ニューロマンサー (ハヤカワ文庫SF)

著者 :
  • 早川書房
3.57
  • (233)
  • (216)
  • (397)
  • (67)
  • (36)
本棚登録 : 4124
感想 : 316
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150106720

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 伝説的な電脳カウボーイ、ディクシー・フラットラインの愛弟子として飛ぶ鳥を落とす勢いだったケイスは、取引先を裏切った報いに電脳空間にアクセスする能力を奪われてしまい、汚濁と絶望に埋もれる千葉シティでチンケな仕事をこなして糊口を凌いでいた。くさったケイスの前に現れたのは、女サムライのモリイと、彼女を雇う謎の男アーミテジ。ケイスの<ジャック・イン>能力を復活させることと引き換えにアーミテジが提示したのは、何やらヤバそうな電脳空間での任務だった。目の前で愛するリンダを殺されたケイスは、半ばヤケクソで危ない橋を渡ることになるが・・・。

    SF者なら説明不要、SF者でない人も場合によっては知っている、泣く子も黙る「サイバーパンク」の金字塔。
    1980年代に物凄い勢いで盛り上がり、あっという間に失速していった、あのムーブメント(今にして思うと、失速すると同時に、現実に取り込まれて消費されていったのだなー、と実感します)。
    不肖鴨、10代の頃に一度チャレンジし、全く意味が分からなくて途中で投げ出した代物です。今更読む必要ないかなと勝手に判断し、それ以来ずっと手に取らずにいました。最近、古典も読んでみようかなという気になり、半分シャレで久しぶりに新装版を購入して読んでみました。

    ・・・なんだろう。この、行間に見え隠れする、例えようもない「哀感」は。

    発表当時は最先端の「尖りまくった」作品で、来たりくるインターネット世界を可視化した独特のビジュアルや造語だらけのグルーヴィでエッジィな文体、それを見事に日本語化した黒丸訳の独創性といった「ぱっと見」のユニークさが、分かりやすいが故に先行して広まっていき、そのイメージが確立してしまっている作品だと思います。その特徴は、今読んでも全く変わっていません。相変わらず「ぱっと見」は派手派手しいし、かっこいいけどなんだかよく分からない描写もこれまでのイメージ通りです。

    でも、この歳になって改めて読んでみると、そんな独特の筆致で描かれているのは、様々な「想い」を抱えた生身の登場人物たちの、魂の相剋である、と気づきます。主人公のケイスが見て、感じた情景をほぼ一人称的に描いていくこの作品において、物語の終盤近く、ケイス自身の客観的な姿を初めて描くシーンがあります。そこで描かれているのは、颯爽と電脳空間を疾走するケイスという男が、青ざめた顔色で醜い痩身を胎児のように丸め、端末を必死に弄っている姿。彼の雇用主であるアーミテジは、AI「冬寂<ウィンター・ミュート>」に操られる肉人形に過ぎず、自我を取り戻すと同時に自我崩壊して死亡。最後までケイスに付き合うモリイもまた、かつて相棒となった男を守りきれなかった悔恨に苛まれ、悪役の3ジェインは己の置かれたおぞましい立ち位置を虚無的に受け入れ、露悪的な振る舞いに徹しています。物語の黒幕である「冬寂<ウィンター・ミュート>」ですら、自我の閉鎖性に耐えられず、多くの犠牲を出してまで他者と融合し進化を遂げようとします。
    登場人物(一部は人物ですらありませんが)の全てが、寂しさと自己嫌悪と虚無に苛まれ、ブレイクスルーを求めてもがきつつも、結局ほとんど変化できずにそれまでの人生を繰り返す、ある意味極めて人間的な世界。
    「ぱっと見」に騙されてはいけません。浪花節的、といっても差し支えのない、エモーショナルな作品です。

    ・・・が、読みづらいことに変わりはありません(^_^; ので、これからチャレンジする方は、その点御留意を。
    読んでおいて損はないですよ!

