ん: 日本語最後の謎に挑む (新潮新書 349)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106103490

感想・レビュー・書評

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  • 『日本語の奇跡―「アイウエオ」と「いろは」の発明』の続編のような書だが『ん』の発音や表記、意味について言及した書。

    空海について多くの頁が割かれており、また、その内容も面白かった。
    膨大な文献から、歴史的にも「ん」の有り様を解説されているが、なんとも難しかった・・・。

    しかし、歴史の中でも「ん」について、多くの方が論じているのは興味深かった。
    それらの考察をこの書にまとめてあるので、非常に内容の濃い本となっている。

    現代では、あまりにも無意識に使われている「ん」が、こんなにも深く語られていることに驚きだった。

    ----------------
    【目次】
    第1章 「ん」の不思議
    第2章 「ん」の起源
    第3章 「ん」と空海
    第4章 天台宗と「ん」
    第5章 サンスクリット語から庶民の言語へ
    第6章 声に出して来た「ん」
    第7章 「ん」の謎に挑む
    第8章 「ん」の文字はどこから現れたか
    第9章 明治以降の「ん」研究
    第10章 「ん」が支える日本の文化
    ----------------

  • 発売以来気になつてゐた一冊であります。やうやく読む。
    「ん」といふのは、長い日本語の歴史から見ると、新しい文字ださうです。
    たとへば『古事記』には、文字どころか「ん」と発音する部分は皆無だとか。

    しかし現実には「ん」の音がない筈がありません。それを表記する必要から、西暦800年くらゐから「ん」「ン」が登場したのだと著者は語ります。
    「ん」の起源をたどると、空海とサンスクリット語まで遡るとは思ひませんでした。最澄・安然・明覚...多くの先達が「ん」のために力を注いだのあります。感謝。第三章-第五章のあたりや第七章の論争の話などはコーフンしますね。予想以上に力瘤の入つた書物であります。

    「ん」の音は下品として好ましく思はない人がゐるのは、どうやら今に始まつたことではないらしい。文字の登場が遅れたのも関係がありさうです。著者の仏人である奥様は、著者が「んー」といふと抗議するらしい。耳障りなのでせう。代りに「ムムム」と発すれば問題ないとか。
    ここで唐突に思ひ出すのが、故ちばあきおさんの漫画であります。彼の漫画における会話文には、極力「ん」を廃してゐるやうに思はれます。
    相槌で「うん」とでも言ひさうなところは「うむ」とか「む」だし、「○○なんだ」は「○○なのさ」となります。バントのサインをイガラシくんに確認にいくと、「む。ちと危険だがな」と中学生らしからぬ返答。
    ちばさんも、「ん」の音を嫌つてゐたのでせうか...

    http://genjigawakusin.blog10.fc2.com/blog-entry-245.html

  • 全体的にとても興味深くおもしろかったです。ついつい自分で例を口にしては「ほう」と言ってしまいます。ただし個人的には途中の空海とのかかわりあたりが若干退屈というか先が見えないというか…果たしてこの章はここまで詳しく長きにわたって解説されるべきものなのだろうかと思ってしまった。若干冗長に感じて読了までに一旦時間をおいてしまいました。

  • 『天才と呼ばれる空海とて、時代という制約があった。』

    「n」なのか「m」なのか。なぜ「ん」から始まる言葉がないのか。名実ともに日本語における最後を飾る「ん」の謎に迫る。「ん」の成り立ちがここまで仰々しいものだとは知らなんだ。読み物というよりも、学術書レベルで綴られている。漢文にアレルギーのある人には、ちょっときついかも。

  • 「あいうえお」の50音表は、どこから来たのかわかったのはよかった。はっきりしてるわけじゃないんだろうけど。

  •  「日本語には上代,「ん(ン)という文字はなかった」どうしても表現せざるを得ないときは,「イ」,「ニ」と書いたそうだ。それが「ん」の字のそもそもの始まりだと云う。

     従って「古事記」「日本書紀」「万葉集」には「ん」の表記はない。それが804年に空海がサンスクリット語を中国で学び「ん」の表記を持ち帰った。「吽」がそれにあたるとのこと。

     漢和字典によれば阿吽のことでは、「阿」は開口音であり「吽」は合唇収息音で「阿」は悉曇の字毋の初韻で「吽」は終韻、一切の教義はこの「吽」に収まるとのこと。

     ただ935年に書かれた「土佐日記」には、まだひらがなの「ん」は生まれていない。カタカナの「ン」も1058年以前には遡れない。
    しかしやがて「ん」はその後、庶民に広がって行く仏教思想の大きなうねりの中で定着していった。
    その代表的な著作が「今昔物語」「古今著聞集」「平家物語」などなど。

     五十音図の「ん」を調べることで,日本語の小史を辿り直す,興味つきない一冊。前著に「日本語の奇跡/<アイウエオ>と<いろは>の発明」がある。

    〈山口謠司〉1963年長崎県生まれ。大東文化大学文学部卒業。フランス国立高等研究院人文科学研究所大学院に学ぶ。ケンブリッジ大学研究員を経て、大東文化大学文学部准教授。

  • そうだったのか!と思うところがいろいろあって、とても面白かった。(主の中古の)古文で「ん」は表記されないということに、前々からどういう事なのだろうと疑問を感じていたのだけれど、突き詰めて調べたこともなかった。「ん」という表記が実はいろいろな発音をひっくるめたものだということ、濁音や撥音は「下品なもの」だという言語感覚があったこと等々、なるほど!という知識の連続であった。ただ、まん中あたりで力を入れて論じられる密教との関わりは、正直論旨についていけなかった。「ん」と仏教思想がどう密接につながっているのか、にわかには理解しにくいのだが、これは私の知識が浅いためだろう。

  • 言葉の成立は国の文化史、歴史と深く関わっていることがよくわかった。奈良平安時代の先端文化であった仏教の影響は今では想像もつかないほどだったのだろう。mとn区別、空海のサンスクリット語経典導入、本居宣長の国粋主義日本語純粋論による濁音撥音の否定、リエゾンによる「ん」の発生、和歌の中の濁音撥音回避、漢文内の「ん」による調子、阿から始まり吽で終わる宇宙論、

  • 阿と吽に感動!
    「ん」の話と宗教の話、どっちも中途半端感が否めない。

  • 「ん」は
    なんば、さんが、たんき
    それぞれで発声が異なると言うことを別所で聞いたことから、興味をもっていました。
    昔の日本には「ん」がなかった、など興味深い内容が載っています。

著者プロフィール

1963年、長崎県佐世保市生まれ。大東文化大学文学部中国文学科教授。中国山東大学客員教授。博士(中国学)。大東文化大学文学部卒業後、同大学院、フランス国立高等研究院人文科学研究所大学院に学ぶ。ケンブリッジ大学東洋学部共同研究員などを経て、現職。専門は、文献学、書誌学、日本語史など。著書に『心とカラダを整える おとなのための1分音読』(自由国民社)『文豪の凄い語彙力』(さくら舎)ほか多数。

「2020年 『語感力事典 日常会話からネーミングまで』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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