- Amazon.co.jp ・本 (476ページ)
- / ISBN・EAN: 9784120042409
感想・レビュー・書評
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莫言氏の新作
一人っ子政策に切り込んだ小説、
一人っ子政策についてはいろいろ取り上げられているが、男児尊重の中国の農村でどのように進められえいたのか、現場を見ているような臨場感がある小説、
タブーを打ち破る中国作家に期待したい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
中国学を専攻としながら、莫言は初めて読みました。中国ではタブーとされる一人っ子政策に正面から向き合った作品ということですが、どこまでその悲哀や切実さが日本の読者に伝わったのか、やや疑問です。中国のことを勉強している、あるいは関心がある人にとっては自明でも、そうでないごくごく普通の日本の特赦には理解しづらい部分もあったのではないかな、という気がします。だからといって、その説明に筆を費やしていてはストーリーが前に進みませんし、ルポルタージュになってしまいます。とはいえ、もう少し描き混まないと、特に前半は悲哀とか農村の現実などが今一つ伝わってこないような気がします。むしろ後半の方が、一人っ子政策を抜きにしても、母として、女としての苦衷などが描かれていたのではないかと感じます。
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つくづく、莫言はすごいし、小説というのは大したものだと思う。
一人っ子政策。こういうことはこういうふうにしか書けないのではないだろうか。政治や経済、もしくは道徳正義倫理、宗教、素朴な因果応報論、どれでもどうしようもない。
しかし、はじめて莫言の小説を読んで泣いた。前妻の王仁美が亡くなるシーンと、彼女のことを思い出しながらちびライオンとの婚姻届を出しに行くシーンは、泣いてしまった。
莫言ほど筆の立つ人が泣かせるシーンを書こうと思えば今までいくらでも書けただろうに、あえて避けてきた。泣けない作家だった。しかし今回、それにやられて、それがうまいこと話の前半と後半をつないでいる。
やっぱりこの人はうまい。