NHKスペシャル 100年の難問はなぜ解けたのか 天才数学者の光と影

著者 :
  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (229ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140812822

作品紹介・あらすじ

ついに「ポアンカレ予想」が解決した!ところが…。世紀の難問に挑み、敗れ去った幾多の数学者と見事に解決したにもかかわらず姿を消した天才グリゴリ・ペレリマン。数学という魔物がもたらす数奇な運命とは-。

感想・レビュー・書評

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  • 正直、ミレニアム問題もポアンカレ予想も知らなかった。理工学部の大学生になったということで、スタートラインとしてとっつきやすそうな本書を手に取ってみた。
    数学を極めすぎたことによって人生があらぬ方向に行ってしまう。こんなにも難しいことに挑戦する博士たち、人類がまだ見ぬところに到達するために全てを目の前の難問に捧げる博士たち。好きなことにならここまで熱中できるのか。天才だからここまで極めてしまうのか。
    そして数学は奥が深い。どんなに世界は変わっても数学は普遍的な態度を取り続ける。そこに数学という学問の魅力があるのかもしれない。

  • 100万ドルの懸賞金がかかっていたポアンカレ予想にまつわる本です。物語として非常に面白いです。

    理図書 415.7||Ka79 11941663

  • ポアンカレ予想解読にまつわるドキュメンタリーの書籍化。概略の尻尾くらいはなんとなく分かったような気にさせられるNHKの力量おそるべし。
    しかしテレビでやる内容ではないよな。この前のエヌスペもそうだったけど、数学はテレビ向きじゃない。活字じゃないと薄っぺらになり過ぎる。

  • これ以上集中するともう元には戻れなくなるんじゃないかという感覚に襲われる時がある、という羽生さんの言葉を思い出しました。凡人には、そんなことがありうるのか?と不思議な感じがします。しかし、ひょっとすると、元々は笑い上戸で明るい性格の青年だったペレリマンが世の中との交流を絶って数学に没頭するようになったのは、まさにその戻ってこれなくなる領域に入ってしまったからなのかも知れません。

    集中しすぎると脳神経がそういうダメージを受けるのだろうか?
    数学というよりそういうところに関心がわきました...

  • なぜ解けたかはこの本を読んでもイマイチわからないなあ。タイトルがダメだけど内容はさらっと読めて概要はわかった。

  • 数学の内容は難しかったけど、すごく興奮して一気に読み終えました。面白かった。

  • ポアンカレ予想の解決とそのなぞについてNHKスペシャルでやっていたものを本にしたもの。
    ポアンカレ予想の単純に見せかけた複雑な模様をインタビュー形式を交えながら。
    数学者ってこんな人がいるんだ、というのを感じられた。

  •  フランスの数学者アンリ・ポアンカレが、1904年に発表した論文の中で提起した難問。通称「ポアンカレ予想」。その後、その証明に多くの数学者が挑み、敗れ去っていった。
     そして発表から100年を経た21世紀初頭、ロシアの数学者グリゴリ・ペレリマンがついにその証明に成功、数学界のノーベル賞と呼ばれる「フィールズ賞」を受賞する。しかしその後のペレリマンの行動が数学界のみならず世界を騒然とさせる事になる。
     何とペレリマンはフィールズ賞の受賞を拒否。またこの問題の証明にかけられていた懸賞金100万ドルも受け取らなかったのだ。
     世界が衝撃をうける中、ペレリマンは世捨て人として人前から姿を消してしまう。やがてある噂が数学界に流れ始めた。
    「ペレリマン博士は数学の世界を離れ、サンクトペテルブルグの森で趣味のキノコ狩りを楽しんでいる」

     一体ペレリマンとは何者なのか。ポアンカレ予想とは何だったのか。それを検証したNHKのドキュメンタリーを書籍化したのが本書である。スタッフは数学の世界を右往左往しながら数学者の本質に迫っていく。

     この番組を制作したスタッフは皆数学の素人であるらしい。彼らは本書中で何度もポアンカレ予想については完全には理解できないという旨の事を書いている。だがそれが逆に効果をあげている。
     そう、それでも彼らを突き動かしたのは、数学という世界の面白さである。難問に挑み一生をなげうった学者たちの情熱に触れるたび、数学の何がそこまでさせるのかという興味がわいてくる。

