川端康成異相短篇集 (中公文庫 か 30-7)

  • 中央公論新社
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感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122072169

作品紹介・あらすじ

没後50年を迎えた川端康成の短篇から、現世界から少しだけずれた、あるいはその奥行きの見方が通常と異なる別の相を感知していると読める作品を集めた一冊。

幻想的、あるいは怪談的と受けとめられる作品も多いが、選択にあたっては、あくまで生の不可解さを自然主義的叙述によらず、技巧的に描いた作品であることを基準とした。

川端文学の特異な一面を堪能できる小説選。


(収録作品)心中/白い満月/地獄/故郷/離合/冬の曲/朝雲/死体紹介人/蛇/犬/赤い喪服/毛眼鏡の歌/弓浦市/めずらしい人/無言/たまゆら/恋情/二黒/眠り薬

感想・レビュー・書評

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  • 川端康成といえば、
    『雪国』や『伊豆の踊り子』のように、
    揺れ動く繊細な恋愛心理を端的かつ美しい文章で表現する作家のイメージだったが、
    本作は「人間の不気味さ」が同じ手法で描かれている。

    性愛の変態的嗜好や、霊的な恐ろしさがありつつも、後味が悪いわけでは全くない。

    不気味なのに、美しい。面白い。

  • 111108さんのレビューで出会うことができました。ありがとうございます!
    死の世界への渇望が溢れ出ていて、美しい文体なので更に怖さと不安がじんわり広がる。現実味があるような非現実的な構造で「異相」の不思議な世界。
    「私は七年前に死んでいるが、生き残っている友人の西寺とときどき怖い話をする」『地獄』、「新平が奇麗な着物だねと珍しいことを言ってくれた梅の小紋縮緬」が見たいと思う『冬の曲』、「あの方の美しい幻が浮かんで胸苦しくなると、私は鏡の前に座って自分の美しさをさがした」女学生の『朝雲』、大黒帽をかぶった耳のうしろに鉛筆を一本挿している女車掌のユキ子さんの持っていた男女のけしからん写真が気になる『死体紹介人』、玉虫色ってなんだろうとおもった『蛇』、九州の弓浦市を探してみた『弓浦市』、「今日もまためずらしい人に会ったよ」という父の言動にふりまわされる『めずらしい人』、「たまゆらに昨日の夕見しものを今日の朝は恋ふべきものか たまゆらに露も涙もとどまらず亡き人恋ふる宿の秋風」『たまゆら』、「新年に際し、自分と同じ星の人々の興奮を祈るは人情である」『ニ黒』、睡眠薬服用時の怪談のような体験の『眠り薬』
    どの作品も短編なのに長編のような濃ゆさ。

    • 111108さん
      ☆ベルガモット☆さん、お返事ありがとうございます!

      ベルガモットさん「圧倒的な孤独感」を川端康成に感じるのですね。「意外に変な趣味」としか...
      ☆ベルガモット☆さん、お返事ありがとうございます!

      ベルガモットさん「圧倒的な孤独感」を川端康成に感じるのですね。「意外に変な趣味」としか捉えられなかった私恥ずかしい。次読む物ではもうちょっと何か感じられたらいいなと思ってます。女性を凝視してしまう癖、興味を持つと文字通り目が離せなくなってしまったのでしょうか。
      還暦を迎えるまでに‥わぁリミット近いな汗。でも食わず嫌いせずに追っていきたいです♪
      2023/05/14
    • ☆ベルガモット☆さん
      111108さん、こちらこそコメントありがとうございます!

      少し前まで川端氏は優等生で裕福な家庭だと勝手に思っていました。両親、祖父母...
      111108さん、こちらこそコメントありがとうございます!

