- Amazon.co.jp ・本 (235ページ)
- / ISBN・EAN: 9784105901394
感想・レビュー・書評
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1章は老齢に差し掛かろうとする年齢となった主人公の現代と過去がドイツ語らしい硬筆な筆致で語られ、面白かった。主人公である″ぼく″は、法律事務所に務め、仕事の都合でシドニーへやって来たのだ。そして、とあるアートギャラリーに飾られた′階段を下りる裸婦′の絵を観たことで、若い頃恋に落ちた女性と駆け落ちを企て、裏切られた苦い思い出を回想する。その後思いがけず、彼女がシドニー近郊に長年、不法滞在している事を突き止め…といった感じ。
ところが第2章以降、物語として急展開があり、ドイツ人らしい観念的応酬なども合わさってくるにつれて、読み進めるのが苦痛になってきてしまった。
なんとか読み終えたが、今の私には水が合わなかったとしか言いようがない。
年齢を含めた人生経験の無さ、ドイツ人とは異なる日本人としての感覚などが原因なのかもしれない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
型通りの成功を手に入れた主人公が、年月を経て、昔夢中になった女と再会する。
彼の独りよがりは、若い頃と変わらず痛ましい。
しかし、自由に生きてきた、年を取ってもなお魅力的な彼女は、彼に何をもたらすのか。 -
世界は自分の見方でしか見られないけれど、その中で何かひっかかる(執着する)ものがあるということは幸せなことなのかな、と感じる。
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数十年前に失踪した女性と一枚の絵。
その絵を再び見つけてしまったら…
彼女と実業家の前々夫、絵を描いた画家の前夫、私。
失踪していた空白の月日。
風変わりなシチュエーションより、FALL IN LOVEした心は何十年たっても、彼女に向けてしか特別な開き方をしていなかった、ということの切なさ。
恋によって人生の見え方が変わってしまうことを外からみている、映画「(500)日のサマー」と、
1人の女性を巡る男たちのおかしな交流は、イアン・マキューアン「アムステルダム」を思い出した。