東方の黄金 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ1804)

  • 早川書房
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本棚登録 : 69
感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (195ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150018047

作品紹介・あらすじ

今から1300年余の昔、唐の都を老僕のみを従えた一人の若い官吏が旅立った。海沿いの僻地の町へ、何者かに毒殺された知事の後任として赴くのだ。旅の途上で、新たに二人の信頼できる部下を得た彼は、勇躍任地へ入る。だが、そこには人食い虎が跋扈し、新妻失踪や僧侶惨殺など、数々の難事件が待ち受けていた。さらに役所には毒殺されたはずの前知事の幽霊も…山なす怪事件に怯むことなく立ち向かう彼こそは、後世に神のごとき探偵としてその名を轟かせるディー判事、その人だった!長きにわたる判事の事件記録の劈頭を飾る名作を最新訳で贈る。

感想・レビュー・書評

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  • 狄仁傑ことディー判事が活躍する、中世中国を舞台にしたミステリーシリーズの第一作。時代考証の部分で結構ごった煮になっている部分もあるが、中核となる推理小説の部分は、多くの糸が絡み合って最終的に一本の線になっていくさまがなかなかに見事。主人公であるディー判事の人となり、信念などもしっかりと描写されており、古い時代の中国の知識人官僚の姿はこうだったかも、と思わず感心してしまう。それにしても登場人物がどこでもスナック感覚で怒鳴りあっていることが多いのはなぜだろう。著者の実体験なのだろうか?

  • 唐代の宰相・狄仁傑を主人公にした推理小説の記念すべき第1作目・・・と言いたいところだが、これがハヤカワミステリから刊行されたのは何故かシリーズ中盤になってから。
    時系列でいえばこの作品がトップバッターに当たるのに、時系列中盤にくるはずの『真珠の首飾り』が真っ先に刊行されるという不親切仕様は今もって解せない。
    出版社or翻訳者側の事情? 『真珠~』のほうが初めての読者にはとっつきやすいと判断された? 狄判事の地方官デビューと馬栄・喬泰2人組との出会いが描かれてる大事な出発点だというのにー!ヽ(`Д´)ノ
     
    刊行順にこそ不満は残るが、シリーズ全てが刊行されてしまった今となってはそこにケチをつけてもしょうがない。
    一介のディー判事シリーズファンにできることといえば、これから読もうとする人に「是が非でも 『 東 方 の 黄 金 』 か ら 読んで下さい」と念じるくらいである。
     
    さて、この作品内で若かりし頃の狄判事が初めての任地で初めての殺人事件を扱うわけだが、初めて尽くしな割にはやる事なす事なかなかふてぶてしい。むしろ追剥ぎ稼業から一転して判事の側近になった馬栄&喬泰のほうが初々しい右往左往ぶりを見せてくれる。愛い奴らめ(*´Д`*)
     
    このシリーズの魅力は、一見関係のなさそうな複数の事件が最終的に一本の線で結ばれていく過程と、その過程の合間に見られる判事と側近たちの個性や絆、軽妙なやりとりにあると思う。
    舞台となっている時代が時代なだけに、時には非現実的な現象も交えて物語は進むが、決して推理の興を殺ぐほどの要素ではない。
    例えばこの『東方の黄金』のラストは、現実と非現実の曖昧さが逆に粋な余韻を残していると言ってもいい。
     
    ただし、推理小説好きなら誰でも虜になるというタイプの小説ではないと思う。
    一言で表すなら「中国古典文学的推理小説」であり、どちらかというと推理小説好きな人よりも中国古典文学好きな人のほうが馴染みやすそうな気がする。

  • ディー判事初めての事件。
    赴任してきた街で前任の知事の暗殺事件を始め、様々な事件を解決していく。
    いくつもの事件が起こり、それが解けていくに従い大きな謎の姿がくっきりと浮かび上がってくる。話の流れはとても面白い。
    事件の謎とか解決の手段とかには「おいおい」と言いたくなるようなものもあるけれど、それは古代中国が舞台という事で、そういうものだと納得しておく。
    なによりも副官二人のやり取りがいい。男気があって、多少砕けていて。
    この二人がディー判事の固さを緩和してくれて、この世界を広げているんだと思う。
    それにしてもシリーズの中でも面白くて、一番最初の事件である本書が、ディー判事最後の事件である「南海の金鈴」よりあとに出版されるのはどうかと思う。
    ポケミスさん、せめて最初の事件と最後の事件の順番ぐらいは守って欲しかったなぁ。
    これを読んでいた方が、「南海の金鈴」の山場がより胸に迫るだろうに。