      少し前まで川端氏は優等生で裕福な家庭だと勝手に思っていました。両親、祖父母、姉と死別し中学は寄宿舎に入ったということを少し前の著書で知ったり、療養生活での東山魁夷との交流などなんとなく心細さを感じとったのかもしれません。

      お恥ずかしながら文豪作品をあまり読んでいませんので、こっそり登録したり、食わず嫌いは…するかもです。

      ここでお伝えするのもなんだかですが、ダヴィンチ掲載祝宴の時は本当におつきあいありがとうございました♪
      2023/05/14
    • 111108さん
      ☆ベルガモット☆さん

      文豪、私もあまり読んでなかったので大人になって楽しめてよかったです♪食わず嫌い‥私もしちゃうかも。

      ダヴィンチのや...
      ☆ベルガモット☆さん

      文豪、私もあまり読んでなかったので大人になって楽しめてよかったです♪食わず嫌い‥私もしちゃうかも。

      ダヴィンチのやりとりは、こちらこそとても楽しかったですよ〜また掲載されたら祝宴呼んでくださいね♪
      2023/05/15
  • 常識的な認識からはずれた「異相」をテーマに、小説16編、随筆3編を集めたアンソロジー。幻想的な作品、不気味な作品、心霊的な作品が多い。川端康成は、既読作品では「死体紹介人」以外ではあまり好きなものはなかったが、短編では面白い作品が見つかりそうだと思いなおした。


    以下は印象的だった作品。

    「地獄」
    死んだ友人と、その自殺した妹について会話をする。

    「離合」
    結婚の許可をもらいにやってきた娘の恋人に連れられて上京した田舎教師は、娘との再会を喜ぶが…

    「死体紹介人」
    時間帯を分けて同じ部屋を借りていた相手の女が死に、葬式を挙げる金がないので解剖用に遺体を大学に提供してしまうが、遺骨を受け取ろうとその妹が現れて…

    「犬」
    犬が「死の使い」と恐れられ、死人が出た家の犬を殉死させる風習のある村での話。

    「弓浦市」
    三十年前に会ったことがあると女性が訪ねてきたが、どうもそんな覚えはない。

    「めずらしい人」
    「今日はめずらしい人に会った」と頻繁に話す父を怪しみ、陰から様子をうかがってみると…

    「無言」
    幽霊が出ると噂のトンネルを通って、身体が不随になった老作家の家を訪問する。いくら話しかけても言葉は返ってこない。

    「眠り薬」
    眠り薬を常用している作者の失敗談を描いた、滑稽味のある随筆。

  • 川端康成の異相短編もまた、泉鏡花や内田百閒と同じく傑作揃い。不気味な物事や現象に恐怖するのと違い、囚われて惹かれているように感じるのは、私の違った認識だろうか。嫌な夢も幻聴も怪奇現象も死も、恐れつつも、どこか憧れているようにみえる。川端康成の美しい文章や最期を知る勝手な結びつきかもしれない。

  • 川端康成先生の幻想寄りの短編を集めた作品集。捉えどころのなさ、けれど確かな質感があるなにかたちが強烈な作品集です。
    冒頭からかましてくる「心中」。読者を置いていきながらも惹きつけてやまない1冊です。私の個人的なイチオシは「白い満月」

  • 結構読んだことのあるもの多いですが、アンソロジーは何をどう並べるかがポイントだなあと思わせる一冊です。その点でなかなか良かったです。
    まず、冒頭の『心中』で「来たーー!!」となります。高校以来のオールタイムベストオブ川端。詩とも小説ともつかない極めて短い短篇ですが、何から何まで超越しすぎていて凄まじく、川端の冷血さが滲み出ていて、寄る辺なく美しい。最初読んだ時、ビョンドザ日本文学すぎて、宇宙人が書いたのかと思った。ほんと、『心中』はもっと読まれて欲しい。
    で、その他では、ぬめぬめした幽霊譚の『地獄』、春の夕暮れのそこはかとない不安さ漂う『故郷』、ええ話系かと思いきやの『離合』、百合モノともとれる『朝雲』、初期の変態作品代表『死体紹介人』、お赤飯の話やないんかぁの『赤い喪服』、結構ドジっ子な面が知れる『眠り薬』と、ほぼ全て好みなので、川端の変態系短篇が好きな人にはお勧めできる一冊です。

