ハゴロモ

  • 新潮社
3.52
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  • Amazon.co.jp ・本 (171ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103834045

作品紹介・あらすじ

失恋の痛みと都会の疲れを癒すべく、故郷に舞い戻ったほたる。雪に包まれ、川の流れるその町で、これまでに失ったもの、忘れていた大切なものを彼女はとりもどせるのだろうか-。言葉が伝えるさりげない優しさに救われるときはきっとある。人と人との不思議な縁にみちびかれ、自分の青春をあらたにみつける静かな回復の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 夢の中と現実で繋がっている空想的な世界観がすごい好きだった。出てくる登場人物も闇をかかえながらも他の人に支えられながら生きていて良かった。バスターミナルの神様(みつるくんのおばあちゃん)みたいに人に優しくできる人に私もなりたい。故郷っていいな。

  • 発売当時(13年前)読んだきりだったのを再読。装丁がとても素敵な本。

    癒しの小説、という表現がぴったり。
    8年にも及ぶ交際のあと不倫相手と半ば捨てられるかたちで別れた主人公のほたるが、東京から北国にある地元に束の間戻ることを決める。
    祖母が営む風変わりな喫茶店を手伝いながら、田舎のゆるやかな暮らしのなかで、かつての知人や新しく出逢った人々の優しさに触れ、擦りきれた心を徐々に癒していく。

    よしもとばななさんの小説らしく、“死”というものがすぐ側にあって、しかもそれはとてもむごい形で亡くなっていて、残された人の悲しみはいつまで経っても完全に消えることはない。
    そこで傷つき立ち上がれないままでいる人に触れることで、主人公も自分の傷に向き合う。
    出逢いの奇跡とか、不思議な力とか、信じない人にしてみたらまったくの眉唾物だろうけど、人間の勘だとか縁というものは科学だけでは解き明かせない力を秘めているものだと私は思っていて、この小説にはまさしくそういったものがたくさん詰まっている。

    回復する力というのは偉大だ。
    人の優しさだけではなく、時間の経過だけでもなく、その人の回復力だけでもない。すべての要素が絡み合って、徐々に自分を取り戻していく。
    その時間はまさに“ハゴロモ”みたい。
    5年前の自分に読ませてやりたい。笑

    ほたると、るみちゃんという友だちでもなく家族でもない特別な関係がとても素敵だと思った。かけがえのない縁というのはこういうものではないか、って。
    よしもとばななさんの小説を読むと、こういう間柄って羨ましいなぁと大抵思う。

  • よしもとさんの作品は、若い頃に読んでいた。
    けれども、なんとなくしっくりこなくて、遠ざかっていたものの、レビューを読んで、気になって読んでみた。
    今読んで、こんなにしっくりくる話を!と自分にびっくり。
    まあ、私にもそれだけの変化があったということだ。
    なんとなくスピリチュアルに読めるところもたくさんあるし、生きるってそうだよな~と気づかされることもたくさん。
    なんとなく、手元に置いていて、繰り返し読みたくなる本かもしれない。

    • kuroayameさん
      このお話は、よしもとさん作品の中でもなんだか雰囲気がほのぼのしていてよかったですよね(^_-)。
      レビューを拝見させていただき、とても嬉しく...
      このお話は、よしもとさん作品の中でもなんだか雰囲気がほのぼのしていてよかったですよね(^_-)。
      レビューを拝見させていただき、とても嬉しくなりました(*^^*)。
      ありがとうございます(^_−)−☆。
      2012/12/15
  • かなり好きな作品かもです★ミ。
    なんとも独特な世界観で、非現実的なお話しをすっぽり受け入れてしまった自分自身にびっくりでした(>・)/。

    霊的とでもいいましょうか・・・。
    それでも「こんな体験ってどこかにありそう」なんて思えてしまう(^-^)。

    よしもとばななさんの作品は暗めの「死」が登場しがちですが、この作品では、なんだか「死」の中にも希望があるみたいな、ちょっとなごんだ雰囲気で、気持ちよく読み終えることができました♪。

    • 山本 あやさん
      わーー、この本も買ってあるから、ますます楽しみになったよー♪
      ばななさんの死の扱い方はすごく好きだなぁと
      思ってたんだけど、その中に光がある...
      わーー、この本も買ってあるから、ますます楽しみになったよー♪
      ばななさんの死の扱い方はすごく好きだなぁと
      思ってたんだけど、その中に光があるとなるとますますステキな
      本になってるんだろうねー。ほんとに楽しみーっ[*Ü*]

