国家の品格 (新潮新書 141)

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  • Amazon.co.jp ・本 (191ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106101410

感想・レビュー・書評

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  • 高校時代に教師からオススメされた一冊。

    国際人=英語が出来る ではないというのは確かにわかる。
    美的感受性など、日本人らしさを無くしてはいけない。自分の生まれた日本を誇りに思っていこうと思った。

  • 分からんでもないし美しいなと思う。納得できる箇所もあった。けど全力で肯定する気にはなれなかったのは「もう、そういう時代でもないのかもよ」みたいな悪い意味での諦めが自分の中にあるからだと思う。今の時代にこそ必要な思考かもしれないけど、「日本だけが特別なんだ」と鵜呑みにするのは怖いと思った。

  • 著者のズバッと主張するところ、個人的に好きですね。
    世界のあらゆるところに自ら赴き、様々な国の歴史を広く学んでいるからこそ見える国家のあり方。

    特に印象的だったのは、学校のいじめ問題と武士道を絡めているところです。いじめはなぜダメなのか?という問題は、理屈で説明できない。卑怯なからダメだと、ならんものはならんのだと、頭ごなしに子どもに教えなくてはならないというのは、将来教育者を目指す私にとってはグッときました。当事者の気持ちになってみようなんてヌルいことは言ってられないのです。いじめられた経験なんてものは、想像で理解できるものではないからです。こうなって、ああなるからダメだなんて理屈で説明する方がピンとこないのです。

    論理的でなくていいというのは、新しい発想のようで、実は戦前の日本人に根付いていたというのが面白かったです。

  • 2か月前の読了なのでだいぶ内容は抜けてしまったが。『銃・病原菌・鉄』を読んだ直後だったので、どうしても考察や議論が浅い感は否めなかった。日本の伝統芸能や義理人情の文化などを改めて確認できるが、著者の言うこの日本の文化こそが世界を豊かにするという論調はいささかなナショナリズム的な物に後押しされた飛躍を感じるし、ではどのようにして日本の美徳を世界へ浸透させ、それがどのように世界を変えていくのかという具体性に欠けた。個人的にはpatriot でありたいと思っているのでイデオロギーとしてはわかるのだけどね。

    ただ、近現代の論理主義(著者はこれを欧米的価値観とよぶ。まあ近現代の思想は欧米思想が基調なのでそうとも言えるだろう)に対する反駁は興味深かった。人類普遍の論理を尽くすことで、必ずお互いが合意する一般解を求めることができる。しかし実際は論理というのはそんなに素晴らしいものではない。論理というのは、結論から辿っていけば結局は主体が自明と考える命題を出発点とせざるを得ない。主体の思考力によってその根本の前提命題のレベル感は異なるだろうが、究極的には、全ての論理的帰結のよりどころとなるその命題は「自明」とするしかない。ここの説明に、何ら「論理」はない。そして、何を自明とするかというのは、主体の価値観、尺度、哲学(そしてこれららはしばしば主体の立場や状況に大きく左右される)に依って決定される。すなわち、「論理」というのは、何ら普遍的解を提示する保証などなく、むしろ主体の依る前提によって異なる帰結が生まれるものなのだ。そこで著者は、真に重視するべきはこの詭弁的な論理ではなく、その根本を成す価値観だと述べるのだ(彼はその価値観こそ日本的価値観に統一されるべきと述べるのだがそれはさておき)。
    うすうす大学に入ったあたりから自分でも感じていたことではあったが、他者により言語化されたものを読んだことで改めてその認識をブラッシュアップできた。世界の全てについて論理で絶対解が出せる、心のどこかでそんな風に信じていた時期が、僕にもありました。まあ最近は統計学でそれに近いことができるんじゃないかなって思ってきているのだけどそれはまた別のお話。

  • 初めて読んだときは、割と感動して「そうかー、グローバルとか言ってないで日本や国家の良さを見直そう!」などと思ったものでした。しかし30歳も半ばをこえてから、大学院で社会学っぽい領域の修士号取得のため、主に経営学のフィールドから様々な"名著"を読んだ後に眺めたら、とんでもなく薄っぺらく、つまらない本に見えたいくつかの書籍のうちの一つ。論拠がいい加減ですね。学問的な流れもきちんと理解できていない。この方は哲学したつもりなのかもしれないが、単なる"読み物"、ないしは論拠なく日本の良さを語る"エンターテイメント"です。数学者の学問視野ってこんなもんなのかなぁ。

  • 本書は「論理」と「合理性」だけでは社会問題の解決に繋がらないことを指摘し、論理よりも情緒、英語よりも国語、民主主義より武士道精神を重んじてきた品格ある国家・日本に立ち戻り、世界と一線を画すべきだという主張が書かれている。

