- Amazon.co.jp ・本 (293ページ)
- / ISBN・EAN: 9784104075034
作品紹介・あらすじ
炭水化物やタンパク質やカルシウムのような小説があるのなら、ひとの心にビタミンのようにはたらく小説があったっていい。そんな思いを込めて、七つの短いストーリーを紡いでいった。Family、Father、Friend、Fight、Fragile、Fortune…で始まるさまざまな言葉を、個々の作品のキーワードとして埋め込んでいったつもりだ。そのうえで、けっきょくはFiction、乱暴に意訳するなら「お話」の、その力をぼく(著者)は信じていた。
感想・レビュー・書評
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心があたたまるお話が多かったです。
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今まで読んだ事の無かった重松作品。第124回(平成12年)直木賞受賞作。
短編集なのでそれぞれにコメントを。
「ゲンコツ」:40歳を前にして、保守的になった感覚を持ってしまった主人公・雅夫。
もうゲンコツも使わなくなった。親父狩りに遭うような年齢だ。
そんな中、同じマンションに住むとある家庭の息子の素行が悪くなっているらしい。
『自分には関係ない』と感じたが、ある夜その少年達が自販機にいたずらしているのを目撃する。
酒の勢いも手伝い、雅夫は注意をしに向かうが。。。
自分の力の衰えを感じながらも、父親として・男としての強さを忘れたくない感覚が伝わってくる。
“まだまだやれるぞ”という感じか。★★
「はずれくじ」:妻の突然の入院により、急に息子と2人でしばらく過ごす事になった修一。
いざ面と向かって会話をしようとしても、どうにもしっくり来ない。
そんな親子関係が昔の自分にもあった事を思い出しながら、修一は息子の成長と頼りなさを感じるが。。。
父と子の、微妙な空気感が伝わってくる作品。ラストが嬉しい。★★★☆
「パンドラ」:娘が万引きで捕まった。
その事実に愕然としながらも、きっちりと叱る事の出来ない孝夫。
しかもどうやら娘は妙な男と付き合っているらしい、と。
14歳の娘は父親と話さなくなってきている。妻の陽子とは話しているらしいが。。。
男にはわかり得ない、母と娘の繋がりにヤキモキする一編。★★★
「セッちゃん」:ある日を境に、雄介は娘の加奈子から「セッちゃん」という転校生の存在を聞く。
どうやら皆にいじめられているらしい。
その話を面白おかしく家で披露する娘にそれとなく注意しても、
「人を好きになったり嫌いになったりするのは、それぞれの自由だからしょうがない」
という尤もらしい理由で聞く耳を持たない。
日に日にエスカレートする「セッちゃん」へのいじめ。加奈子はそれでもセッちゃんと友達であると言う。
果たしてそのセッちゃんとはどんな人なのか。。。
とても考えさせられる作品。切なかった。★★★★
「なぎさホテルにて」:達也は家族を連れ、『なぎさホテル』へやってきた。
そのホテルには達也の過去の思い出が存在していた。
学生当時に付き合っていた彼女とこのホテルへやって来て、将来の自分達へ向けて手紙を書いていたのだ。
今の妻はそれを知らない。そしてその妻とも離婚目前である。
何かを期待してやってきた『なぎさホテル』。何かは起こるのか。。。
主人公が中年であるにも関わらず甘酸っぱい感覚の作品。★★★
「かさぶたまぶた」:いつでもどんな場面でも、冷静に、間違っていないはずの答えを出して生きてきた政彦。
自分の判断には自信があった。仕事でもそこを評価されている。
家庭でも息子は浪人してしまったものの、落ち込まずに生活している。
娘も優等生だという。
しかし、その娘が沈んでいる様子なのだ。変化に気付けない政彦。
そんなある日、酒に弱い息子が泥酔状態で帰ってくる。。。
正しくなければならない。そんな感覚に囚われ過ぎてしまった父親の哀愁がある。
人間、時には間違ったり弱くなったりしても良いのだろうと思う。★★★☆
「母帰る」:10数年程前に両親が離婚した。母親が自分の子供達の結婚を見届けた後に家を出て行ったのだ。
拓己はその事を深く理解出来ていなかった。
そして母であった人は別の人物と再婚したものの、相手に先立たれ独りになったと言う。
それを知った父は、自分を捨てた母に対して「もう一度一緒に住もう」と持ちかけているらしい。
離婚暦のある拓己の姉は猛反対し、拓己とともに父親を説得しに行くが。。。
長年連れ添わないとわからない絆を垣間見ることが出来る物語。★★★
という、全7編である。どうやらこの小説は「The 重松清」といえるような作品らしい。
全ての語り手が40歳を目前にし、家庭を持つごく普通の父親である。
若さによる情熱も薄れているが、人生を悟るほどにまだ長くは生きていない。そんな『中途半端』な位置にいる主人公達だ。
…正直、感動だったり共感だったりは殆ど無かった。それは自分の年齢や環境がまだこの主人公達に近付いていないからであろう。
“哀愁”という言葉が一番シックリくるのかもしれない。
なので、現段階では3点である。
ただし数年後、この作品群に出てくる主人公達と同じような境遇になった時に読むと、
まったく違った感想を持てそうな気もする。
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思春期の娘と かつて思春期だった自分とを 重ね合わせながら 読み進めた本になった。
ほろ苦く でも 最後はすこし 前向きに。 -
しんどくて読みきれない。
家族はこんなにも難しいものなのか?父親は子供のことを「ハズレ」なんて思う時があるのか?娘のことをそんなにも信用できないものなのか?親も人間だが、あまりにもエゴじゃないか?
今後、結婚して子供を授かるキラキラした夢が曇った、 -
いまさらですが直木賞の作品なので読んでみました。男の人が主人公のものなので、そういうものなのかなと思いつつ、自分もこの世代に近いので共感出来る部分も多くあった。誰にでも起こるかもしれない物語。
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Fをキーワードにした7つのストーリーを紡いだ短編集。
30代後半で年を感じて欲しくないよな~と思い、違和感を感じながら読んだけれど、7ストーリー全部が素敵だった。
特にゲンコツ、はずれくじ、母帰るの3編は好きです。
家族っていいな。 -
苦手な短編集だという事に1話目を読み終わって気付きました。
せっかくだから最後まで読んでみた所、全ての話が涙を誘う内容でした。
「物足りなさ」から、短編集は食わず嫌いしてますが、読んで良かったです。
40前の主人公達は、それぞれの家庭の中で右往左往。彼等なりの光を探し出しながら明日に向かっていきます。同じような境遇で読めない現実の自分は、彼等の苦労を羨ましくも思ってしまいました。
「お帰り」と迎えてくれる人がいる所に「帰る」。そんな家庭を、この先築いてみたい、と思う自分がいます。 -
同年代の主人公。まだ、同じような境遇には、陥ってないけど(気づいてないだけなら怖い)、身近なストーリー。重松清さんの短編集は、初めてだけど、少し物足りない感じがします。やっぱり長編の方がいいな〜。重松作品は、アラフォー世代の男性にオススメです!
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▼福岡県立大学附属図書館の所蔵はこちらです
https://library.fukuoka-pu.ac.jp/opac/volume/83613