     ポアンカレ予想とは、すごく簡単に表現すると≪単連結な三次元閉多様体は、三次元球面と同相と言えるか≫というものだ。
     既にこれは日本語だろうかと頭が痛くなってくるが、これは宇宙の構造にまで関係してくるとても面白い命題なのだ。本書でも現役の数学者が登場してわかりやすく問題の中身を説明してくれる。これでポアンカレ予想の表面だけにでもとりあえず触れられる。

     この問題が100年にわたり数学者たちを悩ませることになる。証明の一歩手前まで進みながらもたどり着けなかった者、あまりの難問に中途で諦めた者。生き様はそれぞれだが、彼らに共通しているのは数学で世の中を解き明かすことへの情熱である。
     ポアンカレ予想の証明に一生を捧げたギリシャ出身の数学者、パパキリアコプーロスが同僚に告げた言葉が印象的だ。
    『若い頃にギリシャに恋人がいたが、両親に反対されて諦めた。アメリカに来て以来、この有名で偉大な問題に自分を捧げなければならないと感じ、それが生活の中心になっている』『これが解けたら、祖国に帰って自分に合う女性を探せるかもしれない。そのためにもポアンカレ予想を早く証明しなければ』
     結局彼はポアンカレ予想の前に敗北した一人として一生を終えてしまうのだが、この言葉に数学者の人間的な一面を垣間見た気がする。ストイックに難問に取り組む彼も、胸の内に強い感情を閉じ込めていたのだ。同僚の数学者は言う。「彼がもし違う人生を選んでいたら、きっと女性を幸せにしていたことでしょう」この言葉に僕は泣きそうになった。

     ポアンカレが書き残した言葉が数学の本質を表しているかも知れない。
    「Mais cette question nous entrainerait trop loin(しかしこの問題は、我々を遥か遠くの世界へと連れて行くことになるだろう)」
     数学者たちは数学を通してもっと遠くの世界を目指している。

     本書を読み進めていくうちに感じるのはフィールズ賞というものの存在の大きさである。四年に一度だけ与えられ、過去70年の間に44人にしか授与されていないフィールズ賞。それが数学界で果たしてきた役割の大きさは良し悪しを含めて描かれている。
     そんなフィールズ賞の栄誉に背を向けたペレリマン。スタッフたちがある人物を通して彼とコンタクトをとろうとするラストはものすごい緊迫感だ。果たしてスタッフたちはペレリマンに会う事ができるのだろうか。

     数学者たちの姿を通して数学の世界の面白さと魅力を取材した本書。トポロジーなど数学の勉強も少しできます。「ミレニアム懸賞問題」なんてのも興味深い。
     数学は高校時代以来、という方でも読みやすいだろう。そして数学の世界の奥深さに飛び込もう。

     本書は2008年の6月に出版されたが、僕の手元にあるのは2008年11月に発行された第5刷。売れているのだ。こんな本が売れている事が僕は嬉しい。

  • ペレリマン博士は、きっと、リーマン予想に挑んでいるに違いない!彼の家の周辺では、アメリカ国家安全保障局の諜報員がうろついていることだろう・・・

  • 数学における最大の難問のひとつポワンカレ予想を証明し、一躍時の人となったものの、栄誉を拒み姿をくらませた天才数学者ペレリマンの実像に迫る、という数学ドキュメンタリー。数学という普通一般人が敬遠しがちな学問分野を扱う上では仕方のないことかもしれないが、周辺情報を盛り込みすぎて(その上それらについての解説は浅く、むしろ消化不良になる)、一番重要であろうペレリマンがこの予想と格闘する数年間の描写がかなり手薄になっていたことはいささか残念だった。とはいうものの、この本全体を通して語られる「問題と対峙する上で、ひとりでストイックに問題のことだけを追及するのか、自分の研究時間を犠牲にしてでも外部と交流をもち、自身の研究分野の底上げ及び発展を目指すか」という二つの態度の紹介は興味深かった(ちなみにペレリマンは前者のやりかた)。また、さまざまな数学者へのインタビューも普通に人生訓として読め、ためになる。

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