マイ・ロスト・シティー (中公文庫 C 27)

  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (228ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122011342

感想・レビュー・書評

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  •  ちょっと変わった構成の短編集で、エッセイが一本入っている。でも、雰囲気は収録されている小説と似ている。軽いんだけど、物哀しい。都会的なんだけど、素朴さが残っている。それがフィッツジェラルドの魅力なんだね。それにしても、村上春樹の翻訳は読みやすい。

  • 2015/06/05 読了

  • フィッツジェラルドの、美しくてどこか哀しい短編を、若かりし村上春樹が訳しているもの。このころの村上春樹の翻訳文体は、なんだかクリスプで少し感傷的で、風の歌を聴けとかピンボールとかを思い出す感じだった。なんとなく哀しさに酔っているような。それはそれでとても心に刺さるのだけれど。翻訳自体は、わたしは岩波のフィッツジェラルド短編集がとてもとても好きなのだなと改めて感じた。
    フィッツジェラルドは相変わらず、ストーリーをそこまで克明に思い出せないのに、読後感だけズルズル引きずってしまうような短編ばかりだなあと思う。ちょっと古いけれど、いい本だなあ。

  • 訳者の想いが冒頭にあるため、必然的に村上春樹の世界に引きずられてしまうような気が、、、
    それはともかくどの短編も諦めと言いましょうか、静かな悲しさに包まれた雰囲気を纏っている。
    狂騒的な時代に嫌悪感を感じつつ、それに合わせていかないと様々な意味で生きていけない自己および市井の人々の悲哀をこの作家は本能的に嗅ぎつけ、かつ意図して淡々と描き出して見せた気がする。
    今回の読書後の一番の好みは『残り火』かな。

  • 「偉大なるギャツビー」で有名なフィッツジェラルドの短編集。
    村上春樹の訳だったので学園祭の古本市で買ってみました。

    全体的に悲しいというか寂しい作品が多かったように思います。

    それは前書きで村上春樹が言っているように、フィッツジェラルドの転落人生から来るものなのかもしれない。

    言葉選びがとてもよくて、フィッツジェラルドと村上春樹がうまく調和しているように思いました。

    すごく深いというかなんというか、読めば読むほど味が出て、胸が苦しくなって、言葉が心にしみてくる、そんな短編集だったような気がします。

  • The Crack-up がフィッツジェラルドの影響によるものということから。
    フィッツジェラルドの代表作といわれるものではない作品6編を収録。訳は村上春樹。冒頭には彼による詳しいフィッツジェラルドの伝記も載っている。
    どんな幸せにも哀しみが混じる。同じ場所にとどまることはできないから。それでも、その土地で生きた人々の証は身体から離れることなく、いつも傍にあるというやさしさ。1920年代というアメリカに生きたフィッツジェラルドだからこそ、移りゆく時の酸いも甘いも噛み分けられるのだと思う。

  • ※自分用メモ

    【出会い】
    ブックオフ105円でなんとなく。

    【概要】
    スコット・フィッツジェラルド短編集。村上春樹訳。

    【感想】
    冒頭に訳者の時代背景を含めた解説があり、それを踏まえると作者の心境へ想像をはせながら読むことができる。
    もしかしたら、時代背景という点ではバブル世代は共感をもって読めるのかもしれない。

    個別の作品としては、「失われた三時間」の凝縮された起承転結と心情描写に魅せられた。

  • 僕の手もとにある単行本の奥付を見たら、
    昭和58年刊行でした。

    ちょうど大学にはいった頃か、
    ボクは文学部にいて、
    片っ端から、本を読んでました。

    ネットもケータイもなかった時代、
    ボクたちはアジアの片隅の小さなアパートから、
    本だけをたよりに、世界を眺めていたのでした。

  •  フィッツジェラルドの6つの短編集。
     冒頭に、日本でフィッツジェラルドが再評価されるきっかけを作った村上春樹による「フィツジェラルド体験」という文章があり、この文章自体が歴史的価値があると思う。
     ここに訳された6つの短編小説はいずれもそれまで日本語訳が存在していなかったという。こんな有名な小説家のすぐれた短編がよく半世紀の間翻訳されずに放置されていたものだと思う。いかにそれまで日本でフィッツジェラルドに対する注目度が低かったかということだと思う。
     僕は6つの短編にもましてこの村上の文章自体に高い価値を認める。わくわくするような文章だ。

     最初に「残り火」という強烈な印象を与えるものを置いている。小説技法的にはストレートでひねりがないが、内容がガツンとくる。

     この本で僕がいちばんいいなと思ったのは「失われた三時間」。O.ヘンリみたいにトリッキーで、しかも心にしみる。

     「アルコールの中で」は、最後に出てくるあるイメージがこの小作品の核になっているが、「ノルウェーの森」「太陽の南国境の西」「スプートニクの恋人」あたりの村上作品に共通するものを感じる。

     「哀しみの孔雀」と「残り火」はテーマに共通のものがあるが、「残り火」はフィッツジェラルドの初期の作品、「哀しみ-」は作家としての人気が凋落した後に書かれたもので、その雰囲気の違いが興味深い。僕は「残り火」のしっとりした情緒をより愛する。

     「氷の宮殿」は小説技法という意味でうまく、いい雰囲気も持っているが、内容としてフィッツジェラルドの本質から遠いのであまり強い印象を持たなかった。ただこの作品はフィッツジェラルドの中でもかなり評価が高いようだ。

     この本のタイトルにもなっている「マイ・ロスト・シティー」は小説ではなくてエッセイ。小説技法を期待してよむと肩透かしをくらう。しかし20年代のアメリカの風俗を知るうえで貴重な資料だと思う。

  • 「「氷の宮殿」は昔読んだことがあったのだが、改めて読むといい話だなあ。

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著者プロフィール

1896~1940  1920年、処女長篇『楽園のこちら側』がベストセラーとなり、妻のゼルダと共に時代の寵児ともてはやされるが、華やかな社交と奔放な生活の果てにアルコールに溺れ、失意のうちに死去。『グレート・ギャツビー』『夜はやさし』等長篇数作と数多くの短篇を残した。

「2022年 『最後の大君』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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