保守主義とは何か - 反フランス革命から現代日本まで (中公新書 2378)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121023780

感想・レビュー・書評

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  •  歴史上の多様な保守主義の姿を描く。バーク以来の伝統的保守主義は、個々の人間の知や理性の限界の自覚、だからこそ歴史の継承の中での自由と漸進的改革が特徴。自由主義と保守主義の境目すら曖昧になりかねない。ただ読んでいて、いかにも英国知的エリートらしいとは感じた。
     米では独立精神や宗教心、反知性主義と結び付いた独特の「伝統主義」。更に「小さな政府」志向が強くなればリバタリアニズム。この両者とは異質なネオコン。これらが全て保守主義の枠内に入る。
     日本では、明治期伊藤、陸奥、原という政友会の系譜、そして戦後の吉田に著者は「保守本流」を見る。ここでいう保守は、伝統的な英国系保守主義のことだろう(著者がこれを好ましく考えていることも本書から伝わってくる)。ただ、より国家主義的な岸の路線と「保守合同」し、政治勢力としてはともかく、共通保守思想の保守思想は希薄となった。
     21世紀の保守主義は「多様性に開かれた、自由で創造的な保守主義」であってほしいと著者は巻末で述べる。必ずしも自らを保守主義者とは考えていない、と著者は後書きで語るが、このような保守主義であれば、非保守主義との実りある対話も可能になるのかもしれない。

  • 保守主義を正当化する立場でも批判する立場からでもなく、歴史的に明らかにする本
    伝統主義やナショナリズムとは異なり、むしろ秩序ある漸進的改革を目指すのが本来の保守主義である、というのが議論の出発点

  • まったくね、俺はなんだってこういう本をクリスマスに読んでいるのだろうな・・イブに購入する際、店員の方が必死な
    形相で(俺にはそう見えました)「またのご利用を・・!」
     本って現実を豊かにするためにあるだろうなと。だけどな
    こういう街の賑わいを背にするとちょっと切ないですがな!

    書評ですが・・・
    普通に読み易い文章ですよね。細かい点はいずれ後に・・・
    なんというか、出来の良い学生さんのレポートを拝読して
    いるような気持ちになりました。
    歪みが見当たらないのが最大のアレなんだと思います。
    行間に思いの丈を込めるというタイプではありませんが。
    敢えて思想的な偏りをなくしていると言いますか。

  • これも民主主義近辺の学習の一環。結論を申し上げると示唆に富んだ素晴らしい一冊です。特に丸山や福田の保守の系譜の断裂の指摘の部分や、田中や中曽根に挟まれて印象の薄い大平正芳についての記述など考えさせられることが多かったです。
    また、読み進めながらも今の日本に真の保守と呼べる政治家がいるのかと危惧するとともに、著者の言葉にあるように断裂したように見える中に継続する何かを見出す必要も強く感じました。良書です。80

  • 【書評】小野紀明(読書人2010.06.25)

  • 保守主義の定義はいろいろあるとしても、自分にはハイエク的保守、すなわち理性を絶対視する傲慢な革新主義者/集産主義者に対する批判としての見方が最もしっくりきた。特定の個人や組織に社会全体の情報をすべて把握できるのかという懐疑は健全と思う。自生的秩序に基づく自由の実現がこの考え方の核心となる。

  • 東大の政治思想史の専門家が、保守主義について述べたもの。歴史上の思想家、哲学者、政治・経済学者によるさまざまな考え方を紹介し、保守とは何かを追及している。いろいろな変遷を経て現在に至っていることを理解した。学術的で説得力があり有意義な本であった。
    「かつて間違いなく、人々が進歩を信じていた時代があった。昨日より今日、今日より明日と、社会は良いものになっている」piv
    「自分の家族や仲間、地域コミュニティ、その歴史や文化、技能や伝承、さらに自然環境や景観などを、人は守ろうとする。そして何かを守ろうとするとき、人は少しだけ、勇気や誇りを感じる」p5
    「(アンソニー・ギデンズ)伝統ですら、その根拠を示さなければならないのが現代である。グローバル化が進み、多様な人々がともに暮らす現代社会で、何が伝統であり、何が権威であるかは、当然ながら自明性を失う」p7
    「(エドマンド・バーク)革命とは、すべてを更地にして、その上に理想的な政治制度を、一から作り直そうとする試みである。とはいえ、そのような急ごしらえの建物が堅固なものになるはずがない。むしろ、もともとあった美点すら失い、やがてすべてが崩壊してしまう。そのようなバークの予言は、ジャコバン派の恐怖政治とナポレオンの独裁によって実現することとなる」p11
    「(エドマンド・バーク)通常、習慣といえば、無思考的な同一パターンの繰り返しと理解されがちであるが、社会を構成する多様な集団に自らの役割と任務を教え、偏見の中に秘められた知恵を形にするのは習慣である。人間は習慣という衣をまとうことではじめて人間となる」p59
    「(ハイエク)社会の複雑性を無視して単一の目的を押しつけてはならない。特定の人間の意志ではなく、価格という非人格的なメカニズムの支配が望ましい」p89
    「ハイエクが問題としたのは、自分はすべてを把握しているという人間の傲慢さであった。彼はフェビアン協会を主導したウェッブ夫妻など、社会主義に共感を示す当時の英国知識人にその種の傲慢さを見出した」p90
    「制度や習慣はつねに歴史の中でふるいにかけられ、そこで生き残ってきたものである」p91
    「(マイケル・オークショット)人間にとって大切なことは、自己のめぐり合わせに対して淡々としていること、自己の身に相応しく生きていくこと、自分自身にも自分の環境にも存在しない一層高度な完璧さを、追及しようとはしないこと」p98
    「間違いないのは、アメリカが現代の先進国で例外的に宗教的な国家であるという事実である。しばしば指摘されるように、アメリカでは90%を超える人々が神、または普遍的な霊魂の存在を信じている。特に人口の約8割を占めるのはキリスト教徒であり、その多くは神による天地創造を信じていて、むしろ進化論を支持する人間の方が少数派である。このような数字は、世俗化の進んだ他の先進諸国には見られないものであり、アメリカの顕著な特徴となっている」p119
    「(トクヴィル)アメリカ社会を支えているのは、一握りの知的エリートではない。地位も学歴もないけれど、生活に根ざした健全な判断力を持つ普通の人々こそが、アメリカ社会の根底にある」p122
    「特殊利益団体はひとたび生まれると、自らの存続を自己目的化してしまうのである。権限をもった官僚たちもまた、国家全体の利益よりは、自らの組織の発展を考えるようになる。政府の役割は止めどもなく拡大していく」p130
    「(ロン・ポール)政府の権限の拡大と増税による個人の経済的自由を厳しく批判するポールは、政府の力を借りて、他人の税金によって自らを豊かにすることを「合法的な略奪」と呼ぶ。連邦政府の権限は憲法によって定められた最小の規模にすべきであり、政府の支出は必要最低限でなければならない」p136
    「アメリカの伝統的な保守主義は孤立主義の傾向が強い」p144

  • 2016/8/10

  • 311.4||Un

  • 160702 中央図書館
    バークからハイエク、丸山真男まで、「保守主義」という名で一括りにされがちな思想を、簡単な見取り図で整理。

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著者プロフィール

東京大学社会科学研究所教授

「2023年 『法と哲学 第9号』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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