黒い迷宮: ルーシー・ブラックマン事件15年目の真実

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152095343

感想・レビュー・書評

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  • 著者はイギリス人だが、日本の事もよく分かっており、綿密な調査の元に書かれている。
    事件自体は当時ワイドショーで大騒動になっていたはずだが、あまり記憶に残っていない。
    著者自身のあとがきが感慨深い。

  • ☆うーん。どうもよくわからない事件だな。

  • 15年前のイギリス人女性殺人事件を追うルポ。家族関係、メディア、警察、水商売、ドラッグ、犯人像…等々英国人でありながら日本で活動する著者だからこそなし得た取材により事件の様相が生々しく浮かび上がる迫真のドキュメント。

  • おぼろげに当時の報道を覚えているけど、こんなことが起きていたのか。アマンドは変わらず交差点にあるけど、イギリスの白人女性がhosutesuとして働くような場所はもう六本木にはないんじゃないかと思う。街はそこに生きる人々を混ぜ合わせた速度で成長していて(成長じゃない、ただの変化かな)過去の小さな一点なんかはもうとっくに押し流されていそうだ。

  • 2000年に起こったルーシー・ブラックマンさんの失踪事件。失踪当時から事件を追い続けていた「ザ・タイムズ」の東京支局長・リチャード・ロイド・パリーが10年越しの取材を経て書いた犯罪ノンフィクション。

    ルーシーさんの親族はもちろん、友人、知人、東京のバーでのお客、そして犯人として逮捕された織原城二とその親族など…ルーシー事件に関わる全ての人々に丹念にインタビューし、構成している。

    この著者にしかできない構成力と内容は、読んでいくうちに引き込まれて黒い闇を覗き込んでしまったような恐ろしさを感じてしまった。

    そして衝撃的な裁判の行方。
    無期懲役にして無罪。
    そして織原の控訴と上告。

    ルーシーさんの父親が織原から受け取った「見舞金」。
    裁判後のルーシーさんの家族の思い。
    事件に関わった人々のその後。
    裁判が終わった後もその闇は深いということをこの本を読んで改めて知った。

    読み終わった後に色々な意味で「後味の悪い、だけどそれが現実」という、残酷で衝撃的な印象が強く残っている。

    ここまでの事件にどっぷりつかって取材しながら常にフラットに事件を見ようとする著者のすごさを感じる一冊。

  • 2017年9月13日読了

  • 「日本の犯罪率の低さの本当の理由が、警察の管理能力に起因するものではなく、国民のおかげであることはあまりに明らかだ。警察の能力が高いからではなく、日本人は常に法を守り、互いに敬い、暴力を忌み嫌うのだ。」

  • ◆英ジャーナリズム発、日本論on性犯罪◆

    ●日本のメディアと警察組織と犯罪・事件の課題。
    イギリスのメディアと家族生活の課題。
    それらがコンパクトにまとめられている 。

    個人的におもしろいのは、
    イギリス人ジャーナリストの目を通して描かれる
    日本の社会の風俗と解釈である。

    日本の裁判制度や警察機構に対し、
    想像力の欠如した犯罪と向き合う組織だと喝破。
    「お巡りさん」と「ビーポ君」にイメージされる
    親しみやすい権力組織としての警察機構。

    外国人の体験する”ガリバー体験”と
    日本の遠慮と礼儀正しさという文化。

    ●とりわけ、在日朝鮮人社会と
    水商売の実態と日本の性文化の記述は
    興味深く読ませてもらった。

    著者が参考にしている文化人類学者アン・アリスンの博士論文「夜の仕事-東京のホステスクラブにおける性・快楽・組織内の男らしさ」は是非読んでみたいと思った。

    世界に類をみたい、多様な性分化を産み出す
    日本の社会のありかたや、クラブオーナー 宮沢櫂の説明する外国人女性への理解と蔑視発言に日本人一般の海外女性への態度を感じ取る記述は、
    外国人ホステスに言い寄ってくる男たちのメール文面の気持ちの悪さとあいまって、独特の日本人論を表明している。

    また、在日朝鮮人という課題については、”タブー視することによる(アンタッチャブル化による)差別問題の課題”というテーマに迫っている。

    ●一方で、娘を探し出す親の側では、ブレア首相の関わりから、娘の居所を知っていると続々と登場する詐欺師たちの登場で、文化を超えた現代社会の不気味さを醸し出している。

    ●個人的に目が離せないのは、
    こうした国境と文化をまたいだ不可思議な状況のなかで、ホステスたちの暮らす住居のユニットバスなどがさりげなく説明される挿話ですらなく、ただただ状況の形容のように登場してくることだ。
    ユニットバスの排水溝には、
    濡れた髪の毛と、皮膚のカスがからみついている。
    著者は、こうした描写を、つまり細部を描くことを怠り無く文章に挿入してくる。その姿勢に傾倒してしまう。

    本書は現代社会論であり、一種の民族誌であり、
    一級のフィールドワークの書である。

    ●なお、著者自身は、この書物の意図について
    BLOGOLOSでのインタビューに答えて
    以下のように語っている。
    『(本書の目的は) 「こいつは怪物だ」「こいつは悪人だ」とレッテル貼りをすることではないからです。
    そういってしまうと、そこでその会話、ストーリーは終わってしまう。そうでなく、「どうしてそういう人物が生まれたのか」と考えていく作業を、私はこの本を通じて進めていったと思っていますし、「何がその人をそうさせたのか」ということに重点を置いて執筆しています。』

  • 知ってるようで知らない事件。
    人が死んでも自分の欲求を止められない恐ろしさ。
    イギリス人のCAだから動いたという警察の差別意識。
    明るみに出ない事件はもっともっと多いはずだと思うと、心底ウンザリする。

  • 聞いたことがある程度で当時の記憶はない事件。
    2000年頃ってこんな感じだったんだなぁということも思いながら読みました。

    日本の警察や日本についての文章があぁ確かに!と思うことばかりでした。

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著者プロフィール

英『ザ・タイムズ』紙アジア編集長および東京支局長。1969年生、英マージーサイド州出身。オックスフォード大学卒業後、1995年に『インディペンデント』紙の東京特派員として来日。2002年より『ザ・タイムズ』紙に属し、東京を拠点に日本、朝鮮半島、東南アジアを担当。アフガニスタン、イラク、コソボ、マケドニアなど27カ国・地域を取材し、イラク戦争、北朝鮮危機、タイやミャンマーの政変を報じる。著書に、『狂気の時代』(みすず書房、2021年)のほか、日本を舞台にしたノンフィクション『黒い迷宮』(2015年)、『津波の霊たち』(2018年。ともにハヤカワ・ノンフィクション文庫)がある。『津波の霊たち』で2018年ラスボーンズ・フォリオ賞、2019年度日本記者クラブ賞特別賞を受賞。

「2021年 『狂気の時代』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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