盤上の向日葵(下) (中公文庫 ゆ 6-2)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (322ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122069411

感想・レビュー・書評

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  • 柚月さんのエッセイで、松本清張の砂の器よりヒントをえて書かれたとのことでしたので、最初から犯人はわかっていました。
    ただ殺害された人物は私が思っていた人とは違っていました。
    どのような展開でストーリーが進んでいくのか、最後まで興味をもって読み終えることができました。

  • 図書館本
    上下巻、ぐいぐい行きました。謎に迫るにつけ、切なさも深まる。

  • ミカエルの鼓動を読んだ時にも感じたが、この作者は登場人物のモデルがいて、そこに色々取材、調査を行い、その生い立ちなど含め丁寧に人物像を練り上げて、物語を作っているのがわかる。

    この小説は、推理小説というより、生まれてからある意味、業を背負って生きる主人公の人間ドラマだと思った。

    佐野、石破コンビによる捜査のパートと、主人公の生い立ちからを描くパートが交代の章として描かれていて、テンポよく読み進められる。

    推理小説として読むと、ちょっと物足りないが、将棋による勝負師の人間模様の物語としては面白かった。

    なお、気になった点として以下。
    実際の対局場面で、「7六歩」などの描写が多い。
    将棋に疎い人間には、文章としてこう書かれても、なかなか難しいところだ。
    リアルさを伝えたいディテール表現なのはわかるが、今一つめんどくさいのこの描写は軽く読み飛ばしていた。
    これが、マンガだと、将棋を知らなくても、盤面が描かれていて、そこに勝負の一手をピシッと打つ場面などのイメージが直接伝わる。
    文章表現の難しいところだと感じた。
    そのあたり、ちょっと緊迫した場面とはいえ、つい頭が物語から離れてしまうこともあった。


  • 柚月裕子の間違いなく代表作だろうと思う(2017年8月単行本、2020年9月文庫本)。文庫本では(上)(下)に分かれているが、ストーリー展開に引き込まれ一気に続けて読了した。
    物語は大きく分けて4つの時代が交差して描かれている。
    1つは主人公の上条佳介33歳プロ棋士の現代(平成6年)、2つ目は佳介9歳将棋と出会う小学生の頃(昭和46年)、3つ目は佳介20歳将棋の真剣師と出会う東大生の頃(昭和55年〜56年)、4つ目は佳介28歳〜30歳IT企業経営者の頃(平成元年〜3年)。
    上巻では1つ目と2つ目の時代までだったが、下巻は全ての時代が交差して描かれ進行する。

    (上巻)
    物語は埼玉県山中で身元不明の死体が時価600万円と言われる名工の将棋の駒と共に発見されたことで物語は始まる。
    将棋の駒の捜査を担当する二人の刑事の現代平成6年の捜査進展状況、そして昭和46年佳介が幼少の頃の悲惨な家庭状況と将棋を覚えていく状況を綴った上巻。
    昭和46年当時では佳介に手を差し伸べて将棋を教える元小学校校長唐沢光一郎と佳介を虐待する父親上条庸一との葛藤が描かれ、平成6年現代では県警捜査1課の刑事石破剛志45歳と所轄の刑事佐野直也31歳が絶妙な捜査で何代も変わった駒の持ち主を探す。佐野刑事が元奨励会所属でプロの棋士を目指していたが挫折して警察官になった過去を持ち、駒の捜査にはなくてはならない存在となって、いぶし銀の捜査能力を誇る石破刑事との絶大なコンビにグイグイ引き込まれる。
    上巻では、現代平成6年は捜査で駒の記録上の持ち主から4人目になる転売された手掛かりを得るところで終わり、昭和46年小学生だった佳介は東大に合格、恩人の唐沢に挨拶に来たところで終わっている。昭和55年の3月である。そして駒は唐沢が手にしており佳介に餞別として渡すのである。

