反・幸福論 (新潮新書)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106104503

感想・レビュー・書評

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  • 本書、前半では、「無縁社会」現象を、戦後日本が目指した「近代化=個人の自由の拡大」の当然の帰結と指摘する等、現代社会の鬱積感というか喪失感の根本(ニヒリズム)を論じている。また、後半では、震災を機に、現代人がすっかり忘れてしまった「日本の霊性」(何か絶対的なものにすがるほかないという感覚)について指摘し(第七章)、民主党政権を「既得権益」や「守旧勢力」などの「権力を批判することによって自らが権力をもつ」屈折した権力欲の集団とバッサリ切り捨てている(第九章)。いずれも成る程と思える鋭い指摘だが、特に、民主政治の問題の本質が、責任を取らない国民のルサンティマンに政治が大きく振り回されることにあると指摘している点には説得力がある。なるほどその通りだと思う。

  • 本書は、『新潮45』で2010年12月~2011年08月に掲載された連載を加筆し書籍化したもの。著者は有名な保守派思想家の佐伯啓思。 

    【感想】 
     数年前に『自由とは何か』(講談社現代新書)を読んで以来著者の本を遡っていくつかフォローしていた。その経験から言うと、本書は比較的出来が悪い。

     章ごとのテーマは最下部にある目次の通り。
     一番の問題としては、価値観や文化を語るにもかかわらず文字数が全然足りていない点がある。十分な理屈を展開できずに、昨今の風潮を否定している部分と著者の主張とだけがほとんど一緒になっているようなカタチ。これでは説得性が低い。
     また、連載エッセイが元のせいか、派手な概念や引用句がポンポン出てくるのに、読んでいてもそれぞれを必要とした話には思ずに少しとまどった。
     全体の印象としては、「今の日本人が忘れてしまった価値について考えてみたい」(本書008頁)という意気込みが思いっきり空ぶっている感じ。著者は、単なる懐古趣味のエッセイストでは決してないのに……。
     エッセイとしては外れの部類だと思う。


    【目次】
    はじめに 003
    第1章 サンデル教授「白熱教室」の中の幸せ 013
    第2章 「国の義を守る」という幸福の条件 037
    第3章 「無縁社会」で何が悪い 061
    第4章 「遁世」という幸せ 085
    第5章 人間蛆虫の幸福論 111
    第6章 人が「天災」といわずに「天罰」というとき 139
    第7章 畏れとおののきと祈りと 167
    第8章 溶解する技術文明 195
    第9章 民主党、この「逆立ちした権力欲」 223
    あとがき 251

  • 現代では幸せはいまここにあらず・畏れの敗北・幸福と不幸は表裏一体・ 死こそ情態,生こそ無常・遁世の境地にこそ縁の再確認あり・己の幸福の追求は不幸の追求に等しい・蛆虫なりの覚悟の必要・西欧科学主義はキリスト教に支えられた信仰・技術の管理不可欠さこそ人間の無能の証明・権力批判は権力欲に等しい・無自覚な正当化ルサンチマンこそが畜群

  • 年度替りの忙しい時期に、次から次から問題が浮上。まあ、この1年、私は決して幸せではなかった、と思う。こと、職場においては。しかし、幸福と言い、幸せと言い、いったいそれは何を意味するのか。長生きするのが幸せなのか。お金持ちが幸せなのか。人それぞれ、感じ方、考え方は違うはず。少しでも長く生きるためにからだにチューブをつなぐ。お金を得るために、休む間もなくはたらく。または、お金がたっぷりあって、はたらく必要もない。だれの役にも立っていない。ひとはいつも幸福でなければならないのか。不幸な時代の方が、未来への希望が持てたのではないのか。本書は雑誌に連載されたものを1冊にまとめられています。死生観、哲学、宗教や政治の話まで、途中からは幸福の話だかなんだかわからなくなりますが、一つ一つ考えさせられることは多いです。連載中に東日本大震災がありました。被災者の皆様にも、いつの日かおだやかな、幸せな日がもどることを願っています。

  • 「幸せはこういうもんだ」と言われて「そうですよね」と返せるのならこんな簡単な話はない。それぞれにとっての幸せを考えるうえで、大事なヒントをくれる本だと思いました。

  • 時間おいてもう一度 3.5

  • 「幸福」そのものにかかる考察の部分は、その結論が現在の状態を下げて満足すべき、とする点で、その過程にかかわらず得心がいかないが、政治状況にかかる考察については、2014年の現在からしても、未来を的確に、そして深く鋭く言い当てており、さすがの一言。

  • 近代以降、人びとは共同体の呪縛からの「自由」を求め続けてきました。その結果、「無縁社会」と呼ばれるような問題が生じることになり、人びとは慌てふためくことになりました。また日本では、近隣諸国との関係が悪化し、戦後棚上げにされてきたナショナリティについての問いが喧しく論じられるようになってきています。著者は、こうした問題に対する付け焼刃の対応を批判し、私たちがどのような「価値」を選ぶのか、根本から考えなおさなければならないと論じています。

    とくに、近代人が個人の自由をめざしてきた結果、確固とした「死生観」を失ってしまい、自分の死について考えられなくなってしまっているという指摘は興味深く感じました。

    ただ、元は雑誌に連載された文章だということを知らずに読み始めたので、論じられている内容が散発的なことについていけず、もどかしい思いを感じてしまいました。

  • ごめんなさい。全く文章が頭に入ってきません・・・。
    面白そうなテーマを何でこんなつまらなく書けるのか不思議。
    読むの断念。

  • 尊敬する思想家の書籍。尊敬していたが正しい。もう身体が右翼的な考え方を吸収しなくなってきている気がする。保守派卒業。これからは中道右派ってことで。

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著者プロフィール

経済学者、京都大学大学院教授

「2011年 『大澤真幸THINKING「O」第9号』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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