聞いてないとは言わせない (ハヤカワ・ミステリ文庫)

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制作 : 田村義進 
  • 早川書房 (2008年6月6日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (289ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151777516

聞いてないとは言わせない (ハヤカワ・ミステリ文庫)の感想・レビュー・書評

  • 世評は高いようだが、どこといって魅力を感じなかった犯罪小説。とはいえ、テンポ良く最後まで一気に読ませてしまうのだから、筆力は確かにあるのだろう。

    謎に満ちた若い男が、人里を離れて身を隠すように農業を営む40代の女を訪ねる。数週間、仕事を手伝う内に、当然のように二人は体の関係を持つ。男は、ある目的を持って女の素性を調べていたのだが、それに女が気付いた瞬間、見知らぬ男二人が突然現れ、女に向かって発砲する。

    以降、強奪した金を巡る犯罪者同士の騙し合いが、農場の女を中心として展開される。平凡な女が、実はプロの犯罪者であったという設定はいいのだが、単に大口を叩くだけで、その玄人ぶりが伝わらない。これは、他の登場人物にも言えることで、元の仲間も、女に味方する若い男も、ことごとく無能で格好良くない。若い男の哀れな結末も、女の自意識過剰な台詞も、さっぱり情感が流れない。

    スタイルだけのクライムノベル。

  • 帯に150分間一気読み、と書いてあります。確かに行きの電車で読み終わりました。うん、確かに面白い。

    なんというのか。登場人物に感情移入することもなく、好き・嫌いもなくただただ物語の進んで行くスピードに圧倒されるというのか。この加速感は確かに途中で止めるのが嫌になりますねえ~
    自分的には最後まで犬の面倒をきちんと見ていたところに好感触。コレが最初のうちに捨てられていたら評価が下がったかもしれない。

    まあでも登場人物に好き・嫌いがあったわけではないのですが。まあ何かあるだろうと思っていた主人公なのでやっぱりな、という感覚はありましたけどね。
    それにしても危険な女です、うん。

  • 農場で働き始めた青年は年が自分の2倍の農場主の女性と恋仲になるが、そこに銃を持った男が現れて…。

    甘いのは最初だけで、あとは撃ったり撃たれたり死んだり。
    それがまた、非情に簡単に起こってしまう。スピーディーと言えば聞こえはいいけど、単に書き込み不足なだけ感じられる。
    確かに一気呵成に読めるけど、それは引っかかるものが何もないから。そしてあとには何も残らない。
    暇つぶしにはなるかもしれないけれど、暇しか潰せないなあ。
    ラストもとってつけたような印象。
    この作者、L・J・ウォッシュバーンの旦那さんらしいんだけど、奥さんの書くものの方がまだマシだと思う。…奥さんの書いたものもたいがいだけどw

  • 「聞いてないとは言わせない。私は危険な女」最後のこの題名の意味がわかってくる。

  •  原題のダスト・デヴィルズとは、アメリカ西部で頻発する荒野の小さなつむじ風。一瞬空に向けて砂塵が舞い上がり、竜巻のように天に向けて立ち上がったかと思うと、あっという間に、崩れて消え去ってしまう、とても儚い自然現象のことである。こうした原題であるが、邦題は「聞いてないとは言わせない」。

     主人公の青年は、自分を捨てた母への復讐の旅に出るが、母と思われた女性は、母に成り済ましていた銀行強盗一味の中年女性だった。青年は、彼女の元で働き手として雇われるうちに恋に落ちるが、かつての強盗団仲間が彼女の命を狙い始めた途端、二人は逃亡の旅に出る。

     そこからは、まるでタランティーノの『レザボア・ドッグス』のようだし、ジョン・リドリーの『ネヴァダの犬たち』(で、わからなければオリバー・ストーン監督、ショーン・ペン、ジェニファー・ロペス主演の映画『Uターン』)のようでもある。いずれにせよ、銀行強盗、そして裏切りと追撃、あの悪党パーカー・シリーズが果てしなく繰り返してきたような犯罪者たち同士のせめぎ合いが全編にスピード感を与えながら疾走してゆく。

     ある意味、スタンダードなフィルム・ノワールのようでもある。いわばB級のやすっぽいアクションでありながら、先の読めないサバイバル・ゲームとして、アメリカ中西部の大自然が絶好の舞台を用意している。コーマック・マッカーシーの『地と暴力の国』の世界であり、荒野のハードボイルド作家ジェイムズ・クラムリーのミロとシュグルーたちが酔っ払いながらキャデラックを飛ばす世界であり、テルマとルイーズが主婦業におさらばして拳銃を片手に突っ切ってゆく砂漠の世界でもある。

     アメリカ小説が羨ましい、と感じるのは、こうした中西部の自然をバックに、ガンを持った男や女が、騙し合い、撃ち合い、乾いた血を陽光に曝しながら、破滅に向けて走り抜くことができる自由度の高い世界性の部分である。死体はなかなか発見されず、逃げゆく場所はいくらでもあるように見え、それでいて出し抜かれる。

     この広漠さと、それでいて命をハンティングし合う、この肉食獣たちのせめぎ合いは、やはり日本離れしており、どこまでもアメリカ的だ。そんなスタンダードで、どこと言って特徴のないウェスタンのような物語だが、それでもひねりの聞いたビターテイストが本書には満ちている。とりわけラストのツイストには、がつんとやられる。

     作者は、25年の作家歴を持ちながら、本邦初訳。これだけどっしりとしたエンターテインメントを供給できる作家である。日本出版界、こうした作家を継続的に読者にしっかりとサプライすべし!

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