      素敵な情報をありがとうーーー[*>ー<*]屮》☆
      2012/11/29
    • sorairokujiraさん
      よしもとばななさんの作品は久しく読んでいませんでしたが(若い頃読んで、あまり惹かれなかったので、それっきりになりました)このレビューを読んで...
      よしもとばななさんの作品は久しく読んでいませんでしたが(若い頃読んで、あまり惹かれなかったので、それっきりになりました)このレビューを読んで、また読んでみたいと思いました。
      さっそく取り寄せてみますね。
      読むのが楽しみです。
      いつも素敵なレビュー、ありがとうございます。
      2012/11/29
    • kharaさん
      kuroayameさんのレビューにあったなぁ、なんてハゴロモを本日購入いたしました(*^^*)
      まだ読み始めなのですが非常にわくわくしながら...
      kuroayameさんのレビューにあったなぁ、なんてハゴロモを本日購入いたしました(*^^*)
      まだ読み始めなのですが非常にわくわくしながらよんでいます。
      こういった繋がりができてうれしいです♡
      2012/12/02
  • 優しいお話だった。
    去年すっごく忙しくって、一月はちょっとゆったり出来るからと思って読んだ。忙しい時に読まなくてよかった。お話がゆったり進んでいって、今の自分にとってもしっくりきて心あったまるお話でした。

  •  心にじわりと来る話だった。言葉選びも相まって、全体をどこか寂しく、それでいて優しい空気が包み込んでいて、情感に訴えかけてくる。とりわけ情景描写が好みで、田舎の街の感じとか、冬のぴりっと澄んだ空気みたいな、自分が良いと感じる感覚を想起させられた。
     理路整然としている訳ではないが、そこはすきずきだろう。物語の構成よりも、醸し出す空気や心の動きを味わうような小説だった。
     個人的な難点としては、やや読みにくさを感じたところ。難しい文章ではないけれど、曖昧で独特な比喩表現が言い募るように多用されていて、分かりにくさを覚えた。詩的な文体は好みだが、却ってピントがぼけてしまっているような気がした。とは言え、この文体が作品全体の雰囲気作りに大きく貢献しているのだろうことは、疑いようがなく...。
     台詞についても、口語と文語がまざっていたり、そうは言わないだろうという言い回しが多かったり、ちょっと突っかかった。
     私的には表現のくどさを感じた一方で、じわじわと感情を動かされる小説だった。文字が大きかったため、一時間少しで一気に読み切った。

  • 「たとえどんな死に方をしても、どんなつまらないことの巻き添えになって死んでしまったのだとしても、そのお父さんの魂が汚れることは決してない。つまらない意図で、つまらない人生に行き詰まってはた迷惑な生き方や死に方をした甘えた人が決して、絶対に遺せないずっしりしたものが確かにあるし、それは、形を変えて絶対に続いていくはず。前にみつるくんが言っていたような、因縁とかおばあちゃんの偉大な足跡のあおりみたいなものも、確かにあるかもしれない。でも、その遺していく力の重みこそが、きっと人間が唯一このどうしようもなくたまらない世界の中に置いていける何かなのよ。」

  • 一度、途中で読むのを止めたの。
    気が進まなくて。
    ほんの少し時間をおいて
    また読み始めてみたら、癒された。
    今が、この本を読むタイミングやってんなぁ。

    静かに時間が進んでく。
    他愛もない、再生の話。

    本当にハゴロモのような話だった。

  • 川原に座って川を眺めたい。
    ケーキを食べながらお茶を飲んだり、ひとの作ってくれたインスタントラーメンを食べたり、したいなぁ。
    名もなき偉人に会いたいなぁ。
    神秘的な出会いのなかで普通に生きている人たちのやさしさや逞しさに涙がでた。

  • うまい。
    一気に読んでしまった。ページを次へとめくりたくなる。登場人物がどこでどのように、どんなきっかけで過去からいまにつながっていくのか、隠されている謎を解くような気持ちで読み進めた。ヒントがちらちら現れているのに、人がそれに追いついてけない歯がゆさや、ある瞬間に時間や距離や夢現を越えてばちっと合わさるときの身震いするような体の反応。ヒントのピースがつながってこたえのような(合ってる・間違ってるとかの答えとは違うもの)ものが現れたときは、ちょっとうるっときました。そういうのってあるんだろうなと。
    この作品は著者的に物語が「降って」きてそれをそのまま書いた。という。読んでいてそういう気がした。書かされているんじゃないかな~と思った。