  • 川端康成の作品は闇の淵を覗くような不気味さと不可解さがある。ここに集められた短編小説の殆どが死の匂いを漂わせ、死の幻影を纏っている。川端康成の作品もあれこれ読んできたけれど代表作の『伊豆の踊子』よりも『眠れる美女』や『片腕』『みずうみ』などがよりこの作家の本質を表しているように思う。本書の中でも特に異彩を放っているのは『死体紹介人』だろう。『朝雲』は別の本でも読んだ作品だが、本書の中では清涼剤のように爽やかで可憐な花のようだが、主人公の女教師への執着(恋心とも言えるが)を思うと『毛眼鏡の歌』の主人公と大差ない。『伊豆の踊子』や『雪国』しか読んだことのない人にこそぜひお勧めしたい1冊。

  • 川端康成の異相短篇にしぼって編まれた作品集。当然ながら、『伊豆の踊子』にイメージされるような作品ではない。『掌の小説』所収のものもあり、『掌の…』を楽しめる人ならいずれ劣らぬ名作揃いと感じるだろう。

    何と言っても、冒頭の『心中』が強烈だ。執着というのとはまた違うのかもしれないが、人の情念とでも言うべきか、底知れぬ思いの強さを、たった2ページの中にこれほどの強烈さで描くとはただただ恐れ入る。

    他には、『弓浦市』が圧巻。香住を訪れた婦人が誰であったのか明かされることはないが、別の人生もあった、というようなロマンティックなものとは無論違う。読んでいるうちに、現在も過去も、分からなくなってくる。これは読後の余韻が凄まじい。

    比較的分かりやすいものもあれば、結局どういう話だったのか掴めないものもあったが、編者である高原英理の解説が、良きガイドになる。説明しすぎることなく、押しつけることもなく、何とも程良い解説だ。その姿勢は「当短篇集の試みによって川端康成という謎が一層深まることを望みたい。」(p.356)という解説を締め括る一文に象徴されているように思う。

    何度か読み返すうちに理解できるようになる作品もあるのかもしれないが、よく理解できないままに作品の異相な世界にただ浸るというのも、こうした作品の味わい方であるような気がした。

  • タイトル通り、川端康成の異色作品を集めた短編集。川端康成は、有名な「伊豆の踊子」や「雪国」は実は読んでない(読んだけど忘れてる可能性もある)けれど、「眠れる美女」や「片腕」「たんぽぽ」などの変な作品はとても好きなので、この作品集もとても好みだった。

    既読のものでは「地獄」がやはり好き。ほとんど掌編のようだけれど飼い主が死んだら犬が殉死しなくてはならない村の話「犬」もすごいインパクト。何十年も前に会ったという女性にとうとうと当時のことを語られるも全く記憶にない作家の「弓浦市」も奇妙な味わい。

    「毛眼鏡の歌」になると、自分を振った女性の残していった櫛やごみ箱から抜け毛を集めてそれで眼鏡を編む男という、いささか変態じみたフェティシズムになり、とはいえ妙に詩的なので笑うに笑えない。

    「朝雲」は、美しい女教師に憧れる女学生の独白で、川端康成はこの手の百合ものも好きですよね。

    「死体紹介人」は奇抜なアイデアが面白い反面、「多分恋人もなくつつましく暮らしていた娘が、死体となって初めて、白い解剖台の上で、若い男達に女としての媚びを現した」という部分などに現れている、女性を勝手にモノ化した表現が個人的には不愉快だった。編者の高原英里はこれを「実に美しく忌わしい」と書いているけれども。男性目線だと思う。まあこれが「眠れる美女」に繋がっていくというのはわかる。死んだ(眠った)抵抗しない女はそりゃモノでしょうよ。そしてそれが川端のフェティッシュなのでしょう。

