ルワンダ中央銀行総裁日記 (中公新書 290)

著者 :
  • 中央公論新社
4.16
  • (193)
  • (218)
  • (76)
  • (12)
  • (4)
本棚登録 : 2578
感想 : 229
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (339ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121902900

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 1965年から6年にわたって、IMFからの派遣でルワンダ中央銀行総裁として任務した日本人の記録。
    明治期のお雇い外国人に似ているが、長年の植民地支配でぐだぐだになっている分、条件が悪い。
    ベルギーから独立したばかりの途上国で、中央銀行の立ち上げから、旧宗主国系の外国人政治顧問や商業銀行との戦い、中央銀行も所掌を超えて経済再建計画の立案など、いくらでもやることがある。本人の記録なので割り引かなければならないにしても、英雄的な働きである。実際、ルワンダは70年代にはかなりの経済成長を遂げたらしい。

    その後、90年代のルワンダ動乱についての論考も収録されている。せっかくの経済成長を灰燼に帰すような打撃である。ただ、80年代には所得格差の拡大や長期政権の腐敗が進んでいたというから、健全な持続は難しいようである。一抹のむなしさあり。

  • ルワンダ再建のセキララ本。ルワンダ人が読めないことをいいことに、言いたいことを何でも書いていて面白い。しかし一人でここまで経済再建できたというのはこの人は本当に有能なのだろう。平価切り下げによる影響、輸入物価の制定、、金融の複雑そうなあれこれを、単純明快に解釈、実行して、成功を収めている。自分の目でルワンダ実情を確かめる姿勢、人々を納得させる手腕も素晴らしい。自分の政策に自信を持って一人で進める度胸もこの人でないとできなかったことであろう。この後ルワンダは内乱が激しく大統領も爆死、経済も再び混乱に陥ったとのことだが、残念なことである。

  • 派閥に対して、反抗や協調をすることなく、末端職員との直接対話、人事制度から 組織を作り直したことが 成功要因と思った


    「戦に勝つのは兵の強さ、戦に負けるのは将の弱さ」


    「途上国な発展を阻む最大の障害は 人であるが、その発展の最大の要素も 人である」

  • 1965-71年までタイトル通りそれ以上の仕事をした人の日記。
    内容の色あせなさにびっくりした。
    そしてすごく面白かった。
    自分のそれまでの経験に裏付けられた知識に自負がある人、先を見通せる人、現地での常識を疑ってみる人、そして仕事の能力のある人が組み合わさるとこんなことになるのかと。
    人も育てられているし。

    途中途中で挟まれるちょっと難しい数字とかは飛ばしたけど、経済の仕組みの話が最初は苦戦するけど最終的にはちゃんと読めるようになるほど面白かった。

    こういう人が裏方に存在するとその国は発展するんだろうなって見本のような人。
    うん、でもカイバンダ大統領の信頼と丸投げっぷりは紙一重だと思った。人を見る目はあったけどね。

  • 『私は戦に勝つのは兵の強さであり、戦に負けるのは将の弱さであると固く信じている。私はこの考えをルワンダにあてはめた。どんなに役人が非効率でも、どんなに外人顧問が無能でも、国民に働きさえあれば必ず発展できると信じ、その前提でルワンダ人農民おルワンダ人商人の自発的努力を動員するとを中心に経済再建計画をたてて、これを実行したのである。』
    著者である服部氏が最後にまとめられている文章は、45年後の日本社会に痛切に響くメッセージのような気がしてならない。

  • 俺のルワンダがこんなに経済発展著しいわけがない。


    某書評で「ラノベみたい」と評され人気が出た本書ですが、その実は超骨太の経済エッセイ。
    独立直後のルワンダで、出来立てホヤホヤのルワンダ中央銀行の2代目総裁として派遣された著者の視線により、ルワンダが一独立国家として経済的に自立すべく、国家経済・財政が整っていく様子をつづった回顧録。
    近代経済のケーススタディとしてとてもおもしろい一冊です。

    作者は独立後のルワンダ中央銀行の2代目(前任者はなにもせずにすぐ離任したので実質初代)総裁である服部正也氏。
    1965年から6年間、ルワンダに赴任し、中央銀行の組織ばかりか、ルワンダ全体の経済計画の作成に寄与されました。

    新書サイズながら、話は非常に多岐にわたっています。
    大きな話の一つは国家経済の話。
    そもそも経済とはなんなのか、独立したばかりの発展途上国で、国がどのように成長して、そして経済が回っていくのか。
    当初、コーヒー(と鉱山)くらいしか産業がないルワンダがいかに生産をし、貿易黒字となり、内側に財を蓄えていったか、が良質なケーススタディとして非常によくわかります。

    もう一つは、組織マネジメントの話。
    出来立てホヤホヤでほぼ組織の体をなしていないルワンダ中央銀行。
    ただ一人日本からやってきた服部が、異国でスタッフを導き、小国とはいえ中央銀行として機能せしめたのか。そして、銀行だけでなく、商人をはじめルワンダの経済界を育てるに至ったのか。

    この、組織をマネジメントするために人に向き合った、という点がこの本のキーポイント。
    次の言葉で示されているように、服部がいかに人を活かしたか、そしてそれが経済発展に結びついたか、よくわかる一冊になっています。

    「私は戦に勝つのは兵の強さであり、戦に負けるのは将の弱さであると固く信じている。
    (中略)
    途上国の発展を阻む最大の障害は人の問題であるが、その発展の最大の要素もまた人なのである。」
    (第8章「ルワンダを去る」より)


    冒頭「ラノベみたい」といった評を紹介しましたが、実際、読み物としても楽しいです。
    まるで夏目漱石「坊ちゃん」(あれも東京人が愛媛の田舎に赴任する話)のような語り口で読者を引き込みます。

    異世界もの(?)が好きな人も、銀行マンもそうじゃない人も、楽しんで読めること間違いなしの一冊です。

  • ルワンダ。
    話題には上りつつ、手を出していなかったが、平置きから手に取る。

  • 技術と方針は独立である。この本では、高い技術と方針の適切な設定の両方がいかに物事を為すのに重要かが説かれている。そして肩書きや経歴がその人の能力や言動の信頼性を担保しないことを表している。

  • ぃやー!
    事実は小説よりも奇なり とは、よく言ったものですね!
    って感じ!!
    ぃやー、ノンフィクションなのに。血肉湧き踊りました。
    1国を一人で(もちろん、協力者はいろいろいるので、ほんとうに一人、と言うのは語弊があるけれども)がっつり再建する、そんなドラマにあふれた1冊。
    すげーっす。
    この時代、手紙ですべてやり取りする時代ですよ?
    そこでいきなり、ルワンダに単身渡り、一国の再建のために自身の人生をささげた彼の意気がすごい。
    この時代の、ルワンダの何もなさも、すごい。

    専門家の真髄を見た、って感じ。
    彼ほど、良く知っていれば、本当に役にも立つよね。尊敬もされるよね。

    当時の人は、政府のオーナーシップとか特段気にすることなく、もはやこの服部氏自体が中央銀行総裁だったことは、さすがに時代背景なんだろうけど、でも、すごいなぁ。。

    すごい、小説読んでる気分になりました。
    城戸さんとか思い出しつつ。笑 男子の本懐?笑

    ちなみに、精神論は、今も全く変わっていないと思うし、今も昔も当てはまること、いっぱいあったと思う。

全229件中 131 - 140件を表示

服部正也の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×