十二人の手紙 改版 (中公文庫 い 35-20)

著者 :
  • 中央公論新社
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感想 : 299
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  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122051034

感想・レビュー・書評

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  • ブクログからオススメされた本。
    初読みの井上ひさしさん。

    前半はダラダラと読んでしまい、途中でやめてしまおうかと思ったが続けた。
    12人の人物それぞれの短編となっている。手紙のやりとりから、その生い立ち、人間模様や出来事が見える。
    最後の章では、時を経てこの12人全員が偶然同じホテルに宿泊していて、事件が起こる。これまでに登場した人物の現在の様子も描かれている。
    このような展開は初めてで、面白かった。こう来るかーと思った。読んでよかった。

  • 匠の一品、の一冊。

    書簡だけで綴られ魅せられる世界、面白かった。

    昭和臭はもちろん、予想外、ほんのり哀しみありとそれぞれ単独でも充分楽しめる世界。

    面と向かっての会話とは違う、書簡ならではの表現の仕方も印象的。
    そして、味わい楽しみながら連れていかれたエピローグ。
    なるほど、仕掛けが巧い。

    まるでズラリと仕上がったメニューが並ぶ食卓を見たよう。あ、あの時の食材がここに…あの食材とこの食材がここで見事にこう仕上がったのね…と思い浮かべる感嘆のひととき。

    書簡のみ、構成、仕掛けが巧く調理された匠の一品ってやつかしら。

  • 書簡形式の12の短編集。ショートショートストーリーで隙間時間にサクサク読めました。どのお話も面白く、読み応えがありましたが、私が特に印象に残ったのは、「葬送歌」「赤い手」「ペンフレンド」「鍵」「里親」です。
    人の手紙を読むってドキドキします。

  • まず、ジャケ買いしてしまいそうな表紙が印象的。気がつけば(井上ひさしさん)ずいぶんと久し振りだった。手紙形式の小説だけが持つ味わいがある。書き手の心情、返信する人の気遣いなど様々な人間模様があらわれて引き込まれた。

  • もともと書簡体の小説はあまり好きではなく、これまで手にすることはほとんどなかった。手紙文という形式上、抑揚の少ない文体で綴られていることが多く、ドラマティックな展開になる作品にほとんど出会えなかったからである。

    本作を手にしたのは、書店で「どんでん返し」と書かれた宣伝文句とともに平積みになっていたからであり、さらには著者が井上ひさし氏という期待感である。

    タイトル通り、十二の書簡体での小編からなっている。それにプロローグとエピローグを加えて、正しくは十四篇の作品を集めたものである。書簡体といっているが、中には役所などに提出する事務的な書類への記載で構成された作品もある。これらの集まりで一篇の物語を生み出してしまうのは、井上ひさしという作家の面目躍如であろう。どの作品も、氏らしい趣向がこらされていて、これまで敬遠してきた書簡体の小説が、かくも楽しいものかと再発見できる。

    プロローグとエピローグは、その間で綴られる十二編の物語と関連してくる。ゆえに本作は短編集という体裁になってはいるが、一冊を一気に読むべきである。個々の作品に巧みに織りこまれた作者の企みと作品全体に潜ませた企み、これらをすべて味わい尽くすには、すべてを通して読むしかない。書簡体といっても、著者の滋味豊かな文章でつづられた本作は、単調になるなどということはなく楽しんで読むことができるだろう。

    手紙という形式で、かくも豊かな表現ができるものかと驚いたと同時に、手紙は実は書き手の内面を生々しいまでに晒してしまうものなのだと感じた。

    単なるどんでん返しの繰り返しではない。それぞれの作品に、各々の趣向をこらせて、アイロニーの効いた作品に仕上げている。SNSをはじめとするデジタルデバイスを前提としたツールが氾濫している現代、手紙というアイテムは前時代的かもしれない。だが、今読んでもそうした古めかしさは感じない。それは井上ひさしという偉大な作家の圧巻の筆力に依るものであろう。

  • プロローグ。からの、そうきたかー!
    しかも、プロローグから十二人の手紙を読み終えるまでが長いからなー。
    正直十二人の手紙はそこまで面白いわけでもなかった。しかし、長い長い壮大な伏線と考えるとなかなか無駄とも思わない。
    エピローグでの木堂の推理がスマートで冴え渡っていましたね。

  • 劇作家のイメージが強くて今まで読んでいなかった作家。お薦めで初読み。
    短編の全てが手紙で構成されていて
    それぞれの書き手が相手に自分の状況や心情などを
    綴る。
    真心がこもっていたり、傲慢だったり、
    虚飾があったら、それぞれに個性がある。
    劇作家なだけに、文章から情景が浮かんでくる。
    時代がかなり前だけれど、古さは感じない。
    特に葬送歌の中の戯曲はまるで演劇を見ているようでした。
    哀愁を感じる手紙のやり取りで〆かと思いきや
    エピローグの意外な展開も面白かった。

