- Amazon.co.jp ・本 (334ページ)
- / ISBN・EAN: 9784105191153
作品紹介・あらすじ
美しい図書館司書に恋をした少年は、ハンサムで冷酷なレスリング選手にも惹かれていた――。小さな田舎町に生まれ、バイセクシャルとしての自分を葛藤の後に受け入れた少年。やがて彼は、友人たちも、そして自らの父親も、それぞれに性の秘密を抱えていたことを知る――。ある多情な作家と彼が愛したセクシャル・マイノリティーたちの、半世紀にわたる性の物語。切なくあたたかな、欲望と秘密をめぐる傑作長篇。
感想・レビュー・書評
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ハリーお祖父ちゃんが本当に素敵な人です。愛してる人が誰を愛そうと見守ってくれるお祖父ちゃんの優しさやミス・フロストなどの素敵な人に出会いながら主人公が自分のセクシュアリティに向き合い、成長する物語。私自身の性自認について熟考する機会を与えてくれた本。下巻楽しみ!
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#傷ついて渇く体でもっと知るイヤーブックのページ繰る指
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差別や偏見、劣等感、愛する人との不和や別れ、そして親しい人々の老いや病気、死など、性的マイノリティである主人公の人生が描かれる。作家である主人公の回想という形で構成されている点が面白い。わたしは、多くの性的マイノリティの人々が自分自身の性の不確かな時期に感じる恐怖や葛藤について考えた事はなかったし、バイセクシャルであるが故の疎外感にも思い到ることはなかったし、80年代のエイズという病気がゲイの人々に対する差別をも孕む社会問題であったことも知らなかった。小説の魅力は様々あるけれど、時代も年齢も性別も環境も異なる人々の経験や思いを知る、気付くことが出来るという点は大きい。その意味で、この小説を読むことが出来て本当に良かった。多様性に対して寛容な社会をつくるために、小説はとても良い働きをするだろうと思う。
「きっとすぐに本がどっと流れ込んでくるんじゃないかな」
「この三つの小説がこの子をどこへ導くか、とにかく見てみましょうよ、ね?」 -
ミス・フロストもトランスジェンダーだったのにはたまげた・・・
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ジョン・アーヴィングの作品は全部読んでいるはずだが、この人は「語りなおす」のだなと再認識。セクシャルマイノリティ、ディケンズ、レスリング、不条理な大量の死、熊も少し。これらを織り込みながら、主人公の人生と成長を饒舌に綴りながら、テーマを浮かび上がらせる。村上春樹もこのタイプだと思っている。既読感はあるのだが、作家は言いたいことを伝えるために何度でも語りなおす。
本書のテーマはLGBT(あー私もアルファベットの正しい順番を考えてしまった)。しかし本来的には、愛に翻弄される人間のクロニクルだ。バイセクシュアルの作家となった主人公は、田舎町で美しい司書に、トランスセクシュアルと知らず恋をする少年時代から、数々の出会いや別れを経た現在までを振り返る。
時制が自由に行き来し、親友や父を巡るミステリー的な謎解きも含み、そのストーリーテリングのうまさが上質の読書体験を保証する。田舎町のLGBTへの偏見、エイズによる死は禍々しいが、アーヴィング流の暖かいユーモアで包まれている。 -
語り手はビリー。ヴァーモントの田舎町出身、70歳を目前にし、バイセクシュアルの自分の人生を振り返る。
13歳で親子ほど年の離れた美人図書館司書ミス・フロストに惹かれ、本嫌いだったビリーは本の虫となり、ディケンズの「大いなる遺産」を読んで作家を志す。彼女に憧れる一方でレスリング部の美しく残忍な少年キトリッジにも惹かれ、バイセクシュアルの自覚を持つ。
セクシャル・マイノリティな彼を取り巻く人々の混乱や反発、非難や受容、そして愛。
ミス・フロストによる文学の手引き。
思春期の彼の初恋・初体験を軸に展開する上巻。 -
アーヴィング「ひとりの体で」http://www.shinchosha.co.jp/book/519115/ 読んだ。よかったけど辛い。アーヴィングの小説でおなじみの要素、父の不在、死と暴力、レスリング、弱き者、は同じだけど、ここまで死が怒濤に描かれたものはあるか。身内友人知人愛した人までが次々に死ぬ(つづく
上巻のエピソードが下巻で別の形になり重みを持って再登場する。無数の伏線とそれを結実させる構成力は見事だけど読んでいて本当に辛い。泣いてしまうので電車の中では読めなかった。老作家の一人称文体は手記ではなく人生話を吐露するような口語体で、相手の想定が気になる、読者ではなさそう(つづく
女装、同性愛、バイ、身体上精神上の性転換、構音障害、とマイノリティが次々に登場する。キリスト教由来のソドミ法、自由を謳いつつマッチョで硬直したアメリカという国におけるエイズ。冒頭の、大嵐の船上でボヴァリー夫人を読み続ける本好きのエピソードと、ラストのジーの存在が唯一明るい(おわり -
アーヴィング「ひとりの体で」http://www.shinchosha.co.jp/book/519115/ 読んだ。よかったけど辛い。アーヴィングの小説でおなじみの要素、父の不在、死と暴力、レスリング、弱き者、は同じだけど、ここまで死が怒濤に描かれたものはあるか。身内友人知人愛した人までが次々に死ぬ(つづく
上巻のエピソードが下巻で別の形になり重みを持って再登場する。無数の伏線とそれを結実させる構成力は見事だけど読んでいて本当に辛い。泣いてしまうので電車の中では読めなかった。老作家の一人称文体は手記ではなく人生話を吐露するような口語体で、相手の想定が気になる、読者ではなさそう(つづく
女装、同性愛、バイ、身体上精神上の性転換、構音障害、とマイノリティが次々に登場する。キリスト教由来のソドミ法、自由を謳いつつマッチョで硬直したアメリカという国におけるエイズ。冒頭の、大嵐の船上でボヴァリー夫人を読み続ける本好きのエピソードと、ラストのジーの存在が唯一明るい(おわり -
性的な嗜好が他人と異なると、その自己発見が人生を通じたテーマにもなりうるのだ、ということが発見だった。
その点は目新しく、しばらく楽しめたが、この分厚い本全体がずっとえんえんその話なので、
人生それだけじゃないだろうという思いが募ってきた。もし1/3の長さに圧縮されていたら、楽しかっただろうと思う。