    (下巻)
    昭和55年東大生となった佳介は、賭け将棋で飯を食う「真剣師」で元アマチュア名人の東明重慶と出会い、再び将棋への思いに目覚め東北での賭け将棋の場に同行する。しかし東明に裏切られ、唐沢から贈られた菊水月の駒を騙し取られる。
    時は経ち佳介は就職した外資系の会社を3年勤めて退職、2年後の平成元年には年商30億のIT企業の経営者として成功を収めていた。既に騙し取られた駒も買い戻し会社も順調な時に上条庸一が現れ、金を無心されるようになる。また時を同じくして8年振りに東明も現れ遺恨を残しながらも将棋の手ほどきを受ける関係になる。そんな二人との関係が1年半続いた平成2年12月庸一から佳介の衝撃の出生の秘密を明かされ、動揺し苦悩する。そして東明の余命ない病魔のことなどがわかってきて、事件になっていく。
    それから4年、佳介は会社を売り払いアマ名人から異例のプロ棋士になり、タイトル戦を戦う最も注目される棋士になっていた。
    平成6年の現代、捜査の進展で死体が予想外の人物に特定され、動機不明のまま容疑者が特定され、二人の刑事は将棋のタイトル戦の場へ向かう。
    上条佳介の凄い生命力と悲しい運命、二人の刑事の捜査能力と人間的な魅力、それぞれの周りを固める興味をそそる登場人物達、テンポのいい物語の展開、過去と現代が交差する物語の中に引き込まれる描写方法、柚月裕子の最高傑作だと思う。

  • なんとなく気になって買った上巻。
    下巻があるなら普通買うよね。と買った一冊。

    天才棋士の話と事件解決に向かう刑事の話。

    主人公天才棋士の人生は凄まじくよくその悲惨さに潰されなかったと思う。

    殺人に関わっていたとしても、主人公の人生と父親とされる人の事を考えると、許して欲しい気持ちがある。

    途中に出てくる将棋の戦いの内容はほとんど意味がわからない
    でも戦いの熱さは伝わってきた。
    将棋好きな人にはよくわかりよりこの小説を楽しめたのではないか

    最後がちょっと残念
    もう少しわかりやすいラストであって欲しかった。

    年末年始や、仕事などでちょっと読み終えるのに時間がかかってしまったが、読み始めたらあっという間に読み終えた小説でした。

  • 残りのページ数が少なくなっていくにつれて、どうやって着地するのかをどれだけ予想しても、そのページ数に比例しない。そして読み終わって、「そうか、これは推理小説ではないんだった」と突きつけられる。

    人生の栄枯盛衰は、他の人には測りしれないものなのだと思った。東明や元治はその人生、行ききったと思うのだが、果たして圭介は…。将棋をやり切って終わらせる人生と、何か見えないものに縛られて、己の意志とは関係なく追い込まれて…いや、達観して終わらせる人生。自身は願望を叶えたのだろう。それを堰き止めていたのが将棋だった。

    これがあるから生きられる、ではなくこれがあるから死ななくていい(死ねないではなく、いつでも行使できるからこそ今じゃなくていいといったようなニュアンス)。そういう思考は、ちょっとだけ分かる気がする。

  • 早く読み進めたい気持ちで下巻は焦ってしまったのが悔やまれる。

    死体遺棄事件と、その手に握られていた初代菊水月作の駒。
    この駒の持ち主を、元奨励会員である佐野と石破の刑事コンビが追いかけてゆく。
    将棋駒の「アンティーク」としての価値のみならず、この盤を使って名局を指すことで、盤や駒が生きてくるという言葉にじーんとする。

    一方、将棋界では竜昇戦、第七局が始まっていた。奨励会を経ずにプロになった東大卒棋士の上条が、六冠の天才棋士、壬生に挑戦する。

    年齢に達するまで本懐を遂げられなかった佐野の苦しみはさることながら、アマチュアとプロの壁を容易く超えてしまう上条は、ちょっと想像の範疇を超えてしまっている。

    さて内容としては、初代菊水月の駒を巡るパートと、上条の厳しい過去を辿るパートが、交互に忙しなく展開する、のだが。
    気付けばいつの間にか、上条と壬生が相対する盤の前にいたように思う。

    長考と、静寂。

    上条の思考だけが流れていく。

    向日葵を待つその姿が、ただ苦しかった。

    羽生さんの解説も、言葉の使い方が好き。
    そういえば、羽生さんは勝ちを確信すると指先が震えるという。その姿を自分も見たことがあるけれど。

    未来を見ていると言っても過言ではない。
    見えるって、どんな感じなんだろうなー。

  • 上巻で苦労に苦労を重ねられた上条少年は故郷に父を残し東京大学に入学した。
    苦学生を絵に描いたような上条は再び将棋と出会い、彼の人生に悪い何かを齎すであろうと予感させる男と出会い物語は終局へと向かってゆく。


    将棋の盤面は全然イメージ出来ませんでしたが真剣師達の将棋にかける情熱は伝わってきます。

    盤上の向日葵と言う言葉が素晴らしい!

