- Amazon.co.jp ・本 (203ページ)
- / ISBN・EAN: 9784104738045
作品紹介・あらすじ
時間、グラウンド、施設-すべてが足りない!超進学校が考えた常識破りの方法とは。
感想・レビュー・書評
-
この本はものすごく面白い。
毎年毎年、日本で一番東大へ数多くの合格者を送り出している私学の名門開成高校。
その野球部に関する話なのだが、部に所属する生徒たちにインタビューをすると、ほとんどの生徒が何でもかんでも論理的に説明しようとする。
その論理的思考によって捉えられる野球論は、時としておかしな方向に進んでいく。
超論理的で、逆に素直すぎて融通が利かない頭の良い子供たち。
はたしてこんな子たちが東大へ行き社会に出て形成される将来の日本は大丈夫だろうか? と不安にもなる。
医者、弁護士、あるいは役人などには向いているだろうが、政治家や企業のトップには不向きだ。
彼らも自覚しているらしく、将来の希望を尋ねると医者や研究者などという答えが返ってくる。
おそらく開成出身で国家を動かしている人間は数少ないのではないだろうか。
そういう思いを抱く書でもある。
筆者の高橋秀実氏は、開成高校の生徒たちの裸の姿を見事に描き出している。
彼らと筆者との言葉のやり取りは、まるで異次元の会話のようで、時として笑いを誘う。
でも、彼らはふざけているわけではない。純粋に対峙しているのだ。
その方向性が常人と少し変わったアプローチの仕方だとしても。
今どきの頭の良い、日本最高峰の偏差値を持った高校生がどんな考えをしているのかを紐解くのにも最適の書でもある。
なかなか鋭い抉り方をしているので、興味のある方は是非。
おすすめです。
最後に:この中に登場する長江豊君が、東大に合格し、野球部で活躍してくれることを切に願うばかりである。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
開成高校といえば、毎年3ケタの東大合格者を出す超進学校。そこの野球部が今、熱いらしい。
練習は週一回、守備は無理しない、相手より多い大量得点で勝つ、武器は下手くそなこと、といういわゆる高校野球とは到底結びつきそうもないセオリーで、この野球部で甲子園に!いや、もとい、打倒強豪校!そうすれば甲子園も夢じゃない、かも!と、日々練習に励む青木監督と生徒たちを取材したルポである。
いや~、申し訳ないけど笑いました。
生徒たちはみな、心底大真面目に野球に取り組み、自分に足りないものを考え、必死に努力しているのだけれど、頭脳明晰な生徒たちなだけに頭で考えることが先に走る。監督も、そんな彼らにわからせるために理詰め理詰めで指導するのだけれど、それがどうにもちぐはぐで、生徒たちが真面目なだけにどうしても可笑しくなってくる。
筆者と生徒のやり取りも、野球の話のはずなのに禅問答のようになり、可笑しいやらもどかしいやら。
ところが、夏の甲子園に向けての地区大会第一戦、対江戸川高校との試合では、ひたむきな彼らの姿に思わず涙…。
正直なところ、後半は新鮮な驚きのようなものもやや薄れて、新しい展開がほしくなったりもしてしまったが、発想を切り替えるって大事なことかもな、何事も「こうでなければいけない」なんてないんだなと、しみじみ。
いつか甲子園の大舞台で開成高校球児たちの試合を見てみたい。
その時も、試合前の守備練習でノックをチップしちゃうんだろうか。
…あれ?甲子園は試合前の守備練習あったっけ…??
とんと高校野球も見なくなったので忘れてしまったけど、まあいいか。-
2013/04/05
-
koshoujiさん、花丸とコメントありがとうございます!
この本を知ったのはテレビ番組の取材でした。
テレビでは青木監督の取材が主だったの...koshoujiさん、花丸とコメントありがとうございます!