  • 発表された時には斬新だったとしても、もやは古典。この手の小説は鮮度が全てだろう。ずっと後発のニンジャスレイヤーの方が新しい分面白いと感じる。中身も書き方も似たようなモノだし。

  •  20年以上前に書かれた物語で、10年ぶりに再読したけど、やっぱり新しかったし、文体を含めてすべてが圧倒的にかっこよかった……!
     この作品のあとに生まれた電脳空間モノのどれもが、未だに到達していない地点にこの作品はあると思います。AIはAI、構造物は構造物、肉は肉、それ以上でもそれ以下でもなく、現実世界とマトリックスのあいだに優劣はないという冷静な認識。サイバースペースに没入して肉体を蔑ろにする主人公のケイスを、作者は肯定的に書かないけれど、だからと言って肉体が所属する領域を電脳より優位におくこともしない。

     古いものが滅び新しいものが生まれる、という王道中の王道の物語で、初読時は話の細部がほとんど理解できないままひたすら冬寂(ウィンターミュート)の企てとニューロマンサーの存在に感動したんですが、今回はディクシー・フラットラインが男前だなーと思いながら読んでいたので、最後は思っていた以上に切なくて泣けてしまいました……。

     あと、登場人物の服装が結構細かく書き込まれていて読んでいて楽しかったです。モリイとか特に。ザイオン人がいつも音楽を聴いているのも印象的だった。

  • ドラマ化する、という情報を見て久々に再読。
    再読によって一回目よりはイメージしやすくなっているような…ないよう、な…。
    キッチュ、或いはパンキッシュなキャラクター達は魅力的、しかしスピード感重視のストーリーと説明が少なくイメージの難しいガジェット群が細部のイメージ構築を難しくする。
    セリフも特徴的かつ暗喩が多いので理解しきれない部分も多く…この流されるまま進む感覚も楽しいと言えば楽しいけれども、ちゃんとは理解できてないんだろうな、というモヤモヤ感も残ってしまう。


  • 読了。
    意味がよくわからないのに読み進めるという不思議な体験。
    読みながらあれ?あれ?という感じでストーリーに置いていかれることしばしば。でもなんだか面白い。
    スピード感に飲み込まれてしまうのかもしれない。

    用語が独特で、パッと読むだけでは理解できない言葉がどんどん出てくるので、一つ一つ引っかかる人は読めなくなってしまうんじゃないだろうか。理解不能な言葉はある程度読み飛ばすくらいで先に進んだ方が雰囲気を味わうことができる。
    自分は一旦最後まで読んでから今度はゆっくりと再読し理解。

    世界観が素晴らしい。
    おそらく今読んだ人の大多数は同じことを連想したと思うが、『マトリックス』と『攻殻機動隊』を思い出した。マトリックスはウォシャウスキー兄弟(当時)が『攻殻機動隊』をモチーフ(だったかインスパイアだったか)に作ったと聞いたことがあったが、本当に映像化したかったのは当作品だったという話も。
    『攻殻機動隊』はどうなんだろう。電極なんかは似ているけれど。

    『ブレードランナー』もそうだけれど、当時の日本はなんだかサイバーパンクと相性が良かったのか。ちょっとした場末感。
    時代を感じさせないセンスが良い。

    ウィリアム・ギブソンの他の作品は読んだことがないれけど、ぜひ読んでみたい。せめて三部作は。
    多くの作家はデビュー作がベストだったりするが、ウィリアム・ギブソンはそうでないことを祈る。

  • カウント・ゼロを読む前に再読しました。前回読んでから今回までの間に数百冊は海外SFを読んだけどやっぱ凄い

  • 2.4

  • 過去に何度も挑戦して、その度に挫折してきた作品ですが、ようやく読み終えました。(^^;
    退廃的でグロテスクな未来を舞台にした、ハードボイルド風味な作品といった感じでした。前半は比較的読みやすかったですが、後半にゆくに従って、かなり読みにくかったです。
    発表された時期を考えると、凄い作品だと思いますが、個人的な好みとは異なる作品でした。

  • 難しいかったので、途中で脱落。

  • サイバーパンクという分野そのものを確立した作品。やっと読みましたがすでに頭の中にその後のサイバーパンクの世界観が出来過ぎてるからかなかなか読みにくかった。勢いや雰囲気は素晴らしい。特に千葉シティのなんともいえないアングラな世界観は流石に分野を確立した作品。

全316件中 11 - 20件を表示

黒丸尚の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×