エ-ゲ海に捧ぐ (中公文庫 い 6-4)

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 141
感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (214ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122023130

作品紹介・あらすじ

サンフランシスコのアトリエにいる彫刻家を責め立てる、日本の妻からの長い国際電話。彫刻家の前には二人の白人女性が…。卓越したシチュエーションと透明なサスペンスで第七十七回芥川賞に輝いた表題作ほか二篇を含む、衝撃の愛と性の作品集。

感想・レビュー・書評

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  • ちょっと外国の小説かなと思わせる
    舞台がサンフランシスコだということや白人の女性が登場する
    エキゾチックさばかりから来るものではないが、持ち味というのだろう

    一場一場の情景絵を広げていくような
    ひとこまの静止したエロスのつながり

    実を言うとそのような描写はもう、うざったいという感情もある
    しかしいちどは読んでおかないと、と思った
    芥川賞受賞作品だからではないけれどもね(笑

    ミステリー仕立てもあるが、そのことは重要ではない

    サンフランシスコに滞在している日本人の彫刻家に
    日本の妻が国際電話でうらみつらみを、長々と述べぐちるストーリー
    その彫刻家のアトリエには白人女性が二人
    ひとかたは素裸、もうひとりは着衣

    それが芸術を凝らした絵の連続のようだ
    そこには才能がきらめいていると思うのがみそ

    この御仁はお金がないらしいから
    妻がする国際電話料金がかさむのが気になる
    またまた
    クリーニング代を惜しみ、汚れ物を船便で妻に送ってしまう
    それがミステリのきも

    ケチな野郎の芸術家ぶりっこがうける
    と言っては失礼かな
    ここのエロスは今となっては上品である

    「ミルク色のオレンジ」「テーブルの下の婚礼」の2作品もついている中公文庫

  • 受賞歴
    第77回(昭和52年度上半期) 芥川賞受賞

    (「BOOK」データベースより)
    サンフランシスコのアトリエにいる彫刻家を責め立てる、日本の妻からの長い国際電話。彫刻家の前には二人の白人女性が…。卓越したシチュエーションと透明なサスペンスで第七十七回芥川賞に輝いた表題作ほか二篇を含む、衝撃の愛と性の作品集。

    文庫: 214ページ
    出版社: 中央公論新社 (1995/5/18)

  • かなり変態。エーゲ海とは女性器のたとえ。三作品からなる。三作品とも、女性が主人公に女性器を見せつける。16歳や12歳の少女も登場する。地中海、エーゲ海、ミルクに濡れたアゲハチョウ、いろんな女性器の比ゆが出てくる。

    <作品>
    エーゲ海に捧ぐ
    ミルク色のオレンジ
    テーブルの下の婚礼

    <登場する女>
    エーゲ海に捧ぐ
     アニタ
     グロリア
     トキコ(妻)

    ミルク色のオレンジ
     ナオミ(16歳の少女)
     エミコ(妻)

    テーブルの下の婚礼
     サキコ(姉・31歳)
     サキ(妹・12歳)

    <エーゲ海に捧ぐ>
    彼女の脚の付根の蜜の巣が真正面に眺められる。(9)
    アニタの太腿がいっぱいに拡げられている。マイヨールの地中海の匂いが太腿の間に見えるような気がする。そうだ、彼女の蜜の巣は地中海にふさわしい。(26)
    グロリアのはなんと呼ぶべきだろう。地中海が二つあるのは困る。大西洋と呼んだら彼女はおこるだろう。それでは私にも広すぎる。エーゲ海と呼ぶか。“エーゲ海に捧ぐ”というなにかがあったはずだが憶い出せない。(31)