  • 著名な作家であったがその作品は読んだ事が無かった。
    この作品は初めて読むにはハードルが低い作品だと思ったが、これほど面白いとは良い意味で騙された。
    そんなに目新しい構成では無いが味があって面白い。
    他の作品も読んでみたくなった。

  • 初版は1980年、今から40年前に世に出た本作がここ最近いろいろなところで目にする機会が増え、手にしてみました。

    すごいね。の一言につきる。

    表題のとおり、本作は全てが手紙のスタイルで書かれています。

    プロローグから始まる手紙で記された短編???

    その一つ一つが実に面白い。

    手紙だけで構成されているにもかかわらず、いくつかのストーリーはまさに大ドンデン返し。

    まさかの謎解きミステリーとしてしっかりと示されていた。

    また、「玉の輿」では作品の中に出てくる12通の手紙の内、2番目からの実に11通は全てが違う著者の書いた手紙の書き方と言った作品の例文集からの引用のみで構成されている。
    (著者のセンスに驚かされる)

    ラストのエピローグではそれまでに描かれた短編での登場人物が一堂に会する。

    しかも、それぞれのストーリー(手紙)で描かれた当時から、少し未来の形で。

    なんともお見事でした。


    説明
    内容(「BOOK」データベースより)
    キャバレーのホステスになった修道女の身も心もボロボロの手紙、上京して主人の毒牙にかかった家出少女が弟に送る手紙など、手紙だけが物語る笑いと哀しみがいっぱいの人生ドラマ。
    著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
    井上/ひさし
    1934年生まれ。上智大学仏語科卒。「ひょっこりひょうたん島」など放送作家として活躍後、戯曲・小説などの執筆活動に入る。小説では『手鎖心中』で直木賞、『吉里吉里人』で日本SF大賞および読売文学賞、『腹鼓記』『不忠臣蔵』で吉川英治文学賞、『東京セブンローズ』で菊池寛賞、戯曲では「道元の冒険」で岸田戯曲賞、「しみじみ日本乃木大将」「小林一茶」で紀伊國屋演劇賞および読売文学賞、「シャンハイムーン」で谷崎潤一郎賞、「太鼓たたいて笛ふいて」で毎日芸術賞および鶴屋南北戯曲賞など、受賞多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

  • 少し前から、ブクログのランキングで急上昇していて驚いた本。

    ん?
    あの”井上ひさしさん”???
    没後10年の今なぜ???

    『十二人の手紙』が出版されたのは1978年、文庫本は1980年。

    ミステリーマニアの間では有名な作品だったらしいのですが…
    40年も前に書かれた本がなぜ今、ヒットしているのか?

    その秘密は…

    「旧作文庫の発掘企画」として、中央公論新社が仕掛けた一冊!
    新聞広告も出していたそう。

    書店員さんが書いたこの”帯”

    まさに隠れた名作ミステリ
    どんでん返しの見本市だ!!

    ブクログのランキング急上昇で気になっていたところ、本屋さんでも文庫本ランキング第2位になっていて、
    ど~んと平積み。
    そして、この帯を見たら…
    もう、買うしかありません(笑)

    さっそく読んでみたら

    面白かった!
    40年前の作品だけど
    面白い!

    解説に書かれていた
    「手紙というスタイルをとることで、なんだか抜き差しならない切実感が読む者の胸に迫ってくる」

    まさに!
    手紙だけのミステリー。
    引き込まれました。

    井上ひさしさんの本を読んだのは何十年ぶりだろう…

    読みたい本はたくさんあれど、読める本は限られている。
    ついつい新刊に手が伸びるけれど…
    ちょっと古い本も読んでみようかな…
    そう思わせてくれた一冊です。

著者プロフィール

(いのうえ・ひさし)
一九三四年山形県東置賜郡小松町(現・川西町)に生まれる。一九六四年、NHKの連続人形劇『ひょっこりひょうたん島』の台本を執筆(共作)。六九年、劇団テアトル・エコーに書き下ろした『日本人のへそ』で演劇界デビュー。翌七〇年、長編書き下ろし『ブンとフン』で小説家デビュー。以後、芝居と小説の両輪で数々の傑作を生み出した。小説に『手鎖心中』、『吉里吉里人』、主な戯曲に『藪原検校』、『化粧』、『頭痛肩こり樋口一葉』、『父と暮せば』、『ムサシ』、〈東京裁判三部作〉(『夢の裂け目』、『夢の泪』、『夢の痴』)など。二〇一〇年四月九日、七五歳で死去。

「2023年 『芝居の面白さ、教えます 日本編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

井上ひさしの作品

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