- Amazon.co.jp ・本 (391ページ)
- / ISBN・EAN: 9784105901066
感想・レビュー・書評
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厳しいというのがまず感じたこと。もちろん現実とは厳しいものなのだから、小説もこうなるのは当然のことなのかもしれない。それから私が言葉に置き換えることのできなかったいくつかの事柄が言葉になっていて、腑に落ちた。ごく一般的にいってそうなのね、と。
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始まりは静かで時に退屈な感じすらして、すらすらと読み進めることができない。ところが予想外の展開で物語の渦に巻き込まれ、気が付けば夢中で読んでいる。そして唐突とも思えるようなラストに呆然とし、放り出されたところで立ち止まり考え込んでしまう…。
濃い本だった。短編集だけど一話一話がずっしり重い。
淡々とした文章、でも無駄のない的確な描写とその視線の厳しさに、心が波打つ。
最後四話、著者の自伝的な話の中に出てくるのは、最近注目されている母と娘の複雑な関係。
特に母親が歳をとってからの記述には考えさせられる。
著者の筆致の中に見える冷えた感じが母親のそれと似ていて、そこに血の繋がりを感じてしまうのは、私の勝手な思い込みだろうか。 -
日頃ほとんど意識しない、心の隅にごくうすく存在しているだけの茶色いシミが、ちょっとしたきっかけで、気のせいか黒っぽさが増す感じ。
愛着。 -
ノーベル賞受賞、というと固くて難しい小説なのかと勝手なイメージを持ってしまうのだけど、全く予想と異なり、中まで入り込めるしなやかで魅力的な小説集だった。
読んでいてジュンパ・ラヒリの「停電の夜に」を思い出したが、私はこちらの方が好き。
「停電の夜に」は鋭くシビアだったが、それは作者の若さゆえもあると思う。
「ディア・ライフ」も、そこは隠しておきたかったというところを暴きはするけれど、人の弱さやずるさも苦笑で包むような、熟した人間のまろやかさを感じる。
これが元々のマンローの作風なのかも知れないけれど、どこか達観し、無条件に慈しみを注ぐような眼差しは、年齢も無関係ではないように思った。
特に自伝的なものと書かれた「フィナーレ」が秀逸。
マンローはこの作品をもって引退を表明しているとのことだけれど、もっと読みたい、というのがわがままな読者の願い。
叶うかどうかわからないけれど、それまでマンローの他の作品を読みながら静かに待っていたい。
そう思わせる作品だった。 -
最後に「フィナーレ」として、作家が自身について語る自伝的な4篇が収められている。
「夜」には、口に出せない残酷な思いにとらわれ、それから逃れるように夜の町を彷徨い歩くようになった少女の焦燥感が描かれる。ある日、父親は、そんな娘をさりげなく肯定し、受け入れ、少女は救われる。私も一緒に救われたような気がした。 -
ノーベル賞を受賞した短編小説家ということで、気になって読んでみました。
短編小説の真髄とはこういうものか、と理解しました。決してはっきりとストーリーを描かない。人物や情景の描写で何が起きたかを間接的に語り、精緻な描写で文章から絵を紡ぎ出しながら余白を残す。読者にゆだねながら力強いストーリーを展開する技術の高さに驚きました。こんな作家がいるんですね。
もう新作は書かないと宣言されているそうです。「イラクサ」なんかも有名なので、ぜひ読んでみたいです。 -
ML 2015.4.25-2015.5.2
途中でリタイア -
「北の大地、普通の人々のさまざまなリアル」この短編集では、そんなリアルが、1ページにいくつも展開するので、短編1つ1つが、それぞれ長編小説1冊分の「味とコク」を持つという不思議さを味わえる。
「短編小説の女王」カナダの女流作家アリス・マンローは、現在82歳。 2013年のノーベル文学賞をカナダ人として初めて受賞したが、 昨夏、引退を表明しているので、この作品集は「最後の短編集」とされている。書名の「ディア・ライフ」は、あえて訳せば「愛しき人生」という感じだろうか?
ふとしたことで大きく変わったことをあとから気づくわたしたち。そして最後の一行「何かについて、とても許せることではないとか、けっして自分を許せないとか、わたしたちは言う。でもわたしたちは許すのだ——いつだって許すのだ。」
キャンパスでみずからのライフをデザイン中の学生たちに、ぜひ勧めたい。 [ライフデザイン学科 脇田哲志先生]