- Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
- / ISBN・EAN: 9784106102387
作品紹介・あらすじ
太陽系の果てに位置する九つ目の惑星、冥王星が、二〇〇六年の夏、惑星から外された。だが、一体なぜ降格されたのか…。今では準惑星として数えられる冥王星は、実は周辺に位置する多くの太陽系外縁天体の一つにすぎなかったのである。電子撮像技術による観測の飛躍的な進歩、あるいは種々の惑星探査機の活躍により、次々と明らかになっていく太陽系の天体たち。カラー写真23点と共に、壮大なる惑星たちの神秘的な相貌を最先端の天文学で解き明かす-。
感想・レビュー・書評
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部屋の掃除をしていたら発掘されたので読みました。10年以上前の本なので最新の情報は無いものの、渡部先生の語り口もあって判りやすいです。
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太陽系の惑星について知りたいならまさに最適な一冊!宇宙十職にご興味ある方、ご一読いただくと気になる惑星を選びやすくなるはずです!笑
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国立天文台天文情報センター長(当時)による、太陽系を概観した著書。
現在宇宙について書かれた本は多いが、その大半は、宇宙の生い立ちや構造などの宇宙の全体に関わるものや、ハッブル望遠鏡によって明らかにされた宇宙の果ての姿に関わるものなどで、宇宙のスケールから言えばほんの芥子粒のような太陽系を扱ったものはあまり見かけない。
そうした中、著者は、2006年に、国際天文学連合「惑星定義委員会」のメンバーとして、冥王星を惑星から除外する決定に関わり、それにより本書の執筆を思い立ったという。
ガリレオ、コペルニクスの時代は、太陽に近い4つの惑星(水星、金星、地球、火星)と、その外側の2つの巨大ガス惑星(木星、土星)が太陽系と考えられていたが、18世紀後半に天体望遠鏡の発明により天王星が、19世紀半ばに星図の整備や天体力学の発展により海王星が発見され、1930年には写真技術の革新が冥王星の発見をもたらした。
そして、20世紀末の、写真に代る電子的な撮像技術であるCCD素子の発明は、冥王星と同じ領域に1,000~数十万個といわれる天体群(太陽系外縁天体)があることを明らかにし、それにより、冥王星は惑星から新たに定義された準惑星というカテゴリーに位置付けられることになったのだという。
大家族の中心にある“ストーブ”「太陽」、ストーブの周りを駆け回る「水星」、美しき女神の名を持つ“妹”「金星」、青色はぐれ星「地球」、身近にありながら謎の多い衛星「月」、不気味に赤く光る軍神「火星」、太陽系の空白地帯に位置する「小惑星と彗星」、太陽系惑星の王者「木星」、壮大な環を擁する妖しいまでの美しさを持つ「土星」、へそ曲がりの惑星「天王星」、内部からの発熱で予想以上に暖かい「海王星」、太陽系の果て「冥王星と太陽系外縁天体」のほか、『2010年宇宙の旅』で生命が存在する設定となっている、木星の衛星「エウロパ」、生命の存在する可能性が指摘される、土星の衛星「タイタン」などについて、最先端の天文学が解き明かした相貌が紹介されている。
(2011年1月了) -
本棚をぼんやりと眺めていて再び手に取ってみました。
「イトカワ」の話等既にその世界では当然のことだったのか、冥王星ニュースに飛びついただけのミーハーな当時も今も当方の浅さだけが際立っております。
その程度の当方の低さを差し置いて、この本を読んでいて感じたのは小保方問題。
彼女の最大の問題は、自らが正しいと思う「事実」を科学的方法で提示しなかった点かと。
結果として提唱理論が誤りだったということなどは科学の進歩の中ではよくある話で何も恥じることはない、とにかく何で論理だった(あるいはそのような体裁を整えた)説明をしないのかな?
