ソーラー (Shinchosha CREST BOOKS)

  • 新潮社
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本棚登録 : 287
感想 : 41
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  • Amazon.co.jp ・本 (361ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105900915

感想・レビュー・書評

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  •  学界の住人の日常という個人的にはなじみのない世界が新鮮だったこと、声に出して笑ってしまうジョークの数々のおかげで星印2つを免れたが、短編を集めたようなまとまりのなさはEnduring Loveにも共通した落ち度だと思う。ダメ男が主人公の小説はダメぶりに読者が同情できない場合、ダメさにユニークな救済がない場合、物語に入り込むことも、物語にひっぱられるという読書の愉しみをもつことも読者としては難しいと感じた。マイケル・ビアードの表面的な女好きとは裏腹な、不感症ともいえる人間嫌いがコメディ的要素としっくりこないのもまとまりのなさに寄与しているのかもしれない。コメディ的要素が運動音痴の知的オタクVS肉体派とかイギリス人がアメリカ人の表現の単純明快さに心ひかれてしまうなど類型的なのもカンベンしてほしかった。いいアイデアがたくさんつまった小説だが各所がプロットや人物の説明になってしまっていて不器用さが目立つ。その最たるものは結末に至るまでの伏線の張り方があまりにもしつこいため、終わりから30ページ前で結末が予期できてしまったことだろう。
     薦められない本ではない。軽いエンターテイメントをという人になら躊躇なく薦めるし、映画化してもいいのではと思う。映画化した時にどこをどう端折るかが簡単に思いついてしまうのが悲しいところだが。

  • マイケル・ビアードは、狡猾で好色なノーベル賞受賞科学者。受賞後は新しい研究に取り組むでもなく、研究所の名誉職を務めたり、金の集まりそうな催しで講演をしたりの日々。五番目の妻に別れを告げられた後は、同僚の発明した新しい太陽光発電のアイディアを横取りしてひと儲を狙っている。そんな彼を取り巻く、優しくも打算的な女たち。残酷で移り気なマスメディア。欺瞞に満ちた科学界とエネルギー業界-。一人の男の人生の悲哀とともに、現代社会の矛盾と滑稽さを容赦なく描き切る、イギリスの名匠による痛快でやがて悲しい最新長篇。
    原題:Solar
    (2011年)

  • はじめは「イギリス人はなんてせせこましい小説が好きなんだろう」と思いつつ読んでいたが、そのうちジワジワと面白みが湧いてきた。ノーベル賞受賞者が実はこんなセコイ男で、なんて設定はどちらかというと陳腐な感じすらするものの、細かい話芸で読者を放さない。

    ワタクシのせまい読書経験の範囲での感想を述べてしまえば町田康に似ている気がする。防寒手袋を何度もつけたり外したりするシーンとか、そういう細かい芸風が。

  • 書評の、マキューアンの作品で最も笑えて最も悲しい、というのがまさに。
    どうしようもない男とどうしようもない周囲の人々を描く筆には、たくさんの皮肉とちょっとの同情が込められているように思う。
    科学的な知識があればもっと楽しめるのだろうが、なくても充分面白い。
    誰かの悲劇は誰かの喜劇。
    自分の悲劇も誰かの喜劇。
    やっぱり上手いなぁ、マキューアン。

  • 終着地点が最後まで分からない面白さがあったが、如何せん文が読みづらい。
    改行、章立て等工夫が欲しい。

  • 軽やかにテンポ良くシニカルに、1人の科学者の人生を描く。最近読んだものの中では、奥泉光の「クワコー」ものとテイストが似ている。毒舌ものは、センスがあえば読んでて楽しい。

  • イアン・マキューアンを読むのは『贖罪』『初夜』に続いて3作目。相変わらず背景が緻密で「その見事さはこの分野で研究に勤しむMITの科学者たちがメモを盗まれたのではないかと訝るほどだろう」とTimeに評されるほど。現代のエネルギー問題を皮肉りつつ、5番目の妻と破綻しそうなちび・でぶ・禿げの53歳ノーベル賞受賞科学者が好色かつ狡猾に奔走する姿がテンポよく語られる。個人的には北極圏でのドジの数々がお気に入り。人生の滑稽さ・哀しさが胸に迫る作品であった。

    44字 × 20行 × 361ページ
    スカスカのラノベ5冊分くらいの読みでがあった。

  • 興味深いテーマを扱っていて読む意義みたいなものはすごく感じたんだけど、主人公が壮絶にやなヤツで、しかも読後、後味がよくない。けど、面白い。

  • 豊崎社長レビューを聞いて購読。
    これでもかというほど細かいディテール描写が海外の小説だなぁと言う感じで読みごたえは充分。ただちびデブハゲ教授もそれなりにまっとうな人で期待していたほどユーモアが少ない印象でした…。
    テーマ的にも優等生ではあるけれど、唯一無二な魅力のある本ではないかなと言うのが個人的な感想です。

  • 最後はあっけない終わり方

著者プロフィール

イアン・マキューアン1948年英国ハンプシャー生まれ。75年デビュー作『最初の恋、最後の儀式』でサマセット・モーム賞受賞後、現代イギリス文学を代表する小説家として不動の地位を保つ。『セメント・ガーデン』『イノセント』、『アムステルダム』『贖罪』『恋するアダム』等邦訳多数。

「2023年 『夢みるピーターの七つの冒険』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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