- Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
- / ISBN・EAN: 9784106104503
感想・レビュー・書評
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戦後から現在に至るまで日本社会で支配的だった「功利主義」と「リベラリズム」に向けられた懐疑。輸入された概念をそのまま模倣するだけではなく、現代日本人はいかに生きるべきか「自前の議論」をしようではないか、と著者は呼びかける。
戦後の近代化の流れの中で日本人が失ったものは多い。
ふるさと、家族、死を基準として生を見る死生観、習俗、自然への畏敬、無私という意味においての「他力本願」……etc.
いずれも「近代化」や「戦後進歩主義」がもたらしたものだと著者は言う。現代人はこれらを捨て去ることによって「よりよい生活」を手に入れてきたわけだが、災害や「孤独死」に直面したとき、ほころびが生じ、矛盾は露呈する。
現代日本人は、これからも「成長」を目指すのか、「脱成長」へ転換するのか、価値観の選択を迫られている。
ニーチェが説いた「ルサンチマン」と民主主義の腐敗の関係を説いた最後の章が興味深い。
著者は「ルサンチマン」が社会を動かす原動力の一つであることを認めつつも、民主主義社会において「悪しきルサンチマン」は政治を常に客体化し、権利だけを追求する無責任な国民を生むと説く。曰く、民主主義の中には屈折した精神が潜んでいる。我々はひとまずそのことを自覚しなければならない、と。
事実、「悪しきルサンチマン」をもった国民は民主党政権を生み、民主党は「反・権力の権力者」という矛盾した存在がたどるべき当然の結果として、おのずと腐っていった。
(個人的にはジョージ・オーウェルの『動物農場』を思い出した。)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
読みやすかったです。幸福について普段考えるのとは違う面から見れて面白かった。
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佐伯啓思の新書というと,個人的には「20世紀とは何だったのか」あたりは,大名著と言っていいレベルの著作だったので,本書にも期待したのだが,少々肩すかしをくらった.
そもそも「人は幸福でなければならない」という観念自体が,近代西洋の啓蒙思想から出てきた発想であり,それを金科玉条的に追い求めることには,果たして意味はあるのだろうか?そこには徒にルサンチマンを刺激する何やらよからぬ機構が働いていないだろうか?
本書の骨子を説明すると,以上のようになるだろう.確かに,それは尤もである.尤もであるのだが,本書には,なんとなく他人の意見をそのまま借りてきたようなところがあり,論に深みが無い.仏教についての記述が散見されるが,それだって,著者の専門分野ではないだろう.つまるところ,浅いのである.
簡単に読めるのはいいが,佐伯啓思らしさという意味では,今一つであった. -
今の日本では所謂マイノリティに分類される人が、なんとなく思ってはいるが論理的に説明できないもどかしさ、というものをある程度わかりやすく解説している良書だと思う。さすがに知識量が豊富すぎてわかりにくい所もあるが、他の著作も読んでみたくなった。
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幸福の再定義に関する様々な切り口がまとまっている。
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大学の学部の先生の本。幸福になるべし、というのも、本当にそうなの?という本。1つの考え方を提示するものとして読んでいて面白かった。
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[塩見図書館長より]
著者の佐伯さんは京都大学大学院人間・環境研究科教授です。「豊かな社会」になった日本の人々は、今本当に幸福なのか、と本書は問いかけます。無縁社会で何が悪いのか。ニートも悪くない。「ポジティブ」がそんなに善いのか。格差是正なんて欺瞞だ。このような気持ちが皆さんのどこかにあるのではないでしょうか。
実社会を生き抜くことは、ある面でとても厳しく、苦しいものです。しかし、別の時代もまた別に難事・雑事がありました。やはり、それぞれの個人が自分の「こころのスタンス」をどう決めるかが問題となるのです。 -
最近読んだ中では、最低の駄本。考えても動かない人の考えは、考えてないより悪いのが、よくわかります。
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様々な幸福に関する哲学が紹介されているけど、結局何が言いたいのか不明。幸せって何?って考えていく事自体が重要なのかもね。
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★★★☆☆3
すっきりしない本だよ〜。
たくさんの引用知識で埋めつくされていて、結論が分かりにくいよ。連載を纏めた本だからこうなるのは仕方ないのかな…
ニーチェやサンデル教授もでできたけど、一番興味深かったのはトルストイの話かな。「真の生命」という概念が、アルケミストにおける「大いなる魂(だっけ?)」と似ている、繋がりがある!と思ったよ〜。
著者の主張はあまりグッと来なかったけど、引用のほうは為になる本。