組織による隠ぺい云々などこの問題には色々な圧力があるとは思うが、科学的議論に必要な素材提供を行わない態度、この一点で彼女を擁護することは到底無理かと。
根拠データの提示も無く「200回見ました」という主張はそこいらのUFO目撃談と変わらんですし。
とまぁ本著とは全く関係のない感想に終始しましたが、見方を変えるってことについては、ちゃんとした議論と納得感が必要ってことは何も科学の話だけではなく、世の常だというただそれだけだが、極めて重要だということかと。 -
読みやすいのに非常に中身が濃くて,なんで今まで読んでなかったのかとかなり後悔。天文少年だったころ,胸をときめかせた思い出なども魅力的だし,無味乾燥なデータの羅列などは一切ないし,非常に読ませる本になっている。
本書は,冥王星が惑星から外された翌年の2007年に書かれている。執筆の目的の一つは,過熱報道の残した誤解を払拭すること,ということなのだけど,太陽系の天体をどれもバランスよく扱っている。もちろん,冥王星の「降格」についても,関係者の一人として丁寧に解説。渡部先生が,IAU惑星定義委員会の委員をやってたのは初めて知りました。
もともと惑星の定義はなかったこと,冥王星がその発見以降,詳しく観察されるたびにどんどん「小さくなっていった」こと,さらに観測が進み,冥王星の周辺にたくさんの外縁天体が見つかって,冥王星より大きい小惑星も見つかってきたこと。これらが冥王星が惑星でなくなった背景にあって,IAUの抜き打ち的な惑星定義プロジェクトの進め方も功を奏して,妥当な結論が得られたということ。学問の中身にも,歴史的経緯や手続の巧拙が影響するんだなあというのがよくわかる。
とにかくおすすめの本。第一章は,技術革新で太陽系はどんどん広がってきた,と言うとても魅力的な話。望遠鏡で天王星が発見され,星図と天体力学で海王星,写真技術で冥王星,CCDでエッジワース・カイパーベルト天体…。
以下,各天体について本書で得た知識を少し御紹介。
・水星では,一日がちょうど二年。自転周期:公転周期がちょうど2:3で,自転と公転の向きが同じだからこうなっている。2:3ていう綺麗な整数比になるのは,一種の共鳴現象で,水星でも月の公転みたいに自転周期と公転周期が等しくなってもおかしくなかった。その場合は,昼の地点は常に昼,夜の地点は常に夜ということになるので,水星では「一日」という概念が存在しなくなっていた。
水星の一日は,地球の176日と長い。太陽に近いし,一度昼が来ると長いことじりじり焼かれる。水星の一年(=公転周期)はこの半分の88地球日。もっとも,水星の自転軸は傾いてないので,季節はない。水星の自転周期は1/3日で56地球日。
・金星の一日は,116.8地球日。地球と金星が近づく周期(会合周期)はちょうど5金星日。このため,金星は地球と会合するとき常に同じ面を地球に向ける。これも太陽系における共鳴現象のひとつ。金星の自転は普通とは逆向きなので,金星では太陽は西から昇って東に沈む。もし自転の向きが正常で,なおかつ公転より遅ければ,太陽と星は空を正反対に進んでいくはずだけど,太陽系にそんな惑星はない。
・地球に衝突する可能性がよく取り沙汰される小惑星。その将来の軌道を高精度で求めるのは難しい。主な擾乱はヤーコフスキー効果で,太陽の熱で暖められた小惑星が放射する赤外線の反作用。ごくごく小さい力だが,はやぶさのイオンエンジンのように長期間では軌道を大きく変更しうる。
・木星は,極と赤道の温度差がほとんどない。惑星としては珍しく,内部からかなりのエネルギーを放射しているからで,おそらく重力エネルギーを解放していると考えられている。つまり,木星は今でもゆっくり縮んでる。
・土星の環が消えるのは,環のある平面(土星の赤道面)にちょうど地球が来て,細すぎて見えなくなるときと,太陽がその面に来て環に日があたらなくなるときの二種類がある。土星の公転周期の半分である15年おきに起こる現象。前回は2009年だった。
・天王星の環は1977年の掩蔽で偶然見つかった。これを機に,土星以外の大型惑星に次々と環が見つかる。
・海王星から見た太陽の大きさは,地球から見た最大の金星よりほんの少し大きい程度。その明るさは地球から見る満月の百倍以上だが,この太陽エネルギーから計算される海王星表面の放射平衡温度は40K程度。実際の海王星は表面温度は50Kくらいで,より太陽に近い天王星と同じ程度(放射平衡温度は太陽からの距離だけじゃなくてアルベドにもよるけど)。重力あるいは放射性物質による内部発熱がある模様。 -
最新の知識で書かれた、安心して読める、太陽系入門でした。
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[ 内容 ]
太陽系の果てに位置する九つ目の惑星、冥王星が、二〇〇六年の夏、惑星から外された。
だが、一体なぜ降格されたのか…。
今では準惑星として数えられる冥王星は、実は周辺に位置する多くの太陽系外縁天体の一つにすぎなかったのである。
電子撮像技術による観測の飛躍的な進歩、あるいは種々の惑星探査機の活躍により、次々と明らかになっていく太陽系の天体たち。
カラー写真23点と共に、壮大なる惑星たちの神秘的な相貌を最先端の天文学で解き明かす―。
[ 目次 ]
大家族の中心にある“ストーブ”―太陽
ストーブの周りを駆け回る走者―水星
美しき女神の名を持つ“妹”金星
青色はぐれ星―地球
身近にありながら謎の多い衛星―月
不気味に赤く光る軍神―火星
太陽系の空白地帯に位置するもの―小惑星と彗星
太陽系惑星の王者―木星
壮大な環を擁する妖しいまでの美しさ―土星
へそ曲がりの惑星―天王星
内部からの発熱で予想外に暖かい―海王星
太陽系の果て―冥王星と太陽系外縁天体
惑星の定義―なぜ冥王星は準惑星になったのか
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
1231夜
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冥王星を惑星から除外する論議を紹介しながら、各惑星について簡単に説明している。太陽系外縁天体については、エリスという天体など勉強になったけど、惑星についての説明は目新しいものが無かった。