  • オランダ人の著者が、唐代を舞台に狄判事の活躍を描く異色ミステリーの時系列的第1作です。都に住む狄は、僻地の町に知事として赴任します。そこでは知事が、判事の役割も果たしていました。任地への途中、馬栄と喬泰と出会い、2人を部下として迎え入れます。そして狄判事は、前知事の毒殺事件や不可解な殺人事件、その裏にある謎に挑みます。
    読み慣れない登場人物の名前に、常にルビが振ってあったので、とても読みやすかったです。これは同種の他の作品でも、見習って欲しいですね。

  • (シリーズ時系列順第1作。後で書きます)

  • 氣賀澤保規 「則天武后」を読んで、狄仁傑の記述に触れ、中野美代子「仙界とポルノグラフィー」で取り上げられていた、「ディー判官ものの作者」を思い出し、一冊読んでみようかと相成った次第。出版年次が一番最初かはわからないけど、狄仁傑の人生の時系列からすると最初になる、この一冊を手にとる。都から転任して、最初の知事業務に当たる平来県での事件。前任者の知事の毒殺から始まった事件は広がりを見せ...と。紆余曲折を経て、最後は手並み鮮やかに解決するが、そこにはまた苦さもあり、と。ストーリー中、朝鮮との交易の話が出てくるが、地図をみると、山東省、確かに海を挟んですぐに朝鮮と向き合っていて、これは確かに交易盛んだったろうな、と思わせる。/全か無かいずれかだ。中間はない(狄仁傑)、剣によって死ぬさだめとあらば、わが血を吸うのがこの剣でありますように!(喬泰)/厩を知らん馬があるか?(柏開)などのニヤリとさせられる名台詞も散りばめられ、普段手に取らないミステリを楽しむことができた。

  • ディー判事シリーズの第1巻。
    都から県知事として初任地へ向かう判事と都の友人との別れから始まり、副官二人との出会い、海沿いの田舎町で待ち受けるいくつもの事件。

    登場人物が多くて少し混乱したけれど、私の集中力の無さのせいだろう。

    複雑な事件の伏線がキレイに回収されてる中で、不思議なエピソードもちらほら。物の怪あっての中国かな。

  • 唐の時代を舞台にしたディー判事の物語。シリーズ内の時系列では最初の作品となる。
    都での書類仕事を嫌って、志願して僻地の町の知事に赴任したディー判事。前任の知事毒殺事件もまだ解決していないのに、他にも数々の難事件が襲いかかる。死んだ知事の幽霊まで現れて…
    怪奇な謎あり、水滸伝風のチャンバラありと武侠小説っぽい雰囲気の中、徐々に真実が見えてくるのが面白い。判事や部下たちもキャラが立っていて読みやすいし、好感が持てない部分もあるが時代が時代なので許容範囲。
    ミステリというよりは中国古典小説の色合いが強いかも。

  • この慧眼から逃れる悪はこの世になし ディー判事最初の事件

    今から1300年余の昔、唐の都を老僕のみを従えた一人の若い官吏が旅立った。海沿いの僻地の町へ、何者かに毒殺された知事の後任として赴くのだ。旅の途上で、新たに二人の信頼できる部下を得た彼は、勇躍任地へ入る。だが、そこには人食い虎が跋扈し、新妻失踪や僧侶惨殺など、数々の難事件が待ち受けていた。さらに役所には毒殺されたはずの前知事の幽霊も……山なす怪事件に怯むことなく立ち向かう彼こそは、後世に神のごとき探偵としてその名を轟かせるディー判事、その人だった!長きにわたる判事の事件記録の劈頭を飾る名作を最新訳で贈る
    (ハヤカワオンラインあらすじより)
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    旧訳「中国黄金殺人事件」のタイトルで発行されたものの新訳。
    原題:The Chinese Gold Murders

  • 前から気になっていたディー判事シリーズ、時間軸でいちばん最初の本書から始めてみました。武闘派で男前な映画のイメージが邪魔になるかしら、と思ったけど、あまりに別人すぎて、ぜんぜん気になりませんでした。こちらの判事は落ち込んでみたり、他人のりっぱなひげにちょっと嫉妬してみたりと、おもわず「がんばれ~」と応援したくなる感じ。幽霊や人食い虎がうろつく唐代中国の雰囲気を感じさせる文体に、合理的精神にもとづく本格推理というとりあわせが素晴らしいです。虜囚として連れてこられ遊郭に売られた朝鮮の美女がからんだり、儒学の徒であるディー判事が仏教を異教と見ていたりするのも興味深い。今後がたのしみです。

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