星新一 一〇〇一話をつくった人

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 68
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  • Amazon.co.jp ・本 (571ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104598021

感想・レビュー・書評

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  • はじめて星新一を読んだのは小学生の時だった。本屋で「きまぐれロボット」の文庫本を手にとって中を見ると、読みやすそうだったので、購入した。それから、講談社文庫や新潮文庫などで星新一を見つけると必ず読んでいた。名作といわれるボッコちゃんが、文庫になったり改訂されるたびに手直しをしていたという話も初めて知った。星薬科大学のこと、星製薬のことなどは漠然と知っていたが、内幕を一部ではあるがこの本によって知った。この一件についてはもっと掘り下げられる部分もあったように思う。この事件が星新一を生み出す上で大きな影響を与えていたことは間違いない。生みの苦しみを感じさせず、淡々とショートショートをつむぎだす軽快かつちょっとシニカルな文章に魅せられて、随分と星新一を読んだが、中学に入った頃から、いつしか星新一を読まなくなっていった。懐かしさからこの本を手に取ってみて、時代の事柄を極力排することから生まれた普遍性を持つに至った星新一の苦労をうかがい知ることができた。また昔の作品で気に入っているものを読み返してみようと思っている。

  • 星新一について書かれた本

    彼の父親の話から始まり、実業家時代、作品を書き始める、作家時代、と、実に丁寧に追いかけていた。父親の星一の人生もなかなかにドラマチック。ショート・ショートの人、というくらいの認識だった星新一が、製薬会社の社長をしていたこともあったなんて、知らなかった。

    「シャーロック・ホームズの内幕」、好きだったなぁ

  • 買ってから、少し読んだだけで、本棚に眠っていた本。
    一気に読了した。
    星新一、懐かしい作家だ。
    ショートショートの代名詞で、一時期よく読んだ。
    読みやすい文体で、今でもよく売れているようだ。
    そう言えば、何年か前、私の実家に帰省した時、実家の私の本棚にあった、星新一の文庫本を何冊か子供たちが持って帰ったものだ。
    今は高校生になった三男と堂島のジュンク堂に行った時、教科書に載っていた星新一の作品が面白かったので、その作品が載っている本を探したが、ついに見つからなかった。
    いわゆる純文学とは違い、星新一自身は、その相対的な評価に不満を抱いていたのだろうが、これだけ売れ、多くの人に読まれ、愛されて来たことは間違いなく、その点では偉大な人物だと思う。
    前半の星製薬の御曹司だったことは、全く知らなかったが、会社をつぶしてしまったことが新一の人生に大きな影を落としたことは間違いないだろう。
    この作品は、星新一という大衆作家の人生を描いているが、500頁を超す大作で、読了するには一エネルギーが要った。たまには、心に残る本を読まなくてはと思った。

  • 星新一の評伝。2007年、数々の賞を受賞しています。
    森鴎外とも縁がある家系で、星製薬の御曹司として生まれ、父の星一の急死で、破産に瀕した会社の後始末をする羽目に。
    実業家には向いていなかったけど、アイデアマンだった所は父に似たのかも?
    長身で甘いマスク、坊ちゃん育ちで品も良いけど、自分の内心はあまり語らない、サービス精神旺盛で、酒が入ると放言することもあったりと複雑な性格。
    SFの代名詞のように思われて、早く成功した方だったけれども、損をした面もあったり、さまざまなシーンが展開します。
    戦後の日本の様子や、SFの勃興期のことがいろいろ見えてきて、面白い。
    十分、成功した人生だったと言えるけど、苦労のない人生ではなかったんですね。

  • 大多数の方と同じく、自分にとって星新一のショートショートは読書遍歴の入口であり、全ての本の基準でした。 (今思えば高い基準だと思います) そんな思い入れがあったので、厚い本ですが最後まで熱狂を持って読み通しました。 クールな作風からは想像もつかない創作の苦悩が描かれ、丹念に取材された証言はとても読み応えがありました。 斬新なアイディアや、わかりやすく簡明な文章は誰にでも書けるものではなく、生半可など努力では足りなかったでしょう。 年少の頃に通過点として読み飛ばしていたショートショートの向こう側には、こんなにも苦悩し、命を削るようにして書いていた星さんの姿があったなんて、想像すらしませんでした。 それだけに、文壇から評価されずに忸怩たる思いを抱え、第一線から離れていく晩年の姿には鬼気迫るものがあり、胸がつまりました。 日本のSF黎明期の様子が伺うことができたのも良かったです。

  • 最相葉月さんの5年をかけた伝記。2007年3月

    最相葉月さんがみつけた星新一のメモ。

    「オセジヲイワナイ ボッコチャン」(昭和32年12月の銀行手帳より)



    第29回 講談社ノンフィクション賞
    第28回 日本SF大賞
    第34回 大佛次郎賞
    第61回 日本推理作家協会賞 評論その他の部門

  • 面白かった。でもすごく時間がかかってしまった。ほぼ1ヶ月。図書館の返却期限を2回も延長。でも、本当はお金出して買うべき本です。力作。最相さんすごい。執念を感じます。これを読んでいる、と人に言うと、星新一作品は学生時代にずいぶん読んだなあ、と懐かしむ人多数。読書好きな人は一度は通る道なんだろうか。星さんも最相さんも、身を削るように(きっと)書いている人の本はやはり伝わりますね。読者もそのつもりで読まないといけないなと思います。

  • ショートショートの名手、星新一について書かれた本。ついでに、日本におけるSFの歴史のようなものも概観できます。
    系統だっていて、非常に読みやすい。
    星新一と言えば製薬会社の坊々でおっとり気質かと思っていましたが、とんでもなく苦労人でした。ショートショートを数本読んでから読むと、色々と面白さが付加されるかも。

    星新一の書く世界は、常に清潔だというイメージがある。後は、人がいなくなって機械が日常の大半の仕事をするという世界か。あまり有機的なイメージがない。出てくる人々も、名前には匿名性があって、実に分かりやすい性格を与えられている。
    また、大抵はウィットが利いていて皮肉な結末に終わる短篇が多く、まれに奇跡が訪れて善良なる人々が最良の物事を手に入れることもある。
    上手くは言えないが、一般の小説ではちょっと表しがたい世界が展開されているのかな。

  • 08/20/2008 読了

  • 第29回(2007年)講談社ノンフィクション賞受賞作品。
    第28回(2007年)日本SF大賞受賞作品。
    第34回(2007年)大佛次郎賞受賞作品。
    『本の雑誌社が選ぶ2007年ベスト10』第3位。
    第61回(2008年)日本推理作家協会賞評論部門受賞作品。

    2008年6月13日(金)読了。

    2008−56。

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著者プロフィール

1963年、東京生まれの神戸育ち。関西学院大学法学部卒業。科学技術と人間の関係性、スポーツ、精神医療、信仰などをテーマに執筆活動を展開。著書に『絶対音感』(小学館ノンフィクション大賞)、『星新一 一〇〇一話をつくった人』(大佛次郎賞、講談社ノンフィクション賞ほか)、『青いバラ』『セラピスト』『れるられる』『ナグネ 中国朝鮮族の友と日本』『証し 日本のキリスト者』『中井久夫 人と仕事』ほか、エッセイ集に『なんといふ空』『最相葉月のさいとび』『最相葉月 仕事の手帳』など多数。ミシマ社では『辛口サイショーの人生案内』『辛口サイショーの人生案内DX』『未来への周遊券』(瀬名秀明との共著)『胎児のはなし』(増﨑英明との共著)を刊行。

「2024年 『母の最終講義』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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