- Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122051034
感想・レビュー・書評
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匠の一品、の一冊。
書簡だけで綴られ魅せられる世界、面白かった。
昭和臭はもちろん、予想外、ほんのり哀しみありとそれぞれ単独でも充分楽しめる世界。
面と向かっての会話とは違う、書簡ならではの表現の仕方も印象的。
そして、味わい楽しみながら連れていかれたエピローグ。
なるほど、仕掛けが巧い。
まるでズラリと仕上がったメニューが並ぶ食卓を見たよう。あ、あの時の食材がここに…あの食材とこの食材がここで見事にこう仕上がったのね…と思い浮かべる感嘆のひととき。
書簡のみ、構成、仕掛けが巧く調理された匠の一品ってやつかしら。 -
書簡形式の12の短編集。ショートショートストーリーで隙間時間にサクサク読めました。どのお話も面白く、読み応えがありましたが、私が特に印象に残ったのは、「葬送歌」「赤い手」「ペンフレンド」「鍵」「里親」です。
人の手紙を読むってドキドキします。 -
まず、ジャケ買いしてしまいそうな表紙が印象的。気がつけば(井上ひさしさん)ずいぶんと久し振りだった。手紙形式の小説だけが持つ味わいがある。書き手の心情、返信する人の気遣いなど様々な人間模様があらわれて引き込まれた。
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もともと書簡体の小説はあまり好きではなく、これまで手にすることはほとんどなかった。手紙文という形式上、抑揚の少ない文体で綴られていることが多く、ドラマティックな展開になる作品にほとんど出会えなかったからである。
本作を手にしたのは、書店で「どんでん返し」と書かれた宣伝文句とともに平積みになっていたからであり、さらには著者が井上ひさし氏という期待感である。
タイトル通り、十二の書簡体での小編からなっている。それにプロローグとエピローグを加えて、正しくは十四篇の作品を集めたものである。書簡体といっているが、中には役所などに提出する事務的な書類への記載で構成された作品もある。これらの集まりで一篇の物語を生み出してしまうのは、井上ひさしという作家の面目躍如であろう。どの作品も、氏らしい趣向がこらされていて、これまで敬遠してきた書簡体の小説が、かくも楽しいものかと再発見できる。
プロローグとエピローグは、その間で綴られる十二編の物語と関連してくる。ゆえに本作は短編集という体裁になってはいるが、一冊を一気に読むべきである。個々の作品に巧みに織りこまれた作者の企みと作品全体に潜ませた企み、これらをすべて味わい尽くすには、すべてを通して読むしかない。書簡体といっても、著者の滋味豊かな文章でつづられた本作は、単調になるなどということはなく楽しんで読むことができるだろう。
手紙という形式で、かくも豊かな表現ができるものかと驚いたと同時に、手紙は実は書き手の内面を生々しいまでに晒してしまうものなのだと感じた。
単なるどんでん返しの繰り返しではない。それぞれの作品に、各々の趣向をこらせて、アイロニーの効いた作品に仕上げている。SNSをはじめとするデジタルデバイスを前提としたツールが氾濫している現代、手紙というアイテムは前時代的かもしれない。だが、今読んでもそうした古めかしさは感じない。それは井上ひさしという偉大な作家の圧巻の筆力に依るものであろう。 -
プロローグ。からの、そうきたかー!
しかも、プロローグから十二人の手紙を読み終えるまでが長いからなー。
正直十二人の手紙はそこまで面白いわけでもなかった。しかし、長い長い壮大な伏線と考えるとなかなか無駄とも思わない。
エピローグでの木堂の推理がスマートで冴え渡っていましたね。 -
劇作家のイメージが強くて今まで読んでいなかった作家。お薦めで初読み。
短編の全てが手紙で構成されていて
それぞれの書き手が相手に自分の状況や心情などを
綴る。
真心がこもっていたり、傲慢だったり、
虚飾があったら、それぞれに個性がある。
劇作家なだけに、文章から情景が浮かんでくる。
時代がかなり前だけれど、古さは感じない。
特に葬送歌の中の戯曲はまるで演劇を見ているようでした。
哀愁を感じる手紙のやり取りで〆かと思いきや
エピローグの意外な展開も面白かった。 -
少し前から、ブクログのランキングで急上昇していて驚いた本。
ん?
あの”井上ひさしさん”???
没後10年の今なぜ???
『十二人の手紙』が出版されたのは1978年、文庫本は1980年。
ミステリーマニアの間では有名な作品だったらしいのですが…
40年も前に書かれた本がなぜ今、ヒットしているのか?
その秘密は…
「旧作文庫の発掘企画」として、中央公論新社が仕掛けた一冊!
新聞広告も出していたそう。
書店員さんが書いたこの”帯”
まさに隠れた名作ミステリ
どんでん返しの見本市だ!!
ブクログのランキング急上昇で気になっていたところ、本屋さんでも文庫本ランキング第2位になっていて、
ど~んと平積み。
そして、この帯を見たら…
もう、買うしかありません(笑)
さっそく読んでみたら
面白かった!
40年前の作品だけど
面白い!
解説に書かれていた
「手紙というスタイルをとることで、なんだか抜き差しならない切実感が読む者の胸に迫ってくる」
まさに!
手紙だけのミステリー。
引き込まれました。
井上ひさしさんの本を読んだのは何十年ぶりだろう…
読みたい本はたくさんあれど、読める本は限られている。
ついつい新刊に手が伸びるけれど…
ちょっと古い本も読んでみようかな…
そう思わせてくれた一冊です。