この本を知ったのはテレビ番組の取材でした。
テレビでは青木監督の取材が主だったのですが、その指導理論に圧倒され、さっそく読んでみることに。
青木監督の、柔軟な発想とゆるがない指導、生徒たちをまっすぐ受け止める度量の大きさに、この監督の指導を受けられる生徒たちは幸せだと思いました。
koshoujiさんが楽しんでくださるとうれしいです。2013/04/06
-
-
ひぐちアサさんの『おおきく振りかぶって』、田中モトユキさんの『最強!都立あおい坂高校野球部』、コージィ城倉さんの『おれはキャプテン』、さらに言えば岩崎夏海さんの『もしドラ』など、「甲子園など程遠い高校野球部が予想外な戦略を立てて甲子園出場を目指す」というのは野球ストーリーにおいて、一種のお約束となっている。とはいえ、それらはみなフィクション。現実には起こり得ない……と思ってみたら、現実にもそんな野球ストーリーを実現しようとする高校野球部があった。それがタイトルにもある「開成高校野球部」だ。
そうは言っても、開成高校野球部はまだ甲子園に出場していない。冒頭で高橋さんが述べているとおり、本書は「途中経過」である。いつか噴火するだろう活火山の動向を見守るように、開成高校野球部の動向を見守っているわけである。これで本当に開成高校が甲子園に出場する日が来るとしたら、間違いなくそのストーリーは語り継がれるものとなるだろう。その日が来るのが楽しみだ。
さて、本書はそのような期待を煽るという意味で、非常にワクワク感のある一冊ではあるのだが、開成高校の生徒への偏見を持たせるように作られてしまった感も否めない。いわゆるステレオタイプ的に生徒の受け答えが紹介されているのである。すなわち、開成の生徒は理屈っぽく、あまり流暢なコミュニケーションを得意としていない。それが、本書にある開成高校生の様子である。
本書は開成高校の生徒は「ガリ勉くん」だ、という偏見――もしかしたら、現実にそうなのかもしれないが――をより強固にする本でもあるのだ。その点は非常に残念であった。
【目次】
1回 エラーの伝統
2回 理屈で守る
3回 みんな何かを待っている
4回 結果としての甲子園
5回 仮説の検証のフィードバック
6回 必要十分なプライド
7回 ドサクサコミュニケーション
8回 「は」ではなく「が」の勝負
9回 ややもすると甲子園
謝辞 -
どこかヘンテコな対象を、無駄に透徹した視点と身もフタもなさ過ぎるツッコミで描き出す著者のルポ。しかも、色々考察する内に書き手自身が途方に暮れ、何とも言えないトホホ感が漂う読後。一度読んだら病みつきになるヒデミネ節の最新刊が出ました!
今回はあの超進学校・開成高校の野球部を取材しています。
あの開成高校が甲子園地区大会でベスト16まで残ったことに興味を持った著者は、早速取材を開始。優等生達が知力をフル動員し、頭を使った野球で体力自慢を出し抜いたのかと思いきや、実態は全く違いました。
開成高校の戦い方のコンセプトは、「ギャンブル」です。
週一回しかグランドを使えないという不利な状況下で、守備練習に力を入れてもほとんど効果が無いと判断。打たれること、エラーすることを前提として、打線で打ち勝つことに賭けています。ですから、ピッチャーはストライクが入ることが最優先で、守備のレベルも「試合を壊さない程度であればOK」ということになります。打たれない、確実にアウトを取る、ではなく、「試合を壊さない」という相手方に対する配慮こそが開成野球の守備に求められるものということです。
ですから守備は、ストライクが入る選手=ピッチャー、送球が上手い選手=内野、それ以外=外野、というわかりやすい基準で選考されます。
スクイズなどで1点をもぎとっても、その裏に10点取られることだってザラなわけで、そうなると、真っ当な戦い方では絶対に負けてしまいます。
そういうわけで、空振りしてもフルスイングする打撃をモットーとするわけですが、これでヒットが出たときに「あの開成に打たれた、点を取られた」という相手方の動揺につけ込み、一挙大量得点を狙うという「ドサクサ」が究極の狙いです。なので、監督はヒットが出ても振りが鈍いとダグアウトから罵声を飛ばし、空振りしてもフルスイングしていたら「ナイススイング!」と評価。挙げ句はちゃんとした野球をしようものなら「お前ら、野球をしようとするんじゃない!」「ドサクサだ!ドサクサ!」と監督の声が飛ぶことになります。
打撃重視の打順の組み方は、2番に最強打者を入れ、1番から6番まで強い打球が打てる選手を並べます。打順を輪として考えると、下位打線もそのまま1番・2番へと続いていくわけですから、打順が下位の選手が出塁したら、そのままチャンス到来と言うことになります。
これ、本書では言及されていませんでしたが、数学的にはかなり理に適った方法だと言うことです。一般的な野球のセオリーでは2番に小技のできる選手を入れることになっていますが、数学的には2番に最強打者を入れることが効率よく得点を取ることができるんだそうです。偶然にしても、大量得点を挙げるには理に適った打順だった、ということですね。
監督の方針もちょっとヘンテコなら、選手達もかなり変わっています。それぞれが自分で納得いくように考えるのです。著者がインタビューしても、理路整然と答える選手が多く、「頭で野球をしている」んですが…それ、言葉の意味が違わないですか?(笑)
本書を読んでいて感じたのは、大学時代の恩師の言葉です。
「行動する人は考えない。考える人は行動できない」
ある種の極論ではありますが、行動というのは事前準備をいくらしたとはいえ、それらを振り切って何かをするという側面があります。野球に限らずスポーツというのは身体を動かしてナンボなのに、その身体の操作を全部脳で制御しようとしちゃっているせいで行動がワンテンポ遅れがちになってるように感じました。(状況と正解を見極めようとする受験エリートの特性のマイナス面、というのはいささか言いすぎかもしれませんが…)
頭脳野球だと思いきや、蓋を開けてみると常識外れの「ドサクサ野球」だったのに大笑いしつつも、選手達の野球への取り組み方を見ていると、「考えることに偏重するのもちょっとなぁ…」と色々考えさせられました。
いつもはヘンテコな対象についてあれこれ考えて混乱する著者。今回はそんな著者とよく似た人たちが取材対象だったので、少しやりにくそうな印象を受けました。「この子達、ちょっと考えすぎなんじゃ無いだろうか…」って、それ、著者自身もそうなんですよ!
