冬の物語

  • 新潮社
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (363ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105069810

作品紹介・あらすじ

ナチス占領下のデンマークで書かれ、作家自身がもっとも愛した短篇小説集。北欧の春は華やかに押し寄せ、美しい夏が駆け抜けると、長く厳しい冬がひたすらつづく。ナチス・ドイツ占領下にあった冬の時代、デンマークの人びとの生の営みを、大自然のなかに灯された命の輝きとして描きだす。『アフリカの日々』の作家が物語る力を存分に発揮した作品集。〈イサク・ディネセン生誕一三〇周年〉

感想・レビュー・書評

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  • 派手ではなく、じわじわと染み込んで来て、いつのまにか飲み込まれているような作品ばかりだった。
    「冬の物語」というタイトルがぴったりで、その中には温かな春の予兆を内包しているようなものもあれば、夏になっても溶けないだろう硬く凍りついた雪の冷たさを感じるものもある。
    ナチスドイツ占領下で書かれたと思うと、胸の更に奥まで沈むなぁ…。

  • 「冬の物語」というタイトルがぴったりな11の物語の短編集。装丁も綺麗。
    「バベットの晩餐会」繋がりで購入。
    気に入った作家さんは一通りの作品を読むスタイル。

    デンマークの景色を想像しながら読んだ。
    出てくる固有名詞も異国情緒を誘う。

    すんなり読めなかった短編もあったので、またしばらくしたら再読したい。

  • ストーリーは静かに進んでいくが、とても面白い。
    訳者後書きにも書かれているように村の年寄りから聞く民話、或いは大人の為の童話といった雰囲気がある。
    「少年水夫の話」「無敵の奴隷所有者たち」「女の英雄」「ペーターとローサ」「悲しみの畑」が個人的には好み。

    作中の女性の描き方が上手いな…と思っていたら、著者は女性(今作品は男性名で出版)と知り納得。

  • 静かな物語
    その間にさまざまな空気が波のように音も無く押し寄せては引いていく

  • 静けさの中にゾクリとした破片が散りばめられていて、うっかり通り過ぎ、引き返して確かめる(二度読み)。それは雪に埋もれた何かの死体のようであり、触れた瞬間に毒素と臭気に取り囲まれ、既に以前の自分ではなくなっている。あら、別に恐ろしい話ばかりでないわよ。おとぎ話のように普通に奇跡が起こって、なにくわぬ顔で皆受け入れてるわよ。その静かさ、重さがオリジナルな感じ。デンマークの人で、結婚して農園やってて辞めてから執筆開始したらしく、硬貨になってるそうだ。また読んでみたい。男性名だが女性という、捜しにくそうだけども。

  • ナチス占領下のデンマークで書かれた本書を、戦争が始まった冬の日に読む。「『冬』の物語」は人びとの心の季節だろうか。長い冬を予感する。

    まずあまりの話の巧さに驚く。そしてべらぼうに面白い……ゆったり描写される美しい風景のなか、人びとは自らの意思で運命を掴んで生きていく、あるいは死んでいく。物語を読む喜びに満ち足りる。

    これらの素晴らしい物語は個人の尊厳について、また個人の尊厳は生まれ育った土地と分かちがたく結びついていることについて書かれている。つまり国土の蹂躙は人びとすべての蹂躪だ。

    ナチスは彼らの大きな物語を強要したが、ディーネセンのいくつもの小さな物語は、冬のフィンランドの窓辺に必ず置かれるキャンドルのように、これから続く長い冬を照らしてくれる。

    物語もさることながら、装丁の素晴らしさにも触れざるを得ない。
    野田あいの装画は北欧のお伽話のよう、見返しや栞紐は表紙の空や湖の青、そして!花ぎれが!栞の青と金茶の2色で!!この茶がめちゃめちゃオシャレ!痺れる…

    「とはいえ人は、この土地に千年以上にわたって住みつき、ここの土と気候によって形づくられ、またその思いによって土地に印をつけてきた。今や、個人としての人間の存在がどこで終わり、別の人間としての存在がどこで始まるのか、だれにもわからなくなっていた。」

  • 「冬の物語」(イサク・ディネセン : 横山貞子 訳)を読んだ。
    しみじみと味わい深い短編集です。
    物語の揺らぎに身を委ね、ゆっくりと深く深く言葉の大海に沈んでいく快感に身悶える。
    北欧のひんやりと透き通った空気の匂いが漂ってくるのは翻訳の横山貞子さんの技に依るのでしょうか。

  • 世界の美しさや非情、運命の皮肉を示す11の短篇。少し前の時代の人々のしきたりや暮らしに神話や聖書の陰影が加えられていて、名画を眺めているような心地がする。牧師夫婦に引き取られた孤独な少女「アルクメーネ」や、子供のいない裕福な商人夫婦が利発な男の子を養子に迎える「夢を見る子」、旧家の末息子と結婚したしっかり者の商人の娘(「真珠」)の女たちが気になる。やや素朴な男たちに比べて女の真意は容易に理解しにくい。だが幸福になれるかどうか分からなくても、自分で生き方を決め、自分の足で立つ強靭さはインパクトがある。「少年水夫の話」の老婆のパンチが愉快。「ペーターとローサ」での、悲痛で美しいラストシーンに息をのんだ。(1942)

  • 文学

  • 言葉にならない。きっと再読すると思う。特に、「ペーターとローサ」(表紙のイラストはその一シーンから)の、心を鷲掴みされるような瞬間の描写が心に残る。
    ホラーでもスプラッタでもない゛戦慄の瞬間”を文字で読みたいかたは、ぜったいに手に取るべき。(2018.5.27読了)

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著者プロフィール

1885年デンマーク生まれ。本名カレン・ブリクセン。1914年にアフリカに渡り17年間農園を経営する。帰国後、本書のほか、『七つのゴシック物語』『バベットの晩餐会』など、物語性豊かな名作を遺した。

「2018年 『アフリカの日々』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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