- Amazon.co.jp ・本 (188ページ)
- / ISBN・EAN: 9784105900991
感想・レビュー・書評
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久しぶりにジュリアン・バーンズを読みました。「ベロニカとの記憶」という邦題で映画化された作品らしいですが、映画は見ていません。でも、映画が見たくなるタイプの作品でした。
小説らしい(?)小説でした。「あなたは何もわかっていない」という言葉が、作品から出てきて、読んでいるぼくのなかに突き刺さる、久しぶりにそういう体験をしました。
ブログで、少し書きました。覗いてくださればうれしい。
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自分の記憶でできた真実と、自分の知らない真実が交わったときの残酷さ
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大好きなジュリアン・バーンズ・・・といっても例によって過去作をあまり覚えていない。しかし本作でブッカ―賞受賞したが、これが彼のベストではないとは思う。ひねった仕掛けのある、ユーモラスで、怜悧なエッジの効いた小説を書く作家というイメージがあるが、本作は「けっこう普通」に話が進む。もっともそこはバーンズ、ラストに二段落ちを用意し、ミステリー的な仕掛けを見せるのだが。
テーマは記憶。初老の男が若い時の恋愛や友情に裏切られる物語。誰も痛すぎる思い出を抱えて生きていけない、都合よく歪めたのち片隅に追いやっている。ごく平凡な男のそんな不都合な記憶の恐るべき顛末を、薄暗がりからずるずると引き出して見せるのは、バーンズの切れ味だ。 -
ブッカー賞受賞作品ということで読んでみました。
晩年にさしかかった主人公が、ある日昔の彼女の母親から、自殺した友人の日記を遺されたことをきっかけに、過去のことを思い出す…というストーリーです。中篇なので、すぐに読めます。
後悔しても変えられない過去、そしてその過去を巡るミステリ的展開でどんどん読めました。
最後はかなりびっくりです。 -
3.68/715
内容(「BOOK」データベースより)
『穏やかな引退生活を送る男のもとに、見知らぬ弁護士から手紙が届く。日記と500ポンドをあなたに遺した女性がいると。記憶をたどるうち、その人が学生時代の恋人ベロニカの母親だったことを思い出す。託されたのは、高校時代の親友でケンブリッジ在学中に自殺したエイドリアンの日記。別れたあとベロニカは、彼の恋人となっていた。だがなぜ、その日記が母親のところに?―ウィットあふれる優美な文章。衝撃的エンディング。記憶と時間をめぐるサスペンスフルな中篇小説。2011年度ブッカー賞受賞作。』
原書名:『The Sense of an Ending』
著者:ジュリアン・バーンズ (Julian Barnes)
訳者:土屋 政雄
出版社 : 新潮社
ペーパーバック : 188ページ
受賞:ブッカー賞(2011年) -
凍った湖を進んでいくような静かな緊張感に支配された作品だ。語り口の柔らかさすら、恐る恐る踏み出す一歩の慎重さと重なってしまう。最後のぺージにたどり着き、緊張感から解放されると、今度はどうしようもない虚しさが襲ってくる。手が届かないものの存在を突き付けられ、悄然と立ち尽くすしかない時の虚無感だ。記憶の不確かさ、過去の過ち、他人の選択。人生は数式で表すには混とんとして、いたずらに人間を振り回す。物語は終わっても、主人公たちの生は続いていく。
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映画「ベロニカとの記憶」の原作
記憶の曖昧さ、ご都合主義の思い込み、歴史の定義など、学生時代から初老に差し掛かった現在までのトニーの心理描写を、時に哲学的に、時に滑稽に(と言うかコミカルに)これでもかという程細かく表現した文章がすごかった。
人は何十年も昔の出来事を鮮明に覚えている訳ではなく、ほとんどがぼんやりと紗が掛かったような記憶でしかない。トニーの場合は自分が撒いた悪しき記憶を完全に葬り去り、更に自分の都合の良いようにねじ曲げられている。
教科書に出て来る歴史も、勝者と敗者によって語り方が違うのではと言うことを著書は言いたかったのかなと思った。
物語はトニーとガールフレンドだったベロニカと、親友のエイドリアンとベロニカの母サラの四角関係のような話だけど、私にはベロニカの行動や言動が理解し難かった。特に40数年後にトニーと再会して「あなたは何もわかっていない!」と何度も怒っているけど、詳しい事も語らずトニーを振り回しているだけのように思える。
しかし映画でもびっくりしたけれど、ラストでトニーが知った真実は意外だった。これでトニーはベロニカ(とエイドリアンとサラ)との物語を終わらせる、と言うのが「終わりの感覚(The Sense of an Ending)」って言う意味なのかな?このタイトルの意味がいまいちわからなかった。