盤上の向日葵(下) (中公文庫 ゆ 6-2)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (322ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122069411

感想・レビュー・書評

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  • 将棋の世界にのめりこむ狂気を描きたかったかもしれないが、あまりにも上条がかわいそうである。また生まれを狂気に結びつけるのは、本人にはどうする事もできない呪いのようなもの。育ちは悲惨だが、周りの人間に蔑まれているわけでもなく、本人はクリーンに生きてもいる。自分自身で呪いを打ち破った末の、勝負師としての人生を見たかった。

  • 上巻では、埼玉県内で身元不明の白骨遺体が発見された。この遺体には、名匠の将棋駒が握られていた。この駒の持ち主は誰なのかという話を中心に元奨励会員の刑事が相棒の刑事とともに日本各地を巡る。その間に、実業界から将棋界に転身した天才棋士の幼少期の話。

    下巻では、天才将棋棋士が出会う伝説の真剣師。彼との出会いが天才棋士の運命を狂わせてしまう。

    終盤に向かうにつれてテンポが良くなるとても良い作品だった。天才将棋棋士の上条桂介と伝説の真剣師東明重慶の歩みは読んでいてハラハラした。また、上条桂介の壮絶な過去も昭和の時代の話ならばあり得る気がして怖かった。さらには、上条桂介と育ての親と言っても良い唐沢との関係も胸を打つものがあった。

  • 将棋好きな人にはお勧め。将棋がわからない私は???うーん↷

  • 犯人探しミステリーではなく、東野圭吾「白夜行」を彷彿とさせる壮大なヒューマンドラマ。振り返ってみれば、警察が地道に捜査を進めるだけのストーリーながら、丁寧に描かれた生い立ち、各登場人物がそのまままっすぐ進んだが故のラスト、まさに真剣師。決してハッピーな物語ではないのに読後の満足感が心地よい。

  • いや〜、非常に面白かった。単純に、めちゃくちゃ好みな話だった。純粋なミステリー(トリック解き明かし系)よりも、こういう背景解き明かし系
    / 人間ドラマ系の方が好きなので、純粋に楽しめた。

    個人的には、『青の炎』を彷彿とさせた。主人公の苦悩とか、なんというか全体的な雰囲気が似ていたと思う。

    あと、将棋版『砂の器』と聞いてドキドキしながら見ていた(中居くんのドラマだけ履修)のだが、
    「やっぱりそうなるか〜だめか〜」というのが最初の感想。終わりはあっけなかったけれど、共感できた。

    ただ、上巻では主人公が病んでいる感じはなかったのにが気になる。下巻の中盤からいきなり明かされた情報に唐突感は否めなかった。東明に関してはそうだろうな、と思った。

    一言でまとめると「仕方がない」。誰にもどうしようもなかったと思う。非常に良かった。1年後とかに再読したい。

    ちなみに、将棋のことは1ミリもわからなくても楽しめた。

  • 母の面影を辿ると、最後は向日葵に辿り着く

    下巻の冒頭の一文。なんて美しい書き出しなんだろうと思いました。

    読者としては、悲壮な終わりだと思います。救われてほしかったと心から思う。

    しかし同時に、物語としては、彼にとってふさわしい幕引きだったのかもしれないとも思います。

    結局、上条と東明の共通点は「将棋があるから死ねない」ことだったのでは。

    妄想をたれながすと。

    東明は、死にたいからこそ、上条に再び会いにきて、将棋を差し続けたのではないかと思います。「自分にはもう将棋すらない」と思い、死ぬことへ踏み切るには、自分と同等以上に将棋が強い相手が必要。

    それは、元治が死に花を咲かせたいと真剣の相手を求めたのとは、似て非なるもの。

    だからこそ、東明は上条に勝ってしまう限りは死を選べない→「俺が勝ったら殺せ」という要求になったのだと思うのです。

    負け、しかも、二歩というありえない反則をして負けたからこそ、東明は将棋を踏ん切ることができた=自ら死を選ぶことができた。

    上条も本来は、父親が死んだ時点でいつ死んでも良かったはず。父親の存在という呪いは、上条を苦しめる存在であると同時に、上条を生かすものだった。

    その呪いが解けたらどうなるか。東明にはわかっていたのではないでしょうか。だから上条に「プロになれ」という新しい呪いをかけた。それは、自分を(ある意味で)殺してくれた上条への、礼でもあったのではないでしょうか。

