反・幸福論 (新潮新書)

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  • 新潮社
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感想 : 59
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106104503

感想・レビュー・書評

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  • 現代における自由や幸福の定義が、叫ばれていた当初から変わっている。

  • 実は震災後に石巻を訪れて以来、ずっとカントを読んでいるのですが、カントが判断力批判を書き「崇高」に辿り着いた背景にもヨーロッパの大地震があったのですね。震災後に何が生まれようとしているのか、その思潮、この本は9割、正しいと思います。残りの1割は政治的な立場によるでしょう。

  • 現代の本格派知識人、良心的知性の御一人としては残念な書という他ない。人間蛆虫は福澤の例の戯言であり、そんなものに嬉々として飛びつくのは如何か?と思う。仏教説をパッチワークのようにつなぎ合わせての思考も生半可のものでしかない。この著者、おそらく文学に何の関心もない、或いはなかったのかしら。

  • 「反・幸福論」佐伯啓思
    2010年代日本の幸福論。特になし。

    最近どこかの書評だか参考文献だかで出てて、気になっていたので読みました。
    個人的に、東日本大震災後、「豊かさとは何か」がマイテーマで、何らかの参考を得られないかと。
    日本の神々は死んだ。死生観こそ生きる価値観、受け身の処世(「他力本願」の愚者の願い、アリストテレスの云う自然への対峙、技術文明の構造)、などなど。

    論というより、どちらかというとエッセイでした。
    全体的に回答を与えるのではなく、違う価値観を説く、という感じ。

    書いてある内容は共感するんだけど、「で、結局何?」みたいな不完全燃焼が否めないので、☆2つ。(2)

    -----
    以下メモ

    幸せの青い鳥
    日本国憲法の幸福追求権?だっけ?
    近代経済主義は、幸せを「ここにはないもの」にしてしまった。
    どこまでも虚栄の幸せを追いかけていかねばならない、原理的に。
    絶対値としての利益の総量ではなくて、対前月対前年の成長する利益こそが幸福だから。
    そう考えると「企業は発展しなければならない」って命題は恐ろしいな。

    日本の神々を捨て、近代化・都市化に向かった必然が経済成長と幸せの喪失?うーん…
    〈ふるさと〉には不幸と幸福が共存し、貼り合わせになっている、ってのは、メモメモ。
    引用。“近代化、都市化とは、貼り合わせになった幸福と不幸を切り離し、不幸の方は捨てて、幸福だけを求めようとするものでした。”
    →吾唯足るを知る、ためには、足るに対する不足、を知らなければいけないのでは。

    嫁さんと結婚してよかったなー、幸せだなーと感じる。
    そこに端的な理由はなくて、漠然と出てくる、幸せ、この類のことこそ真の追うべき幸福か?
    なぜなら、幸せが追い求めるものでもなく、造り出すものでもなく、比較相対的なものでもないならば、自然と出てくる感情にこそ本当がある気がする。
    でもそれって結局不幸感への良い回答にはならなくて、不幸と感じるならそれこそ不幸、ってことになる。
    世知辛いやなー。。

    福沢諭吉「福翁百話」

    やはりしっくり馴染むのは、仏教の崇高さ、大局的なところ、絶対的な信仰などというよりも、もっと泥臭い《観》だな。「それでも」自然はそこにある。「それでも」日常は過ぎて行く。「それでも」衣食住足るを知る。悟りの境地そのものよりも、悟りを開こうともがく人間性にこそ、もっと俗物的に大切なことがある気がする。

    p127
    他人の幸福を目指すことこそ自分の幸福。
    無理無理。イイけど、宗教だよ。日本人には特に無理、そんな求道的な。

  • 日本人が忘れてしまった価値。人生観や死生観や自然観を見失ったために、自由を求めても、経済成長しても、幸せ感が得られない。

    アメリカのマインドコントロールが解けつつあるのかな、なんて思いました。

  • ちょっと佐伯氏にしては異色の書。かなり面白かった。

  • 日本はイエ、ムラなどの縁をなくす方向に進んで来たのだから、無縁死に行きつくのは当然という主張は切れ味のよさを感じた。

  • 日本の思想の碩学による東洋西洋の哲学、宗教、歴史認識を踏まえた、なぜ日本人は幸福感を感じられないのか、それは幸福になる「べき」との価値が共有されてしまったことにあると解き明かす、知的刺激溢れる良書。

  • 「利益」「権利」の最大化が幸福をである、と考えるとたぶん人は幸せにはなれない、
    そのことを「論理」的に語っている本とも言えます。

    あと、ポジティブシンキングをボロクソいってます(笑)
    イラク戦争はブッシュ元大統領のポジティブシンキングが原因だとも。

    あと、喜怒哀楽では「哀」を大切にすべき、というのも共感しました。
    「不倫は文化だ」ではないですが、
    「哀」がなければ文化は生まれないと僕は思っているので。

    連載をまとめたもので、9章にわかれていて、それぞれの章が別な切り口で
    深く考えさせられるので、簡単には書評はかけません。

    ただ言えることは、この本を読んでなお、僕は人が目指すべきものは「幸せな生」だと思います。

    そもそも「幸せ」ってなんだ?ということを考えさせられる本です。
    考えさせられる本であって、答えは書いてありません。

  • 人間は生きている限りルサンティマンの感情を持たずにはいられない。一方で生・死という二極の「死」(すべて無に帰していく)という極に視点を置いて物事を見れば、ルサンティマンに身をやつす事は実に馬鹿げたこと。では、馬鹿げた事だから、と達観できるかというと、俗世を捨てて仏に帰依すること以外達観は得られない。人は大いなる矛盾の中で生きている。
    著者曰く、P.193「霊性」すなわち何か絶対的なものにすがるほかないという感覚は、そうしないとこの世の‘生’をやりすごすことができないという絶望感から始まる。そして、霊性の目覚めは生そのものの罪の自覚(自分の心の中には常に煩悩があるという自覚)によって覚醒するほかないのです。
    勿論、人を羨む気持ちを持たなければ心は平安で幸せな状態であろう。しかしそれは不可能ということになれば信仰心を持つということなのではあるがそれもなかなか難しい。
    信仰心とは言えないかもしれないが、「感謝の気持ち」というのは持てそうだし、信仰心にやや近いような気がする。最悪の時でも物事を俯瞰し感謝の気持ちを持つこと。自分の中の煩悩を否定するのではなく(否定しても存在し、消せないものだという自覚を持って)現状を日々刻々感謝することか・・・・
    最悪すぎて感謝する点が見つからないときは、時間をかける。必ず良い心の状態が来ることを信じて待つ?
    ほかにどんな方法があるだろうか?

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著者プロフィール

経済学者、京都大学大学院教授

「2011年 『大澤真幸THINKING「O」第9号』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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