家による翻訳というより翻案。男性が町田康と島田雅彦しかいないのは、今の日本の作家状況を反映しているからか。いずれにしてもそれぞれ違って面白い。
原典を読みたくなるが、原典は余りにも長すぎる。橋本治か田辺聖子訳あたりを読んでみるか。 -
現代の作家9人が源氏物語を書くとどうなるか。
松浦理英子(帚木)、日和聡子(蛍)は現代語訳の風情。島田雅彦(須磨)、桐野夏生(柏木)、小池昌代(浮舟)はもうちょっと柔らかく。江國香織(夕顔)、町田康(末摘花)は横文字も使ってさらにくだけて。角田光代(若紫)、金原ひとみ(葵)は時代を飛び越えて。
町田康の末摘花が抜群に面白かった。光源氏がくだけすぎだし、ストーカー(笑)頭の中将もチャーミングで好感が持てる。次によかったのは桐野夏生の柏木。通常の訳とどんなふうに違うか、比べながら読むとより楽しめそう。 -
各章ごとに、作者が変わる源氏物語。いろんな源氏が、楽しめる。
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性懲りも無く日和さん目当てで読んでみたのだが結果は流麗ながら凡庸、さすがにこの錚々たる面子の中では個性を発揮するまでには至らず優等生的な現代語訳となってしまったようだ。
ではその錚々たる方々はどうかというと…町田町蔵は反則(大笑い) 、金原ひとみは我が道を突き進み、角田さんは技あり、意外な伏兵は小池さんか。
しかしやはりこの歴史的レディコミの怪物をさらりと退治してしまうのは江國さん。きっと式部と共鳴する琴線を持っているのだろう、まるで違和感のない夕顔は九篇のなかでも一押し。
原点を知る人も知らぬ人もそれなりに楽しめる企画本かな…私はこれ以上知るつもりはないが -
源氏物語でアンソロジーを作るっていう発想がすてき。
町田康さんと桐生夏生さんのが特に好きだなあ。
完璧じゃない光源氏が好きみたい。
性格歪んでるくらいがお話として面白いの。 -
9人の作家による源氏トリビュート。舞台を現代に移した金原・角田作品は実に面白かった。かなりアレンジはしているけど、骨組みはしっかり残しつつもひとつの短編として十分に素晴らしいものに仕上がっている。
特に金原さんの「葵」は、マタニティブルーがリアルで、ぞくぞくっとした。笑えたのは町田康の「末摘花」。思いっきり町田語で綴ってるから、正直源氏ファンはどう思うだろう…と心配するほどだが(^_^;)個人的にはかなりツボ!!この作品で私の中の源氏熱が盛り上がったといっても過言ではない。ベニーちゃん(末摘花です)いいキャラです。原作の世界を生かしつつも桐野ワールドそのもので、引き込まれて読んだ「柏木」もよかったな。「夕顔」は江國さんの世界観に合うチョイスだなと思ったものの、江國さんらしさが薄くてちと残念。もっと好きにやって欲しかったかも。
自分の源氏物語の知識が中途半端だったゆえ、それぞれの物語のつながりがわかりづらくて苦労したが、別の源氏本を読んで構成をある程度理解してから再度読むと、面白さ倍増!!
お正月に源氏物語、雅でいいですね~♪
この本、とても不思議な感じがしたのは
現代の恋を描い...
お正月に源氏物語、雅でいいですね~♪
この本、とても不思議な感じがしたのは
現代の恋を描いた代表作では、そんなに好きになれなかった
江國香織さんの描く「夕顔」が、とても雰囲気があってよかったことと
かなり自分の作風に引き寄せて書くだろうな、と思っていた作家さんが
意外に原作に忠実に書いていたりすることでした。
それにしても、町田康さんのじゃがりこの部分には笑いました(*'-')フフ♪
あけましておめでとうございます!
お正月に源氏物語、いいでございましょう?
江國さんて私もあんまりピンと来ないんですよね。な...
あけましておめでとうございます!
お正月に源氏物語、いいでございましょう?
江國さんて私もあんまりピンと来ないんですよね。なんか読んでも内容を忘れちゃう‥失礼ながら。
「夕顔」は何だかほんわりしていましたね。男性が好きだというのがわかるなと改めて感じました。
確かに、作風への引き寄せ具合が色々違ってましたね。何でしょうね~原作への興味や敬意の違いか‥
町田康さんの、傑作でした!じゃがりこも~!
全員こういうのでも困るけど‥(笑)