イオカステの揺籃 (単行本)

著者 :
  • 中央公論新社
3.52
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本棚登録 : 397
感想 : 59
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120055683

感想・レビュー・書評

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  • 大苦戦。読了まで4日もかかってしまった……。
    いわゆる“毒親”をテーマにした作品だが、そのターゲットは母親だ。父親も取り上げられてはいるが、母親の所業に比べればかわいいものだ。しかしまあ、そもそもの原因は父親にあると言えなくはない。断ち切れない負の連鎖が続き、登場人物の誰ひとりとして幸福ではない。後半でようやく事態は好転するかのように見えたが、それは瞬時に潰える。あとに残されるのはやり場のない怒りと虚しさだけ。
    なにがうれしくてこんな本を読むのかと思ってしまうが、それが“遠田劇場”だ。理不尽極まりない世界に浸ってほしい。

  • 母の愛の呪いの深さに読み終わった時には全身傷だらけだった。自分の身体から流れる血は母親から受け継ぎ、そして娘に受け継がせるひとつの呪いそのもの。

    母親の、娘に対する潜在的嫌悪と息子に対する情動的愛情。
    ここに描かれる母親の、歪み、病み、苦しみ、そして狂喜。誰もが追い詰められている。
    そんな母親の呪いから逃れることはできないのか。

    背を向け家を出、縁を切ったとしても、それでも浮かんでくる母親のつながり。
    捨てることはできないのか。憎しみ、恨み、切り捨てたと思っていても求め続けてしまうのか、その愛を。
    生暖かく美しい母の愛に溺れていたい、苦しみの中にある喜びというゆがんだ快感。

    夫や息子と、娘とではとらわれの形と深さが違う。じわじわとすれ違っていく男と女の感覚の違い。言葉では言い表せないその決定的な溝。
    月に一度身体から流れ続ける血への嫌悪感、そしてその身体の中で他者を育み生み出す痛みと苦しみ。二つになった身体の、再び一つになりたいという潜在的願望。それはどうしたって男には理解できないものではあるが。

    読み終わった後、恐怖に震えながら、我が身を思う。
    私はイオカステにならずに終われるのか、この人生を。恐ろしくて叫びだしそうになる。

    イオカステの罪はどこにあるのか。

  • ちょっとどころではない程外れてる
    そう言う育てられ方をしたから・・・
    そう言う親だったから・・・
    それにしても、どうなん
    みんな」ちょっとづつズレてる
    そんなもんなん??

  • 読み終わった。
    読後感、イマイチ良くない。
    毒親に育てられて、呪いの予言に翻弄されて、狂っていく女と、女に甘い男たちに話。

  • 毒親による虐待がもたらした世代を超えた悲劇ともいうべき小説。毒親の闇を抉りだしている。

  • 毒親の連鎖が生んだ悲惨な物語。自分の子供を愛せない親、異常なまでに子供に執着する親、この現実離れした出来事が実際に毎日のようにニュースで語られているのが悲しすぎる。

  • 怖かったのは、死してもなお息子には理想の母親として残るよう楔を打ち込む母親の執念
    その一方で娘に対しては本当の自分を知って欲しいと願うものかな〜
    恭子に対する母親の虐待は酷かった
    でも何とな〜く虐待がなかったとしても、恭子の息子に対する執着は存在した気がする

  • 44当事者と女性にしか理解できない微妙な感性がうごめく物語。男性の登場人物は勘違いで独善的で良い人で。女性の業のようなものを感じさせるゾッとするお話しでした。あー怖。

  • 遠田潤子節炸裂か!!?とワクワクしてたら、思ってたよりそんなこともなかった…

  • 装丁の美しい深紅の薔薇が読後は禍々しく目に映る。

    薔薇が咲き乱れる家で、一見何不自由なく暮らしていた青川恭子だが、長男の嫁の妊娠を機に常軌を逸した行動を取り始める。
    その姿はまるでホラー。
    恭子の言動に狂気を感じ恐怖と嫌悪感が増していく。

    物語には複数の母と子の関係性が描かれている。

    特に恭子とその母親の背景が見えて来た時、それまで感じていた嫌悪感情は消え一気に哀しみへと変化した。

    無償の愛など望むべくもなく、来る日も来る日も呪いの言葉を浴びせられた恭子の苦しみは想像に難くない。

    母親の業の深さを思い知らされ胸が痛む。

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著者プロフィール

遠田潤子
1966年大阪府生まれ。2009年「月桃夜」で第21回日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。16年『雪の鉄樹』が「本の雑誌が選ぶ2016年度文庫ベスト10」第1位、2017年『オブリヴィオン』が「本の雑誌が選ぶ2017年度ベスト10」第1位、『冬雷』が第1回未来屋小説大賞を受賞。著書に『銀花の蔵』『人でなしの櫻』など。

「2022年 『イオカステの揺籃』 で使われていた紹介文から引用しています。」

遠田潤子の作品

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