  • 久しぶりによしもとばななの好きな本に出会えた。初期の頃を感じさせる作品。ふわっと優しく癒される。私はこうゆう彼女が書く、落ち込んでどん底だったりどうにもつらい精神状態にいる時の文章がすごく好きみたい。共感を覚える。負の気持ちを優しく的確に描写してると思う。そして治癒力。少しずつ、無理なく、また前へ進む力をつけていく感じ。さりげなく元気になれそう。何度でも読みたい文章だった。実際、二度読みしたし。図書館で借りた本だったけど、久々に所有したいと思った本だった。手元に置いて読み返したくなる作品。

  • 大好きな本。
    手元に置いておきたい本。


    10年を費やした不倫の恋が終わった主人公の、再生のお話。


    のんびり、ゆったり。

    ばななさんの本は、どうして、こう、ゆったりとした時間をリアルに表現できるのだろう?と感動する日々。

  • 人の気持ちをハゴロモって表現するのは、
    とてもいい言い方だな、と思った。

    ばななさんの小説では、きちんと何かが好きな人っていうのが
    出てくるなと思った。
    洗濯が好きとか。食器がきちんと揃っているとか。
    それと、キーワードみたいに出てくるものがある。これでいうと、川とか。

    リハビリって、『海が聞こえる』の中でも読んだな。
    あれは、スポーツ選手の友達だから出てきた言葉、ってなっていたけど。
    不倫の恋から立ち直るのに、リハビリって言葉はやっぱり適当なのかも。
    もちろんそれ以外にも、本当の怪我や病気じゃないときでも、
    人間ってリハビリが必要だ。
    だからこういう言い方は、正解なんだと思う。

    彼がなんでもしてくれることが、
    逆にいつもそうやって奥さんにしてあげている、
    奥さんが本当に体が弱いんだと生生しく分かってしまう切なさとか。
    ずっと点けているテレビの虚しさとか。
    普段忘れてしまいそうなさりげない、でも本当のこと。
    それに不思議なようでも、人間には第六感っていうものがあって、
    そういう精神的な力って実はオカルトじゃなくて普通にあるもので
    ただ忘れてしまっていることが多いというだけのことなんだって気がする。
    世界は実はちゃんとつながっていて、単純だったりもするものなんだと。
    るみちゃんが言っているみたいに、ほたるは戻るために戻ってきて、
    子どもを産んで、るみちゃんの保育園に入れる。
    そんな出来すぎみたいに、世の中実はちゃんと、なるようになっていくのだ。

    鳩のエピソードは、さらりと書いてあったけどすごかった。
    世界が違う。その通り。
    小学生の時学校で見せられた映画を思い出した。
    雀を飼っていた小学生が、焼鳥屋のメニューでスズメがあって
    ひどい!っていう子どもに、お父さんが諭すような。

    土地の夢っていう言葉、なんか凄いな。

    気の毒じゃない感じで、母親の看病を続けているみつるくんが、
    凄いなと思った。
    でもみつるくんはきっと、頑張ってそうやってるわけじゃないんだよね。

    所謂幽霊を見ることが、『境がうすくなる』っていう表現も綺麗だなと思った。
    隣り合わせというか、同じものって日頃感じているので。
    そういう、現世と死後の世界ってやつ。

    「後を追ってももう追いつかない」っていう
    みつるくんのお母さんの台詞には、ぐっときた。すごくなんだか、納得がいってしまった。
    もう今からでは、追いつかない。
    そうかもしれない。
    事故死した人と自殺者の霊は、同じ階層には行けないから後を追っても
    一緒になれないとか、そんないじわるで残酷なことじゃなくて、
    もう運命が分かれてしまったから、そこから大分経ってしまったから、追いつけない。
    そっちの方が、納得がいく。

  • 優しい気持ちになる小説。
    読んでいて自分のなかにもゆったりとした時間が流れる感じ。

    るみちゃんとほたるの関係が好き。

  • 2022.01.18読了。
    今年4冊目。

    子供は、楽しくて落ち着いたものが大好きなんだよ、
    でもお母さんたちは、その反対の人が多いの。

  • 小さな町での小さなおとぎ話。
    美味しいチーズケーキが食べたくなる。

  • アムリタのような主人公の個性の強さはないが、タイトルのようにみな優しくふんわり包みこむ気性の人たちのストーリーでじんわりと癒された。
    私自身、田舎出身なので自然の有無を言わせない力やそれに癒される過程には共感でき、懐かしく思った。

  • 身体の底に自然を宿しているニンゲンはスケールが違う。ありきたりに傷ついても立ち直りに勢いがある。生まれ育った場所って大切。

  • カバーデザイン/増子由美

  • カッパのところと、サッポロ一番のところと、るみちゃんが好きだ。26歳で人生が終わることなんてないよ、ほたるちゃん。ほたるは新しい恋を見付けて人生を謳歌する。でも、恋だけが人生でもない。明日があるから生きていけるのか、生きるから明日があるのか、吉本ばななの作品は少しだけ明日が見える気がする。

