死刑絶対肯定論: 無期懲役囚の主張 (新潮新書 373)

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  • Amazon.co.jp ・本 (204ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106103735

感想・レビュー・書評

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  • 犯罪者は寒く暗く侘しい刑務所の中で、自らの犯した罪を省みて悔い改め改悛し、真人間になって社会復帰する……なんてことがもしかしたら幻想⁈妄想⁈にしか過ぎないのかもしれない。

    衣食住に困ることなく、当たり前だけれど逮捕されることに怯えることもなく、テレビや読書といった娯楽にもあまり不自由しない、という、犯罪者として「シャバ」で怯えながら暮らすよりもはるかに安定した日々を過ごしている。

    著書によればそんな環境の中で心から反省する者は1〜2%に過ぎないという。

    それは極論だ、という人もいるだろう。でも、哲学者の言葉や理論を引きながら語るのもまた反対の極論に過ぎない。

    ただ共感しやすいかし辛いか、の体感の問題だ。

    この本には、犯罪者つまりは刑罰を受ける側の人間にしか知り得ない感じ得ない「実感」がある。

    学問にはない生々しさとある種の真実に触れ、死刑と刑罰について新たな視点を得ることができた。

  • うーん、考えさせられるなぁー。
    死刑について、しばらく考えそうだな。

  • 2件の殺人事件で無期懲役となり服役中である著者が、悪質・長期受刑者の収容される刑務所で過ごしながら記した死刑肯定論。
    「ほとんどの殺人犯は反省しない」「悪党の楽園化している刑務所」「終身刑の欠陥」という話には、さすが現役の無期懲役囚だと思わず感心した。
    被疑者・受刑者の人権ばかりがクローズアップされ、被害者・被害者家族の人権がとかく疎かになりがちな日本の司法制度にあって、死刑反対論に対する痛烈な批判(と皮肉)であると思う。自称人権派の人たちには是非一読をお勧めしたい。
    久々に読む価値のある新書本であったと評価したい。

  • 無期懲役と宣告された方が執筆なさった本。
    他の本で囚人は十分な情操教育を受けていないことを知っていたが、ここまで酷いとは思わなかった。
    気がかりな点として、「9割」「1%」といった数値が一体どこから、どうやって算出されたのかよく分からない下りがいくつか見られたことでしょうか。

  •  殺人を犯し,無期懲役で服役中の著者による死刑肯定論。長期刑務所の服役者たちがいかに自分の犯した罪と向き合わず,深く考えることもせず日々を過ごしているか。そのことを踏まえ,死刑はもっと活用されるべきという自説を開陳する。著者自身はすごく頭が良い。一生仮出獄するつもりはないそうだ。

  • 犯罪を犯した者の心理や、刑務所での服役囚の実態などは非常に興味深く、一読に値する本だと思います。筆者の博覧強記で哲学的な筆さばきには「こいつは何者なんだ!?」と驚くばかりです。

    殆どの服役囚は改悛も反省もしない。死刑でしか償えない罪があるという筆者の主張は確かに一定の説得力があります。ただ死刑存置論の一番の急所である「冤罪問題」に対する彼の言及は非常に弱いと感じました。

  • 服役中の無期懲役囚であるという著者が、長期受刑者の現状から刑罰のあり方について考察している。

    著者の主張は、長期服役囚はほぼ反省・更生とは無縁の日々を過ごしており、現状の刑は十分とはいえないという問題提起に始まる。社会復帰をさせるのであれば十分な教育制度と環境を整える必要がある一方で、長期服役囚の多くはそのパーソナリティにそもそもの問題がある点を指摘する。さらに罪刑均衡の原則に照らせば、殺人を犯した者が殺されることなく生き永らえていること自体がバランスを欠いており、被害者の命・生存権を軽視し、被害者家族等の関係者の心情を無視したものであると断じている。

    私は、この主張に大いに納得できる。よほどの事情がない限り、殺人犯はその命をもって罪を償う他ないと考えている。でなければ世の秩序は保たれないのではないか。また、著者もたびたび触れているが、自己の欲求のために人の命を奪うような人間を永久に隔離する、特別予防としての死刑の必要性はあると思っている。ただ、執行猶予つき死刑という案については、自己愛が強い殺人者にとっては逃げ道を用意するだけのような気がする。

    さて、本書を読み進めるうちに気になったのは、「著者は本当に服役中の人物なのだろうか?」ということである。というのも、あまりに塀の中の描写が客観的なのだ。完全に自分だけが別次元にあって、他の受刑者を傍観しながら考察しているように感じて仕方がない。外の世界とは相当に断絶された社会にあって、さらにここまで身を離して考えることができるものなのだろうか? 私としては、著者は刑務官などの職員なのではないかと疑っているくらいである。さすがに罪になるのでこの線はないと思うが・・・。

    また、出版社がつけたのであろう本書の刺激的なタイトルは、やや強すぎるきらいがある。著者は死刑賛成論をぶちまけたいという意図を中心にして本書を著したのではなく、罪と刑罰のバランスが悪いことと、受刑者を社会復帰させるためのシステムの不備を説いているのだ。その一環として死刑について論じているのである。このタイトルとのミスマッチはいただけない。商業主義的になりすぎるのは考え物だと思う。

  • 実際の無期懲役囚による著書。
    筆者は二人を殺し、現在服役中である。
    犯罪者の心理を鮮やかに描き出す。この本はすごい。

  • 学校では、犯罪者も一人の人間であり、「公共の福祉」の限定の下ではあっても、人権が最大限保障されなければならないと教えられます。
    学習の中で陥りやすい人権偏重的な思考を正してくれる一冊でした

  • [ 内容 ]
    哀しい事実だが、犯罪者のほとんどは反省しない。
    監獄法の改正後、「自由」になった刑務所では、今日も受刑者たちの笑い声が響いている。
    裁判では頭を垂れるも内輪では「次は捕まらないよ」とうそぶく彼らを前に、何をすれば良いのか。
    犯罪者を熟知する著者は、彼ら自身を「死」と向き合わせるために「執行猶予付き死刑」を導入せよ、と説く。
    現役の無期懲役囚が塀の内側から放つ、圧倒的にリアルな量刑論。

    [ 目次 ]
    第1章 ほとんどの殺人犯は反省しない
    第2章 「悪党の楽園」と化した刑務所
    第3章 殺人罪の「厳罰化」は正しい
    第4章 不定期刑および執行猶予付き死刑を導入せよ
    第5章 無期懲役囚の真実
    第6章 終身刑の致命的欠陥
    第7章 死刑は「人間的な刑罰」である
    第8章 無期徴役囚から裁判員への実践的アドバイス

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著者プロフィール

美達大和
1959年生まれ。無期懲役囚。現在、刑期10年以上かつ犯罪傾向の進んだ者のみが収容される「LB級刑務所」で仮釈放を放棄して服役中。罪状は2件の殺人。ノンフィクションの著書に『刑務所で死ぬということ』(小社刊)のほか、『人を殺すとはどういうことか』(新潮文庫)、『死刑絶対肯定論』(新潮新書)、『ドキュメント長期刑務所』(河出書房新社)、『私はなぜ刑務所を出ないのか』(扶桑社)、小説に『夢の国』(朝日新聞出版)、『塀の中の運動会』(バジリコ)がある。また「無期懲役囚、美達大和のブックレビュー」をブログにて連載中。http://blog.livedoor.jp/mitatsuyamato/

「2022年 『獄中の思索者 殺人犯が罪に向き合うとき』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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