まぁとにかくヘンテコな野球部の話で、間違いなく楽しめます。オススメです。 -
高橋秀実さんの本は、何冊も読んでいるが、いつもどうにも居心地が悪い。おもしろいのかと問われれば、まあおもしろいのだけど。この本が話題になるのは何故なのか考えてみたがよくわからない。
-
苦笑・爆笑・微笑。何回もニヤニヤしたり噴き出したりしながらページをめくりました。(電車で読むのは厳重注意!)コントみたいに噛み合っているんだかいないんだかわからない会話。クールなんだか熱いのかわからないキャラクター。超進学校のそこそこ強い野球部をテーマにした時点で作者は勝利していたのかもしれません。勝利といっても高校生と一緒になってモヤモヤヤキモキしてるだけなのですが…その柔らかな取材スタンスにLOVEを感じます。それぞれ自分を客観視しながら自己分析する開成野球部員のコトバとステレオタイプな頑張りに自分をうずめる普通の野球部員のコトバの違いがこの学校のユニークネスを明らかにしていると思いました。ただ、客観的な「は」を主観的な「が」にしなければ!という壁も感じている訳で、そのジレンマも面白い。生徒もそうですか青木監督もハッキリ言ってヘンテコです。色んな野球を存在させるために甲子園ってあるのかな、と思いました。愛すべきヘンテコ開成野球、いつか甲子園に出る日を待っています!
-
「開成高校の硬式野球部はそこそこ強い。」
名門校ファンには周知の事実。
実は開成高校硬式野球部、専用グラウンドは持っておらず、学校内のグラウンドを週1回使えるだけ。そんな劣悪な練習環境の中、平成17年には全国高等学校野球選手権大会 東東京予選のベスト16まで勝ち進んだ。
その開成高校硬式野球部の強さの秘密が書かれた本。
そのポイントをいくつか上げると...
・限られた練習時間を守備の連携など高度な練習に費やしても費用対効果が割に合わない。練習するとしたら攻撃。
・1試合で、あるポジションに打球が飛ぶのは2~3回。なので、ボールをとる技術をあまり鍛えても費用対効果が割に合わない。
・エラーしても泣かない。ある回に10点取られたら、相手が油断したところをその裏で15点取り返す。
・攻撃時のサインプレーは練習しない。サインをだしても上手く動けるほど練習できない。
などなど。
まさに弱者の戦略、と言ったふう。
そして硬式野球部員、さすが開成高校に合格できる人間となると一癖も二癖もある連中。著者によるインタビューで珍回答が数多く飛び出す。
しかし本人達はいたって真剣。
著者も含めて一般人には良く分からないこだわりどころを数多く持つ面々の、珍問答も本書の楽しみどころ。 -
開成高校野球部にノンフィクション作家の著者が密着して、その野球に対する独特な誉れを追いかける内容です。
個々の力が弱く、練習量も圧倒的に少ない開成高校野球部は、それを十分自覚した上で野球のセオリーを逸脱して勝つ戦略を模索します。開成高校生の自然と野球からも何かを学び取ろうとしたり、自主練にもそれぞれの理論を持ち込んでそれを実験しようとする姿は純粋でした。あくまで強豪校に勝つことを目的とする姿勢は読んでいて心地よかったです。
野球が好きな僕はもちろん面白く読めましたが、あまり興味のない人でも楽しめる内容だと思いました。 -
話題の本だったので借りましたが予想以上に面白かった。みんな頭がよくて素直・・・。いえ、きっと日本を支えてゆく人になってゆかれる方々なんでしょうが・・・微笑ましかったです。下手と言い切ってしまうあたりがすがすがしい。その中での勝ち方を考えている監督も素晴らしいですね。
なんでも理屈で考えてしまうがゆえに一歩遅い感じ、なかなか意志や感情の表現にたどり着かず回り道のインタビュー・・・野球はよくわからなくても下手な部分も臨場感があり、想像できて楽しく読めました。
開成は1度運動会に行ったことがあって、余計に親近感もあり楽しく読めました。ちなみに私の印象では棒倒しに燃える男子高校生たちは決してもやしっ子ではなかったです。
挫折感とか考えて努力することは絶対にこの先に生きてくると思うので、今後もがばってほしいものです。いつか開成が甲子園初出場!というニュースを見たい。 -
開成高校野球部のトンデモ奇襲作戦本。開成の作戦というと高度な頭脳プレーなのかと思いきや、実は奇襲をして、相手を精神的にやっつけ、そのままコールド勝ちを狙うというものだった。あっけらかんとした監督と、その生徒達のやりとりがなんとなく笑えてしまう。とても面白かった。著者の高橋秀実は毎回取り上げるテーマが独特で自作が注目である。