NOISE 上: 組織はなぜ判断を誤るのか?

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152100672

作品紹介・あらすじ

保険料の見積りや企業の人事評価、また医師の診断や裁判など、均一な判断を下すことが前提とされる組織において判断のばらつき(ノイズ)が生じるのはなぜか? フェアな社会を実現するために、行動経済学の第一人者たちが真に合理的な意思決定のあり方を考える

感想・レビュー・書評

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  • 【感想】
    本書は行動経済学の世界的ベストセラーである「ファスト&スロー」の著者、ダニエル・カーネマンによって書かれた意思決定論である。「ヒューリスティクス」や「システム1」など、ファスト&スローに出てきた概念も登場するため、事実上の続編といってもよいかもしれない。

    本書のテーマは「ノイズ」という概念だ。ノイズとは何かを判断する際、誤謬や一貫性の欠けにより、不規則に目標からズレてしまうことを指す。いわゆる「ばらつき」である。これに対して、一定の規則性をもって目標からズレていることを「バイアス」と呼ぶ。従来の組織論の中で言及されていたのはもっぱら「バイアス」であり、例えば人種や性別といった無関係な要素を不当に連関して評価しがちであることが問題視されていた。これに比べて、「ノイズ」は「バイアス」と同程度に重要なファクターであるが、あまり取り上げられていない。

    読者の中には、「専門家が何百回も下す判断の中にそんなに間違いが含まれているのか?」や、「裁量の余地があまり残されてない分野(法に基づく裁判など)について、あらためて問題提起するほどノイズは発生しているのか?」という疑問を持つ人がいるかもしれない。だが、これは間違いなく存在するし、しかも相当に深刻だ。

    例えば、民間の保険会社にノイズ検査を実施したケース。何人かの保険の引受担当者と査定担当者に、同一のケースの保険申込みの査定をしてもらった。
    結果、引受担当者間の見積額の格差の中央値は55%だった。一人が保険料9,500ドルと見積もったとすると、もう一人は1万6,700ドルと見積もったことになる。査定担当者のほうは、査定額の格差の中央値は43%だった。この道何十年のベテラン同士が比較した結果が「保険料1.5倍」なのだから、もはやヒューマンエラーでは済まされないレベルだ。

    また、ノイズにも複数の種類があり、レベルノイズ(判断者ごとの判断の平均的なレベルのばらつき)とパターンノイズ(特定のケースにおける判断者の反応のばらつき)が存在する。レベルノイズの二乗とパターンノイズの二乗を合計するとシステムノイズの二乗に等しくなる。これらももちろん、保険や法律といった分野にたくさん存在している。
    例えば保釈審査。最も寛大な裁判官(保釈承認率の高いほうから上位20%)は被告の83%の保釈を認めたが、最も厳格な裁判官(同下位20%)は61%にとどまった。同じ被告に対しても、裁判官の間で判断のばらつきが大きく、ある判事がリスクは低いとみなした被告を、おおむね寛大な別の判事がハイリスクだと考えたりする。これはあきらかにパターンノイズが存在する証拠だ。
    よりくわしい分析を行ったところ、判事間の判断のちがいの67%は事案に由来し、33%はシステムノイズだった。システムノイズにはレベルノイズ(裁判官固有の寛大さ加減)も含まれるものの、79%はパターンノイズであることが判明している。
    こうした「裁判官自身の価値基準」+「事案ごとのブレ」に加えて、「機会ノイズ」という要因も、エラーを生じさせる。機会ノイズとは単に「何となくブレる」ということだ。信じられないかもしれないが、裁判官は贔屓の地元チームが勝った次の日のほうが、負けた次の日よりも寛大な判決を下しやすいという。一見どうでもいいような要因(晴れの日、空腹時、誕生日)も、人間の判断を歪める原因になる。

    こう見ていくと、もはや人間に判断させないほうがマシなんじゃないかと思うかもしれないが、実はその通りなのだ。機械を使い、多少いい加減なモデルを組み立てて自動実行したほうが、人間が熟慮して下した判断よりもよい成績を残すのだ。
    機械的手法のうち、倹約モデルと呼ばれる超シンプルな予測モデル(予測変数を2個しか使わないモデル)であっても、機械学習を使った高度な予測モデルであっても、人間の専門家の判断より正確だったことが、実験で分かっている。予測変数にあなた独自の解釈をプラスしても、予測精度が高くなるどころか悪化するという。残酷なことに、「人間らしい判断」が実際の選好に与えるのは悪影響だけであり、たまにいい結果をもたらしても――例えばとある外れ値を見つけることができたとしても――それは誤差の範囲に吸収されてしまうのだ。
    ―――――――――――――――――――――――
    以上がおおまかな本書のまとめである。
    読む前は、テーマがテーマだけに複雑な本だと思っていたが、実際には非常にシンプルで、具体例も多く、内容がスッと頭に入ってきた。行動経済学の本だが数式やグラフは全くないため、初学者でも理解しやすいのが嬉しい。
    上巻と下巻に分かれているが、上巻は「あらゆる判断のもとにはノイズが発生する」ことの説明に終始し、下巻で「ノイズを考慮してよりよく判断するためにはどうしたらいいか」という解決策を提示しているようだ。上巻だけでも非常に面白かったので、引き続き下巻も読み進めてみたい。