    でも、上条もまた、二歩をうった。将棋という呪いが解けてしまった。だから、死を選ぶのは、行動としては必然的だったのかもしれないと思います。

    もし、あの場に刑事が来ていなかったとしても、やはり遠からず違う形で、向日葵に向かって舞っていたのではないでしょうか。

    総じてグイグイ引き込まれる面白さで一気に読んでしまいました。

    「3月のライオン」や「りゅうおうのおしごと」が好きなので、棋士を扱った本を読んでみたくて手に取りましたが、やはり棋士という生き方を選ぶ人の背負う業に、肌を焼かれる思いです。

  • 読み終わった後、心がグッと沈む感覚だったが、嫌な読後感ではなかった。
    将棋について何も分からないで読んだが、緊張感はかなり伝わる。
    上巻は推理小説、下巻はヒューマンドラマな印象だった。

    解説にあった実際に元真剣師の棋士と勝負した話がかなり衝撃的。
    フィクションの世界ではないのだと感じた。

  • 上巻から一気に読む。
    久々にショックを受けるラストで、読み終わった後、呆然とした。
    自分の妄想推理のさらに上をいく悲劇。
    桂介がいつか光をあびる、そう信じていたのに。

    真剣師の東明に会ったのが間違いだったのか。
    でも東明に会わなければ、ここまでの棋士にもなれなかったかもしれない。
    将棋駒と一緒に埋められた死体の身元にも驚いたし、桂介の最後の優しさも感じつつ、それが犯人特定につながっちゃうのは皮肉。いや、殺人はいけないんだけども。
    読み応えがあったがゆえに、ラストでの衝撃がすごかった。
    ★のつけ方が難しい、と久々に感じた本。
    読み応え★5、読後感★3。

  • 選んで読んでいるわけでないけど、虐待を題材にした本が多い。その中でもこれは衝撃だった。
    知らないことほど、怖いものはない。家族愛というか、家族にしか教えてもらえないことがある。でも家族構造が崩壊してると抜け落ちる。
    虐待はした側もされた側も、周囲にいる人たちも皆を不幸にする。

  • 警察もの小説としては定評のある(自分の中で)柚木裕子氏の作品

    将棋ものと刑事ものの融合

    とある山中で埋められた死体が見つかり、その現場から一緒に将棋の駒が発見された
    職人が作った希少性の高い駒であり、国内に数個しかない高価なものだった
    一方その頃、将棋界では最年少棋士対実業家から転身した異端の棋士とのタイトル戦が注目が集めていた

    駒の出どころから事件の真相に近づこうとする刑事2人のパートと、1人の棋士の生涯を追うパートが交互に展開していく

    将棋の駒の価値やら、将棋界の通則(奨励会のルール)やら、知らないことが多くて面白く読めた。

    真剣師と呼ばれる賭け将棋士もその一つ
    その存在やその生き方が、危うくも輝かしい光を放ち、アウトローが持つ魅力は極道ものに通ずる

    惜しいのは棋士の生涯と追跡する刑事の二つが重なる時さらなる展開があるかと思っていたが、最後はあっけなく終わってしまったという印象
    もう一展開あってもよかったかなーと思う

    将棋の勝負の緊張感や定跡の表現の仕方はとても良かったので、また将棋もの書いて欲しいなぁ。

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著者プロフィール

1968年岩手県生まれ。2008年「臨床真理」で第7回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、デビュー。13年『検事の本懐』で第15回大藪春彦賞、16年『孤狼の血』で第69回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞。同作は白石和彌監督により、18年に役所広司主演で映画化された。18年『盤上の向日葵』で〈2018年本屋大賞〉2位となる。他の著作に『検事の信義』『月下のサクラ』『ミカエルの鼓動』『チョウセンアサガオ咲く夏』など。近著は『教誨』。

「2023年 『合理的にあり得ない2 上水流涼子の究明』 で使われていた紹介文から引用しています。」

柚月裕子の作品

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