象は忘れない (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (358ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151300325

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  • 「アガサ・クリスティ」の長篇ミステリー『象は忘れない(原題:Elephants Can Remember)』を読みました。

    『鳩のなかの猫』に続き「アガサ・クリスティ」作品です。

    -----story-------------
    推理作家「ミセス・オリヴァ」が名づけ親になった「シリヤ」の結婚のことで、彼女は先方の母親から奇妙な謎を押しつけられた。
    十数年前の「シリヤ」の両親の心中事件では、男が先に女を撃ったのか、あるいはその逆だったのか?
    「オリヴァ」から相談を受けた「ポアロ」は“象のように”記憶力のよい人々を訪れて、過去の真相を探る。
    -----------------------

    1972年に刊行された「エルキュール・ポアロ」シリーズ長編第32作目の作品、、、

    『カーテン』が「エルキュール・ポアロ」最後の作品ですが、『カーテン』は1943年に執筆された作品なので、実質上(執筆順)では本作が「ポアロ」最後の作品となります。

    『象は忘れない』という題名は、英語の諺「An elephant never forgets.:象は(恨みを)忘れない(そして必ず報復する)」に由来しているそうです。

     ■1. 文学者昼食会
     ■2. 象に関する最初の言及
     第一部 象
     ■3. アリスおばさんの手引き
     ■4. シリヤ
     ■5. 過去の罪は長い影をひく
     ■6. 旧友の回想
     ■7. ふたたび子供部屋に
     ■8. ミセズ・オリヴァの話
     ■9. 象探しの成果
     ■10. デズモンド
     第二部 長い影
     ■11. ギャロウェイ警視とポアロ覚え書を検討する
     ■12. シリヤ,エルキュール・ポアロに会う
     ■13. ミセズ・バートン=コックス
     ■14. ウィロビー医師
     ■15. ヘア・スタイリスト・ビューティシャン,ユージン・アンド・ローズンテル
     ■16. ミスタ・ゴビーの報告
     ■17. ポアロ出発を告げる
     ■18. 間奏曲
     ■19. マディとゼリー
     ■20. 審問廷

    十数年前に起きた心中事件の真相と、心中事件の真相を調べるため「オリヴァ婦人」に近づいた「ミセズ・バートン=コックス」の目的を、「エルキュール・ポアロ」が「オリヴァ婦人」を巧く使いながら、見事に解決する物語、、、

    ちょっともどかしい序盤の展開と、縺れて絡み合った糸がスッキリ解けるような中盤から終盤にかけての展開が、「アガサ・クリスティ」らしい作品でしたね。


    心中したとされる「シリヤ・レイヴンズクロフト」の父親「アリステア」と母親「マーガレット」には、自殺すべき動機が見当たらない… 過去の関係者から聞き取りを進めるうち、当時、「マーガレット」の一卵性双生児の姉「ドロシア」が同居しており、心中の数日前に事故死していることが判明、、、

    「ドロシア」に精神的な疾患があったことや、「マーガレット」との結婚前、「アリステア」と「ドロシア」が恋愛関係にあったことが判明… 「ポアロ」は、様々な証言から真相を推理し、真実に行き着きます。


    一卵性双生児だった「マーガレット」と「ドロシア」の容姿が酷似していたことや、「ドロシア」の過去の奇行、「マーガレット」のカツラが4つも残っていたこと等が、大きなポイントになっていましたね。


    「アリステア」も「マーガレット」も、「ドロシア」を愛していたことから起こった事件、、、

    ちょっと哀しい結末でした。


    ちなみに、、、

    「オリヴァ婦人」って、どこかで見た名前だなぁ… と思っていたら、何作か「ポアロ」と共演しているらしく、そのうち、『死者のあやまち』と『ハロウィーン・パーティ』は既読でしたね。