    読んでいてハチワンダイバーを思い出しました。
    そして、いたたまれなくせつない気持ちになりました。

  • 上巻から続く2つの視点。

    発見された白骨死体の謎を追う刑事・石破と佐野の視点、大学生からプロ棋士までの上条桂介の視点。

    徐々に時間的な隔たりは埋まっていき、発見された死体が伝説の真剣師・東明重慶であることにたどり着くも、死体と共に埋められていた名匠・初代菊水月作の錦旗島黄楊根杢盛り上げ駒の謎が残る。

    重慶と桂介の過去が語り尽くされた時に明らかになる事実。

    残念なのは最後の終わりかたが個人的にはどうしても物足りなさを感じてしまった為に★5つとは記せなかった。

    惜しくも本作は2018年の本屋大賞で2位となり、同年の大賞受賞作は辻村深月先生の「かがみの弧城」、私の読後評価は★5つと記されていました。

    ただ本作では将棋の世界が一つの舞台となりますが、本作の構成自体がまるで詰将棋の如く計算され尽くされた奥行きのある作品でした。

    説明
    内容紹介
    2018年本屋大賞2位!
    著者渾身の慟哭のミステリー、ついに文庫化!

    昭和五十五年、春。棋士への夢を断った上条桂介だったが、駒打つ音に誘われて将棋道場に足を踏み入れる。そこで出会ったのは、自身の運命を大きく狂わせる伝説の真剣師・東明重慶だった――。死体遺棄事件の捜査線上に浮かび上がる、桂介と東明の壮絶すぎる歩み。誰が、誰を、なぜ殺したのか。物語は衝撃の結末を迎える! 〈解説・羽生善治〉
    内容(「BOOK」データベースより)
    昭和五十五年、春。棋士への夢を断った上条桂介だったが、駒打つ音に誘われて将棋道場に足を踏み入れる。そこで出会ったのは、自身の運命を大きく狂わせる伝説の真剣師・東明重慶だった―。死体遺棄事件の捜査線上に浮かび上がる、桂介と東明の壮絶すぎる歩み。誰が、誰を、なぜ殺したのか。物語は衝撃の結末を迎える!
    著者について
    柚月裕子
    一九六八年、岩手県生まれ。二〇〇八年、『臨床真理』で第七回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、デビュー。一三年に『検事の本懐』(宝島社)で第一五回大藪春彦賞を、一六年に『孤狼の血』(KADOKAWA)で第六九回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)、『慈雨』(集英社)で〈本の雑誌が選ぶ二〇一六年度ベスト一〇〉第一位、一八年に本作『盤上の向日葵』で二〇一八年本屋大賞第二位を獲得。その他の著作に『最後の証人』『検事の死命』(以上、宝島社)『パレートの誤算』(祥伝社)『ウツボカズラの甘い息』(幻冬舎)『あしたの君へ』(文藝春秋)など。

  • 下巻も一気読み。上条側と佐野側に分けて書かれていたのでスッキリ読めてお互い側に感情移入しやすかった。たくさんの向日葵が出てきて咲き乱れたけどイメージ通りの向日葵と毒を持った向日葵の両方があった気がする。

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著者プロフィール

1968年岩手県生まれ。2008年「臨床真理」で第7回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、デビュー。13年『検事の本懐』で第15回大藪春彦賞、16年『孤狼の血』で第69回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞。同作は白石和彌監督により、18年に役所広司主演で映画化された。18年『盤上の向日葵』で〈2018年本屋大賞〉2位となる。他の著作に『検事の信義』『月下のサクラ』『ミカエルの鼓動』『チョウセンアサガオ咲く夏』など。近著は『教誨』。

「2023年 『合理的にあり得ない2 上水流涼子の究明』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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