    第1~2章では、①論理の限界(pp.35-44)、②人間にとって最も重要なことの多くが論理的に説明できない(pp.44-50)、③論理には出発点が必要でそれを選ぶのは情緒や形である(pp.50-55)、④長い論理ほど信憑性がなく、短い論理ほど深みに欠ける(pp.55-64)を理由に挙げ、「論理だけでは人間社会の問題解決は図れない」ことを指摘している。

    第3章では、「③論理には出発点が必要」ということに着目し、欧米人の論理の出発点である「自由・平等・民主主義」の概念に対して疑問を投げかけている。

    私たちの耳慣れた「自由・平等」はそもそもカルヴァンの予定説の潮流に乗ったジョン・ロックの主張が反映されたものであることを論拠に、論理の出発点は神なしでは主張を担保できない、いい加減なものだと主張している(pp.65-74,88-90)。またカルヴァン主義が資本主義を進め(pp.69-72)、自由・平等を前提とした「民主主義」も致命的な欠陥を抱えていると主張している(pp.74-92)。

    第4~6章では、論理の出発点を正しく選ぶために必要な日本人が古来から持つ「情緒」、あるいは伝統に由来する「形」を重んじることが重要であり(pp.95-115,130-157)、情緒を育む精神の形として「武士道精神」を復活させるべきだと述べている(pp.116-129)。そして最終章で他国の文化・思想と日本のそれとを比較しながら、改めて先の議論を強調し(pp.158-190)、武士道精神を重んじてきた品格ある国家・日本に立ち戻り、世界と一線を画すべきだと主張している(pp.191-192)。

    このように詳細に書いたのは、本書の問題点を浮き彫りにするためである。第1~2章に書かれている「論理だけで人間社会の問題解決が図れない」ことは当然である。しかし第3章で主張する「自由・平等・民主主義」が神でしか語れないことの何が問題なのか疑問に感じる。たとえ法の下での制限があったとしても、それは無法地帯のままよりはよいはずである。また武士道精神も、天皇や仏(神)を敬う心が根底にある。そういった点でほかの宗教と変わらないはずである。にもかかわらず、他国の思想を貶めるような批判をし、自国が優れているというような主張に甚だ腹が立つばかりである。

    また著者が理数学者であるという点にも注意が必要だ。学者が自分の研究領域外のことを語るのはもちろん構わない。しかし自分の研究分野外のため、中途半端な主張しかできないし、発言に対する責任も持てない。裏付けが示せない。そういったことでいいわけがない。また論理を否定したら、著者のこの本そのものが論理なわけだから、そういったものもすべて否定されることになるのではないだろうか。

    もちろん、こういった問題はそれぞれの思想の問題である。だが、だからこそ注意深く読む必要があると感じる。学者だからと言っていつも正しいことを言っているとは限らない。他の専門家の主張と比較して、注意深く読む必要がある。

  • 欧米の文化文明に比べて日本のそれがいかに高度だったか、「論理」の限界、伝統的なものや田園、寺院などの「美」的感覚と学問、工業的発達のリンクについて書かれた本。

    「真のエリート」についての部分が特に納得できた。
    国民は永遠に成長しないので、一見むだな教養を身につけた総合判断力のあるエリートが、時には身を投げ打つ覚悟で政治をするというのは、正しい考え方だと思う。
    これは大企業にも同じことが言えるはずだ。

    日本の卑怯、惻隠等、武士道精神が素晴らしく、欧米は駄目だという論調は正直「?」だった。部落差別や皆殺しという習慣があったことを考えると、偏っている。
    それでも、外国から来た文化人が日本の文化を褒めそやしていたことを紹介している点は、やっぱり誇りに思える部分もあり、良かった。

    出版後8年経っているが、オバマケアと政府機能の閉鎖に苦しむアメリカを見ると、内容は色あせていないと感じた。

  • 論理ではなく、情緒と形こそ大切。

  • 日本人教本です。日本人ならば読んで知っておかないと恥ずかしい内容が書かれています。

  • 2006年度ベストセラー作品のこの本は、日本人全員に読んでもらいたい内容でいっぱいだ。タイトル通り、日本人の品格を大切に思う著者の気持ちが伝わる。日本の文化、情緒は外国では生まれない。日本にしかない伝統や武士道精神をなくさないよう著者は読者に投げかけている。あらためて、日本の良さを知る意味で、繰り返し読みたい一冊でした。数学者である著者が、論理だけでは説明できないことがあると語られていたことが素晴らしいと思った。説得力がある。「駄目だから駄目、以上終りです」と納得しました。外国の良い場所、何が起きているかはニュースやTV番組で知ることが出来る。外国人の人情はあまり知らなかったが、そのこともわかり、世界を少し知った。

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著者プロフィール

お茶の水女子大学名誉教授

「2020年 『本屋を守れ 読書とは国力』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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