    どうも、「アガサ・クリスティ」本人がモデルみたいです。





    以下、主な登場人物です。

    「アリアドニ・オリヴァ」
     ポアロとは旧知の女流推理作家

    「ミス・リヴィングストン」
     オリヴァの秘書

    「ミセズ・バートン=コックス」
     未亡人

    「デズモンド」
     バートンの養子

    「シリヤ・レイヴンズクロフト」
     オリヴァの名付け子

    「アリステア・レイヴンズクロフト」
     シリヤの父

    「マーガレット・レイヴンズクロフト」
     シリヤの母

    「ドロシア・ジャロー」
     シリヤの伯母

    「マディ・ルーセル」
     シリヤの家庭教師

    「ゼリー・モーウラ」
     シリヤの家庭教師

    「ジュリア・カーステアズ」
     オリヴァの友人

    「ミセズ・マッチャム」
     オリヴァの友人

    「ミセズ・マーリーン」
     オリヴァの友人

    「ウィロビー」
     医師

    「ミセズ・ローズンテル」
     美容院

    「ミスタ・ゴビー」
     情報屋

    「ギャロウェイ」
     元警視

    「スペンス」
     ポアロとは旧知の元警視

    「エルキュール・ポアロ」
     私立探偵

  • オリヴァ夫人が名付け親になった娘が
    交際している男性と結婚を考えているらしいと、
    男性の母親から聞かされた。
    そして、一つの疑問も聞かされる。
     「昔、娘の良心がピストルで心中したと報道されたが、
      夫が先に妻を撃ったのか?
      それとも、
      妻が先に夫を撃ったのか?」
    オリヴァ夫人と、夫人から相談を受けたポアロは
    かつての事件の関係者を訪ね、当時のことを
    聞いて回ることにした。
    といった流れの作品。

    ポアロものではありますが、
    扱われるのは、はるか昔の事件で、
     これまでもポアロが事件を調査するのは
      真相を明らかにする
     ためであった。
     しかし、明らかになった真相は告げられるべきか?
    がテーマになった作品です。
    このようなテーマを扱った物語としては、
    楽しく読める作品だと思います。

    ただし、
     因縁のある双子
     眼と耳の悪い使用人
     カツラ
    などが出てきて、
    真相の提示も、ポアロが推理により語るのではなく、
    「実はあのとき現場に居ました」という人物が
    登場して話すのも、
    ミステリとしては・・・です(笑)

  • 過去の事件を探る系。
    ホント、何でこんなこと推理できるの?
    さすが名探偵。

  • 昔の事件を蒸し返すシリーズ。もちろん事件の血縁者にとってはいつまでも問題になることではあるけれど。今回も事件の血縁者の結婚問題から蒸し返すこととなる。いろいろ昔のことを知っている人に話を聞くが、結局ある一人の人物がキーですべてを知っていたのでは。もっとも事件の話はもの悲しい。

  • ポワロが、親友の推理作家の名づけ子にまつわる昔の事件の謎を解くという話。

    事件の周囲の人々の記憶を解きほぐしながら推理していくのだが、事件自体は新たに起きることはないため全体的にストーリーはゆっくりと進む。真相も中盤で読み取れるなど謎解きという面では物足りないが、記憶の断片同士を読みながらつなぎ合わせていくのは新鮮で楽しめた。

  • 今起きた事件ではなく過去の事件の真相を、ポワロの灰色の脳細胞を使って解いていく。結末は驚くものではなかったが、オリヴァ夫人の働きぶりはおもしろかった。

  • 図書館で。
    英語のイディオムなんだろうなぁとは思うけど象が記憶力が良いというのはちょっと面白い言い方だなぁ。確かに長生きは長生きだと思うけど。

    それにしても精神疾患が先天的な遺伝によるものと随分考えられていたんだろうなぁ。でも母も伯母も血筋から言ったらそう変わらない気がするんだけどそこは良いんだろうか?(しかも双子だし)
    人のうわさが大抵役に立たない割に何割か真実も含んでいる、というのが面白かったです。私は又、イヤミな婦人の実子が被害者だったのかとか穿った事考えてましたよ。

  • ポアロとオリヴァが、過去の出来事を忘れない"象"を探し出して聴き取り調査を行い、過去の事件の真相を追求する話。
    私は普段、ミステリーを読んでいて、ほとんど真相がわからないのだが、この作品に関しては、マーガレットとドロシアの関係がわかった時点である疑いを持ち、それ以降、それを補強してくれる事実が次々と出てきたので、最終章の手前では真相の大部分を予想できていた。
    ヒントがわかりやすく、真相が予想しやすい作品ではないだろうか。
    事件の背景にあるもの、時間的拡がり、人物配置、真相のまとまりなど、よくできた作品だと思う。

  • 『五匹の子豚』や『杉の柩』と同じ過去の事件の真相を明らかにする話で関係者に昔の話を聞いていくのですが、結局のところ全てを知る人を探し出してみんなの前で語って貰う流れなので、度肝を抜くようなトリックもなければロジカルな謎解きもありません。
    ただ、真相が明らかになった後のポアロとオリヴァ夫人の台詞が印象的で、なかなか味わい深い作品になっていると思います。

  • 今となってはかなり陳腐なトリックで、正直言ってあのオチにはがっかりした。
    でも結末の、あの切ない人間模様はすぐれた文学の香りが漂い、読後感はとてもよい。満足。

    やっぱ僕はマープルよりポアロが好きだなあ。

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