ヘラクレスの冒険 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (568ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151300608

感想・レビュー・書評

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  • 多少こじつけとも感じられるが、ヘラクレスの12の難行になぞらえた12の事件。
    ポアロの頭脳的策略や、ポアロのヒューマニズムを感じさせる心にくい解決手法が味わえる作品集。
    人生相談や身の上相談、教訓話といった、ポアロよりもパーカー・パインが登場した方がふさわしいと感じる話が多いが、楽しめた。
    特に、予想外の真相に驚かされる「ステュムパロスの鳥」と「クレタ島の雄牛」、ポアロがトリックを仕掛ける「アウゲイアス王の大牛舎」が面白い。

    「ネメアの谷のライオン」
    人間の認知機能の限界をうまく扱っている。
    「レルネーのヒドラ」
    事件関係者の聴き取り調査でポアロは違和感を感じ、犯人に気付く。
    「アルカディアの鹿」
    愛する人を探してほしいという、雲をつかむような青年の依頼をかなえるために奮闘するポアロ。愛する人は意外なところに。
    「エルマントスのイノシシ 」
    凶悪な殺人犯と一緒に雪の山頂ホテルに閉じ込められたポアロ。
    誰がその凶悪犯か?
    「アウゲイアス王の大牛舎」
    ポアロの策略が鮮やかに決まり、政界のスキャンダルを見事解決。
    「ステュムパロスの鳥」
    ステュムパロスの鳥とは誰のことか?
    予想外の真相に驚いた。
    「クレタ島の雄牛」
    狂人の血統とは、そのことだったのか。
    「ディオメーデスの馬」
    麻薬を扱っている影の人物とは?
    「ヒッポリュトスの帯」
    名画盗難事件と女学生の失踪事件とのつながりの謎。
    絵がどのように処理されたのか、良くわからなかった。
    「ゲリュオンの牛たち」
    ミス・カーナビが再び登場し、新興宗教の教祖を相手に活躍。
    「ヘスペリスたちのリンゴ」
    酒盃を取り戻したポアロが、依頼者に要求したこととは?
    「ケルベロスの捕獲」
    麻薬の意外な隠し場所。

  • 新訳が嫌いなので星下げ。
    最初であんたとか言ってるのが汚くていやだな。
    昔旧訳を読んだ時、ギリシャ神話にもはまっていて
    いちいち照らし合わせては喜んでた頃を思い出す。
    ポアロかわいい。
    20年前にはわからなかった味わい方をして、
    次の20年がまた楽しみ。

  • 「あまりにも不幸だったため、幸福とはなんであるかを忘れてしまったんです。自分が不幸であることを知らないほど不幸なんですよ」院長はやさしくいった。「ああ、お金持ちなんですのね……」ポアロはなにもいわなかった。つけくわえるべきことがなにもないのを知っていたからだ。(504)

  • 引退を決意したポアロが最後に、自分の名前がヘラクレスなことにあやかり、ヘラクレスの苦行になぞらえて12の事件に挑む短編連作。

    好みの問題だと思います。
    いろいろな事件がありました。
    個人的には、視点がほとんどポアロでなく、最後にすっとでてくるスチュムパロスの鳥と、ちょっとはっとさせられたアルカディアの鹿ご面白かったです。

    全体通して麻薬が強い印象に残りました。
    この頃からなのかな?麻薬の犯罪がでてきたのは。麻薬だけは全否定するポアロが印象的でした。

    短編なんで読みやすいです。

  • 何度読んでもおもしろい。新訳のよさは、よみやすいこと。「エルキュール」は「ヘラクレス」のこと。自負心の塊ポワロの偉業の数々。伝説とかシンボルとからんでいて、ひとつひとつの短編がおもしろい。時代特有の目線があるのも、クリスティーのミステリーならでは。

  • 2014年9月22日(月)、読了。

  • ヘラクレスの10個の難業(実際は12個)に準えた事件をポアロが選んで解いていく短編集。
    短編だがどんでん返し(単に鈍いだけかもしれないけど)があったりして、長編にはない面白さがあったと思う。

    ギリシャ神話を昔少し読んでいたため、クリスティがユーモアを織り混ぜたのでろう部分に、気付けたときちょっと嬉しい(笑)
    ギリシャ神話を調べながら読むと『この難業がクリスティにかかるとどうなるの?』みたいな見方ができて、また面白いかも。

    それにしても、ポアロさんは負けず嫌いなおじ様ですね(笑)まぁ、それも魅力ですが…

  • 短編集。ポアロが各地を飛び回って事件解決しています。クリスティのエッセンスがつまってて楽しかった。

  • 隠居生活に入ろうとするポアロが友人に唆されて神話にちなんだ事件に挑む、というお話。
    新種のカボチャの研究をしようもくろむポアロまじ可愛い。
    短編でどれも軽めのミステリー。さくさく読める。
    冒頭の友人の会話、名前負けした人達のことを話題にしてるんだけど
    よけいなお世話!ってぐらいはっちゃけててここのやりとりが一番楽しかった。

  • 軽みがあって、余裕があって、遊び心にあふれてて……。すばらしい短編集ですね。
    ヘラクレスの冒険譚とエルキュールの探偵譚、二つの様式美を交叉させる、この「粋」を見よ!

    こういう場合、殺人なんか起こらない方がいいんですよね。「ネメアの谷のライオン」は犬の誘拐事件、「ヒッポリュトスの帯」はルーベンス盗難事件と女学生消失事件。閑雅な雰囲気があって楽しい。恐喝が起きる「ステュムパロスの鳥」の舞台はヘルツォスロヴァキアです。おや、どこかで聞いたことがあるような……。
    以前読んだときはなんとも思わなかった「ヘスペリスたちのりんご」ですが、今回はなかなか胸にしみてきました。読後感は意外とハーリ・クィンものに近い。でも一編だけ選ぶなら「アルカディアの鹿」。ポアロおじさんが淡い恋物語を成就させてくれます。

    旧版は高橋豊さんの訳者あとがき。三ページ強で<ヘラクレス十二の難業>のあらすじを説明します。これを読むと、神話とミステリがどういう風に対応しているのかが分かる。読者へのサービス精神にあふれています。
    新版は東理夫さんの解説。クリスティーは大人になってから読むべきだとかポアロの潔癖症は異常だとかいう雑談はたいして面白くない。子供のころ読んでも、自分にはまだ分からない「何か」がある、ということは感じとれる。その「何か」を感じるというのもひとつの体験です。クリスティーは大人にも子供にも楽しめるからすばらしいのだと、私は思います。ギリシア神話の説明はわずか五行。
    旧版の勝ちです。

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著者プロフィール

1890年、英国、デボン州生まれ。本名アガサ・メアリ・クラリッサ・ミラー。別名メアリ・ウェストマコット、アガサ・クリスティ・マローワン。1920年、アガサ・クリスティ名義で書いたエルキュール・ポアロ物の第一作「スタイルズ荘の怪事件」で作家デビュー。以後、長編ミステリ66冊、短編ミステリ156本、戯曲15本、ノンフィクションなど4冊、メアリ・ウェストマコット名義の普通小説6冊を上梓し、幅広い分野で長きに亘って活躍した。76年死去。

「2018年 『十人の小さなインディアン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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