科学嫌いが日本を滅ぼす―「ネイチャー」「サイエンス」に何を学ぶか (新潮選書)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106036958

感想・レビュー・書評

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  • サクッと読める本。
    ネイチャーとサイエンスで比較するとこんな違うのかーと改めて実感。
    ちなみに私はネイチャー派。
    ネイチャーダイジェストは愛読してます。自分の専門分野以外とか、科学関連のニュースなんかも分かりやすく楽しく読めるから。

    高校生向けのネイチャーダイジェストとかあったら、もっと科学に興味持つ学生が増えるんじゃなかろうかとか思った。
    あと、女子向けとか。
    作るの楽しそう。

    エネルギー問題もグループワーク的なもので勉強したから親近感あったな。
    超電導の先生とかも概ね同じようなこと言ってたけど、風力発電に携わる先生はもっと現実的に前向きだったような。。。

  •  科学に興味のある人はもちろん、科学嫌いの方にも是非読んでもらいたい一冊です。難しい数式はなく、平易な文章で書かれていますので、読みやすかったです。

     本書は世界を代表する2大科学雑誌「ネイチャー」と「サイエンス」の比較を通じて、科学を正しく、わかりやすく伝えるということの重要性を問いかけているように思えます。特に東北大震災後の原発事故の報道や、トンデモさんのデマを見ると強く感じます。

     トンデモさんといえば、本書でも疑似科学の話題にも触れています。筆者は「人類の科学レベルでは解明できないことは無数にある。超能力や超常現象だって、100年後には反証可能となり、ふつうの能力や現象として、学校で科学の時間に教わるようになるかもしれない。」と述べています。確かに科学で解明できないことはありますが、疑似科学の多くは、ちゃんとした論理の組立もなく、ずさんな実験方法が多いので、100年後に反証可能となることはないでしょう。

     疑似科学は論文として掲載されるだけならまだいいですが、多くの疑似科学は、本やネットを通じて伝わり、詐欺まがいのことや健康被害といった社会問題になりやすいのです。疑似科学ではこういう問題が起こりやすいので、私は筆者ほど寛容にはなれません。
     

  • 日本では科学雑誌はあまりメジャーではないけれど、英国では「ネイチャー」は商業誌として十分に成り立っているし、「サイエンス」を発行している米国では科学に対する信仰が厚いそうだ。

    それに比べると、日本は科学の恩恵を十分に受けているものの、あまり科学に対しての信仰は熱くないし、科学リテラシーは高くないだろう。資源のなく、科学や技術を磨くしかない日本にとっては、日頃から興味をもっていけないだろうな。

    原発と科学にも、言及をしていて、納得することが多かった。科学の借りは科学で返さないとね。

  • 凄く読みやすい文章。雑学の宝庫でもありました。

  • 科学リテラシーを高めるための入門書として読んだ。紹介されるエピソードが素人には面白く、入り口としては満足している。読んで、スカッとした気持ちにさせられた。
    「ネイチャー」、「サイエンス」の違いは興味深いし、このような雑誌が商業的にも成り立っているところは確かに日本とは違うところだ。
    蛇足ながら、若い娘を持つアラフィフ親父としても筆者を応援したい。

  •  イギリスの「ネイチャー」とアメリカの「サイエンス」。この二大科学雑誌を中心に,科学について語る。両誌の歴史,科学にまつわるスキャンダル,日本の科学の未来まで。
     なぜ英米のこの二誌が抜きんでたのか,アインシュタインの人生を概観することで要領よく説明。ドイツ語の凋落はやはり戦争のせいだな。
     ピアレビューの制度が20世紀の初めの方まではなかったというのは意外。南方熊楠はネイチャーに51本も論文が掲載されてるが,それは査読が始まる前。
     著者の竹内氏には確か遅くできた子供がいたけど,その出産のときホメオパシーに遭遇した体験談があった。助産師が妻を産気づかせるために砂糖玉をくれて,それで陣痛が強くなったんだって。そんなホメオパシーを肯定する論文がネイチャーに掲載されたこともあるらしい。1988年。
     でも著者は擬似科学にすぎないからという理由で掲載しないという態度はいけないという。有力な科学誌が掲載したおかげで,その検証が行なわれ,ホメオパシーが科学的にダメであると決着がついたんだから良いではないかと。うーむ,そんなものかな??
     福一原発震災についても熱く語っている。科学不信がはびこる状況にいたたまれないらしく,悪質な危険デマを糾弾。昔から行なわれてきたイデオロギッシュな立場からのダメ批判が,反原発の声をすべていっしょくたに「狼少年」と切り捨てる風土を産んできた。そのことが,今回の惨事につながったとしてる。

  • 最後の章の原発がらみの論考が秀逸だ.イデオロギー偏重の絶え間ない反対意見に麻痺して,正常な科学的判断ができなくなったことは事実だろう.地元の電力会社元幹部から聞いた話だが,技術系社長が原発事故は起こると正直に述べたことが大問題になった由.事故は起こるものだという常識がマスコミや反対ゴロには理解できないようだ.科学的なリテラシーが不足しているのだ!