    <ミルク色のオレンジ>
    ナオミは私の方を用心深くうかがいながら、下唇を小さな歯で少しかんで見せると、不意にあお向けに上半身をのけぞらせた。そしてそのままの状態で立てたままの両膝を私の方へ向かって思いきって開いて見せたのだ。(68)
    ミルクで濡れたアゲハチョウが濡れたまま、こちらへ飛翔してくるような幻覚に一瞬とらわれていた。(68)
    巨大なアゲハチョウがミルク色に染まりながら、密かに呼吸しているような気がした。(70)
    彼女の誕生日の埋め合わせは、私の火柱が彼女を貫通する儀式でなされなければならなかった。それで赤ちゃんができればナオミの16歳の誕生日の最高の贈物になるはずだった。(82)
    お臀の割目のそこですっかりあふれている河口。ぴらぴらして、黒ずんだ弾力ある外側の襞、どこまでも延びそうで、すぐゆるんでしまう襞。特性のゴム製の襞。羽根の毛むくじゃらの付根。オレンジ色に染まりつつあるアゲハチョウの残忍で息もつけなくなっている口腔。(100)
    今までの経過を見ていると、ユーワクされているのはぼくの方なんだ。
    アタシガアナタヲユーワクシテイル訳ナノ?
    35歳の男が16歳の女の子にユーワクされるなんて、考えようによってはおかしなことだ。どのような事情であるにしろ、例えば強姦罪で裁判沙汰にでもなれば、私の言い分は一人の陪審員の同情も得られないであろう。
    誰モ信ジヤシナイワ。デモ心配シナクテイイノ。本当ハアタシガアナタヲ、ユーワクシタンダカラ。(103)
    少女はいきなりオレンジ色のドレスの胸許を両手で破るかのように押し拡げ、一方の乳房をあらわにさらけ出したのであった。この衝撃的な少女の動作が、以外にも私にショックを与えなかったのは、彼女がいかにも無邪気に、ホラ、ココニホクロガアルデショウ、コレヲ見テモライタカッタノ、と言ったからであったかもしれない。(109)

    <テーブルの下の婚礼>
    サキコにせよ、女たちは何故男の下着を洗いたがるのか。若い男のしみだらけの下着に、なにか淫靡な秘密がくっついているとでもいうのだろうか。(132)



    2013.08.04 「女は海、男は船」という言葉を探していたら、池田満寿夫に遭遇した。
    2014.07.03 読書開始
    2014.07.15 読了

  • 文書だけをみると、所々稚拙で推敲したいような箇所が混じっていて(例えばカタカナの文書)不快だが、映像あるいは画像としてみるべきで、作者には一枚の静止画が先行してあっただろう。その強烈で鮮明なイメージが文書/妄想を手繰り寄せていて、その熱気のようなものが、池田満寿夫を版画家にしたように、芥川賞作家にした。

  • いわば女性器小説。女性器だけが本当で、他はどこまで真か妄想かわからなくなる。

  • 1977年上半期芥川賞受賞作。私の一人称語りによって物語が進行してゆく。登場人物は、私の目前にいる2人の女―アニタとグロリア、そして電話を通じて声だけの妻、トキコ。この作品の実に特異な点は、私と2人の女との間で一切の会話が交わされることのない点だ。声の女トキコも一方的に語りかけるのみで、私との間に対話はない。その間に、彫刻家である私の視線だけが女たちの上を彷徨う。徹底した「眼」の小説なのだ。ロブ=グリエをはじめとしたヌーヴォー・ロマンの手法に近いものだと言えるだろう。これまでの日本文学にはなかったものだ。

  • 陶芸家であり画家でもある作者がアメリカの田舎町で次々に脳裏に浮かんできた日本語を紡いだという官能的で幻想的な短編小説集。
    どことなくブコウスキーとかバタイユっぽくて日本人にしては珍しい感性。
    表題作は1977年の芥川賞受賞作。

  • 1977年(昭和52年)第3位
    請求記号:Fイケダ 資料番号:011345824

  • 難しい。よく分からなかった…

  • 「エーゲ海に捧ぐ」とは、不在の肉体が、言葉によって眼前の存在を浸食していく過程を描いた作品。

    同時に起きたことを同時には書けないという、小説=言葉のきわめて基本的な構造によって成立しえている。

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