  • 図書館で借りた本。

    川につつまれた現実的なおとぎ話のようなお話。苦しい時、家族が病を患っている時に思い出して読みたい。

  • ファンタジー要素の入った青春小説というか、不思議な世界を感じつつ現実世界を見つめていくようなストーリー。

    ちょうど何とも言えないモヤモヤと落ち着かない気分の時に何気なく手に取った。
    偶然か、必然か、その時の私になピッタリで、読み終えた時には何となく心がほぐれていた。
    そんな小説。
    by副社長

  • 精神安定剤。
    青春小説らしい。再生の物語。田舎のお話。

  • 川の流れのようなお話。
    心と体は繋がっているのだから無理をするなとか、言われてみれば当たり前なことだけれど、そういうことを「おとぎ話」の中できらきらと見せてくれるのがばななさんの凄いところだと思います。

    いやあ、それにしても、出会った時期が良すぎました。自分の信じていたものがグラッグラに揺らいでいたとき、よくわからない何かに縋ろうとして失敗していたときにこの本を読むことができて、本当に人生巡り合わせだなって。

    全然関係ないですが、ばななさんの小説は絵本だな、と思います。最終的な原点。

  • 2015/04/16 読了 長らく不倫してた人の失恋話。年齢的に悲惨じゃないので爽やかに読める。だらだらと続く恋愛が終わった後、回復していく感じがリアル。別れて数年は嫌なことばかり思い出すけど今は良かったことを思い出すことが多いなぁ←私事。素敵な家族と新たないい出会いがうらやましい。サッポロ一番をミックスして食べたくなる。

  • 長野に行ったばかりだったから、
    千曲川を思いだした。
    千曲川沿いにタクシーで走ったのを思い出した。
    長野は本当に山のすそ野が広くて、
    ヨガでも山をイメージして自分のすそ野をただ延ばして広げていくポーズがあるのだけど、
    ああ、これが山のすそ野ってことか・・と思ったのだった。
    地元は山に囲まれているけれど、どこを見てもこんもりしたてっぺんが見えていたものだったから。

    みつるくんのお母さんが、
    自分のぐっと固くなった心と正面から向き合う姿を見て、
    ふとわき見をして楽しんでみたり、
    自分でも判らないままに誤魔化してみたり、
    逆に反面教師にしてばねにしたり、
    そういう風に心を抱えていくことは簡単なんだけど、
    そうじゃなくて、その心にまっすぐ焦点を合わせて行こうとする姿にはっとした

  • るみちゃんいいな。
    るみちゃんの外見が、小学校から知ってる友人の姿で脳内再生された。

    吉本ばななはじめて読んだけど、ファンになったな。たくさん読みたい。

    時間の経過で心が治癒されていくかんじとか、なにかに気づくかんじとか、ふと気付いたら流れに流されて落ち着くところに落ち着いた感じとかがすごく既視感あった。素敵すぎる。

  • 失恋して弱った主人公が田舎に帰ってゆっくりと立ち直っていくはなし。
    ことばがやさしくて温かい。時間が経つのをおそれないっていいな
    C0093

  • 手痛い失恋後田舎に帰って自分を再生していく物語。ほわほわ優しい人がいっぱいでてきて、でもなんてことない日常。
    ファンタジーなエピソードを絡めて描いたふんわりした色彩の物語だった。
    いろんなことに余裕があるときと弱った時に読むとしみるかも。攻撃的な時には向かない。

  • ああ~~、これ、もう一度読みたい。借りてきます。
    突然人と縁が切れる哀しみ、突然襲ってくるその時の心がどうしようもなく揺れるあの感じ。

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著者プロフィール

1964年07月24日東京都生まれ。A型。日本大学芸術学部文藝学科卒業。1987年11月小説「キッチン」で第6回海燕新人文学賞受賞。1988年01月『キッチン』で第16回泉鏡花文学賞受賞。1988年08月『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』で第39回芸術選奨文部大臣新人賞受賞。1989年03月『TUGUMI』で第2回山本周五郎賞受賞。1993年06月イタリアのスカンノ賞受賞。1995年11月『アムリタ』で第5回紫式部賞受賞。1996年03月イタリアのフェンディッシメ文学賞「Under 35」受賞。1999年11月イタリアのマスケラダルジェント賞文学部門受賞。2000年09月『不倫と南米』で第10回ドゥマゴ文学賞受賞。『キッチン』をはじめ、諸作品は海外30数カ国で翻訳、出版されている。

「2013年 『女子の遺伝子』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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