  • 私は竹内氏の書いた本はほぼすべて読んでいるが、本書は中でも政治的・社会的メッセージ性が強い本だと思う。そしてその見解は示唆に富んでいる。著者の背景に裏打ちされた提言は一読の価値あり。
    ・イギリスの一部の大学には、同じ講座に二人の教授がいる。一人は実力で這いあがった人、もう一方は上流階級出身のお金に余裕がある人。
    ・ネイチャーは商業誌で、サイエンスは学会の機関紙。
    ・ネイチャー編集部には変わった編集長が多い。ローラ・ガーウィンはハーバードを出てからオックスフォードに入り、ケンブリッジ大学でも博士号をとったが、いつのまにか音楽家になり、ペンタゴン・ブラスというバンドでトランペットを吹いている。
    ・キャリー・マリスは、酔って書いた文章がネイチャーに掲載され、真剣に考案したPCR法が論文として載せることを拒否されたゆえ、ネイチャーの権威性に大いに疑問を抱いた。
    ・ネイチャーには以前疑似科学に入る論文が掲載されたことがある。
    ●疑似科学といえども、それを声高に否定するのは寛容にもとる(同感)
    ・ファラデーが大蔵大臣グラッドストンに電磁誘導の実験を示したとき、「何の役に立つのか」と聞かれ、こう答えた。「なんの役にたつのかはわかりませんが、将来、これに税金をかけることができるでしょう」。

  • イギリスのネイチャー誌、アメリカのサイエンス誌を紹介、比較しながら科学そのものの面白さを紹介する。筆者は自身をサイエンスライターと説明するが、まさしく僕のような科学ファンには心地よい文章である。安心感がある。
    最終章で東日本大震災後の非科学的な反原発ブームに極めて冷静に釘をさしながら、なんとか派とか御用なんとかといった低俗な論争に巻き込まれないように、いい意味でスマートに振る舞っているように感じた。
    1992年10月23日号サイエンスに今上陛下の論文が掲載された。DNA二重らせんモデルの研究でロザリンド・フランクリンの研究が盗用され隠蔽された事件。韓国人学者のES細胞スキャンダル。などの紹介あり。
    横田めぐみさんの遺骨と北が主張する灰について、個人的には拉致問題の全体像から見て遺骨は別人のものであるという日本政府の見解に賛成との感想を述べる一方で、帝京大学の鑑定に対して疑義を示したネイチャーの記事を評価する。逆に、官房長官や外務大臣のコメントを不正確であったと指摘する筆者の視点は科学的で中立と感じる。確かに当時のニュースを見ていて何かすっきりしない感を覚えた記憶がある。
    内田麻理香さんに教えてもらった逸話として紹介するファラデーのコメントが面白かった。

  • 本書は「新潮45」で連載されていたコラムを加筆修正してまとめたものである。自然科学の学術業界の全般的な話題を一般読者にわかりやすく説明している。前半では「ネイチャー」と「サイエンス」という二大科学雑誌の占める役割と性質について、後半では疑似科学や捏造の話題を通して「科学はどうあるべきか」ということを考察している。そのため、タイトルから想像するような内容ではなかったものの、それなりに興味深く読んだ。著者は非常にわかりやすく科学を解説してくれる。彼のようなサイエンスライターが日本でももっと増えてほしいと思う。そうすれば、一般の人々ももっと科学に興味を示してくれるだろう。

著者プロフィール

たけうち・かおる サイエンス作家。1960年生まれ。東京大学教養学部教養学科、同大学理学部物理学科卒業。マギル大学大学院博士課程修了(高エネルギー物理学専攻、理学博士)。フリースクール「YES International School」校長も務める。著書に『99・9%は仮説』(光文社新書)、訳書に『WHAT IS LIFE? 生命とは何か』(ポール・ナース著、ダイヤモンド社)などがある。

「2021年 『人と数学のあいだ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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