    ※収録
    心中/白い満月/地獄/故郷/離合/冬の曲/朝雲/死体紹介人/蛇/犬/赤い喪服/毛眼鏡の歌/弓浦市/めずらしい人/無言/たまゆら/感情/二黒/眠り薬

  • 半分も追えていないが、現在活躍中の作家で最も尊敬している高原英理が、なんと川端康成の短篇集を編むという、俺得な企画。
    結果、最高。
    一作品ごとに読書メモをつけたり、★をつけたりしているが、本書に関してはほぼ全作品★。
    もちろん解説も素晴らしい。

    小説16篇、随筆3篇。
    うち4篇は「掌の小説」より。
    私的BGM:「諏訪根自子の芸術」

    ■心中 ※「掌の小説」収録 ※wisさんの朗読で何度も何度も聞いているが、やはり壮絶。巻頭に置かれるのに最適だし、高原英理の解説も素晴らしい。
    ■白い満月 ※お夏の異様さに加え、私と上の妹八重子、下の妹静江の挿話も加わって、全員どうかしている。
    ■地獄 ※幽霊! なのに生臭く生々しく。女を遣り取りするホモソーシャルな会話でもある。
    ■故郷 ※「掌の小説」収録 ※「掌の小説」収録 ※時間と空間をやすやすと飛び越える自在の小説。小説だからこそ。それをヘリコプタアと表現するあたり、いい。
    ■離合 ※ゴーストばかりだが、果たしてジェントル、なのか……?
    ■冬の曲 ※内田百閒でおなじみの宮城道雄が出てくるが少し嬉しい。
    ■朝雲 ※「新女苑」という雑誌に掲載。本書を「幻想短篇集」としなかったのは、こういう作品を入れるため、みたいだが、その判断素晴らしい。よき百合とまずは簡単に書いてしまうが、こういう小説の語り手の不思議さを考えるための好例だと思う。
    ■死体紹介人 ※これは凄まじい……川端康成でなければ書けないのではないか……ネクロフィリア……無機質な美しさ……。私が朝木新八の話を聞いている、という枠物語であることが、小説として巧み。
    ■蛇 ※「掌の小説」収録 ※ちょっと難しいな。
    ■犬 ※川端、犬を大好きなのに、犬と一緒に撮影されても無表情な写真がいくつもある。犬も女も陶磁器も同じだったんだろう。好きな犬でこんな小説を書くあたり、どうかしとる。
    ■赤い喪服 ※母子の会話。こりゃ赤痢っていう言葉ありきで書いた思い付きだと思うが、それをこんな形に仕立てるとは。
    ■毛眼鏡の歌 ※やや難しいが、エモい話だとは思う。
    ■弓浦市 ※実在しない町という意味で、ちょっとしたネットジャーゴンになっている、のか? いつかどこかでだれかのトラウマになり得る小説を送り出した作家。
    ■めずらしい人 ※「掌の小説」収録 ※編者が解説で「いたたまれない異物感」を書いているが、確かに。血縁近しく身近で親しみも持っているのに、どうしても判らないことって、ある。
    ■無言 ※タクシーで乗り合わせる幽霊というありがちな話を取り込む貪欲さ。と、脳障害者へ書けばいいのにという非道さ。
    ■たまゆら ※死者を前に物品を遣り取りすることの、残酷さと美しさ。
    ■恋情(以下、随筆)
    ■二黒
    ■眠り薬
    ◇解説

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著者プロフィール

一八九九(明治三十二)年、大阪生まれ。幼くして父母を失い、十五歳で祖父も失って孤児となり、叔父に引き取られる。東京帝国大学国文学科卒業。東大在学中に同人誌「新思潮」の第六次を発刊し、菊池寛らの好評を得て文壇に登場する。一九二六(大正十五・昭和元)年に発表した『伊豆の踊子』以来、昭和文壇の第一人者として『雪国』『千羽鶴』『山の音』『眠れる美女』などを発表。六八(昭和四十三)年、日本人初のノーベル文学賞を受賞。七二(昭和四十七)年四月、自殺。

「2022年 『川端康成異相短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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