- Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
- / ISBN・EAN: 9784106104503
感想・レビュー・書評
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五木寛之「下山の思想」の延長線上にある本。
現代日本人の幸福観を宗教、思想から解き明かす。
面白かったのが、「第五章 人間蛆虫の幸福論」。蛆虫と書いて、ウジ虫と読む。これが、あの福沢諭吉のことばだというのだからビックリ。
「宇宙という広大な視点から自らを見れば、人間などは無知無力で見る影もない蛆虫のごときもので、・・・だが、この世に生まれた以上は、蛆虫とはいえそれなりの覚悟が必要である」
あの一万円札のおじさんが自らを蛆虫と称し、蛆虫なりに生きていくことの必要性を説いている。そうか、万券ですら蛆虫なんだ。だったら、オイラは小蝿ぐらいか。何だか気分が楽になるね。小蝿なりに生きればいーじゃないか。
ポジティブシンキングや、他人と比較する幸福の不幸さなど、面白いところはいくつもあるのだが。特に秀逸なのが、先述の第五章。ここだけでも買う価値あり。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
新着図書コーナー展示は、2週間です。
通常の配架場所は、1階文庫本コーナー 請求記号:304//Sa14 -
いつわりの平和ボケをしている日本社会に対し、ギリシャ・西洋哲学、日本人の仏教観から深く掘り下げられた論理で、真の幸福とはなんぞやを問いかけた著作である。
プラトンとアリストテレスの言説の違い、ニーチェ、ハイデガーの言わんとしたこと。
法然の宗教革命の覚悟、鈴木大拙の考え方。
すべて、目から鱗でした。 -
人は幸福にならなければならないという脅迫観念に異議を唱える。功利主義・権利主義・公共主義から無縁社会を論じ、家族論、宗教論、技術論、政治論を説く。読んでいて、疑問を感じざるを得ないところが多い。この感じ方の差に世代間を感じざるを得ない。
世の人が「利益」「権利」による幸福を目指しているかというと、そうではないと思う。
「利益」「権利」に縛られない幸福というのが、最近流行の「絆(俺はこの言い方嫌いだけど)」であり、社会のつながりを認識することで幸福を感じる人も多いと思う。社会的起業、ボランティア、などなど。
「利益」「権利」にとらわれた前の世代の反動が今の世代なのではないか。世代間の価値観の違いについては島田裕巳「人はひとりで死ぬ」に詳しい。これが一番しっくりくる。