    ―――――――――――――――――――――――
    【まとめ】
    0 まえがき
    バイアス…一定の規則性をもって目標(基準点)からズレていること。
    ノイズ…不規則に目標(基準点)からズレていること。いわゆる「ばらつき」。

    判断のエラーを理解するには、バイアスとノイズの両方を理解することが必要になるし、ときにはノイズのほうが重大な問題であることもめずらしくない。ところがヒューマンエラーを研究者が論じるときも、公的機関や企業が問題にするときも、ノイズはほとんど意識されない。いつも主役はバイアスである。


    1 判断あるところにノイズあり
    ともに前科のない二人の男性が偽造小切手の現金化で有罪になった。金額は、一人は58.40ドル、もう一人は35.20ドルである。下された量刑は、前者は懲役15年、後者は30日だった。法律というルールに基づいて判断を下す職業であっても、明らかに乖離している。
    1974年に連邦裁判所判事のフランケルが中心になって行ったノイズの実態調査では、架空の事案を数種類用意し、さまざまな地方の裁判官50人に各事案の被告人の量刑を決定するよう求めた。その結果わかったのは「判断が一致することのほうがめずらしい」ということであり、量刑のばらつきは「度肝を抜かれるほどだった」。たとえばヘロインの売人の量刑は懲役1年から10年の間でばらつきがあった。銀行強盗は5年から18年である。恐喝では、最も軽くて懲役3年罰金なし、最も重いと懲役20年プラス6万5,000ドルの罰金だった。とりわけ驚愕させられるのは、20件中16件では、そもそも刑務所に送るべきかどうかで意見が一致しなかったことである。

    民間の保険会社にも同様のノイズ検査を実施した。何人かの保険の引受担当者と査定担当者に、同一のケースの保険申込みの査定をしてもらったのだ。
    結果、引受担当者間の見積額の格差の中央値は55%だった。一人が保険料9,500ドルと見積もったとすると、もう一人は1万6,700ドルと見積もったことになる。査定担当者のほうは、査定額の格差の中央値は43%だった。しかもこれらの数字はあくまで中央値だった。つまり半分のケースでは、格差はもっと大きかったのだ。

    理想的にはつねに同一であるべき判断に、不可避的に入り込む好ましくないばらつきを「システムノイズ」という。システムノイズはシステムに一貫性や統一性が欠けているために生じ、不正義の蔓延、金銭的コストの増大をはじめ、さまざまなエラーを引き起こす。
    システムノイズの決定的な特徴は、望ましくないことである。好みやアイデアといった要素にはばらつきや多様性は歓迎すべきものだ。一方で、システムノイズはシステムの問題であり組織の問題であって、市場の問題ではない。同等の資格や知識を持つ専門家集団の判断にばらつきがあるのは、大問題である。そのようなノイズの存在は、システム自体の信頼性を著しく傷つける。


    2 ノイズを測るものさし
    本書では判断を評価するにあたり、実際の結果と照合する方法と、判断に至るまでのプロセスの質を評価する方法の二つに焦点を合わせる。検証可能な判断の場合、同じケースであっても、評価方法次第で結論がちがってくる可能性がある点に注意されたい。有能で注意深いエコノミストが精度の高いツールとテクニックを使って予測しても、ある四半期についてインフレ予想をまちがうことは大いにありうる。逆に一つの四半期だけなら、チンパンジーのダーツ投げで偶然に当たることだってありうるのだ。
    じつに間の悪いこの問題を解決するために、意思決定の研究者は、一回限りのケースでは結果ではなくプロセスに注目せよとアドバイスする。だが現実にはプロセスが重視されることはあまりない。プロフェッショナルが下す判断の場合、自分の下した判断が検証可能な結果にどれだけ近かったかが重視される。
    要するに検証可能な判断の場合、大方の人が予測を結果にぴたりと的中させたいと思っている。そして実際にやっているのは、検証可能かどうかにかかわらず、自分の判断が証拠や事実とそこそこ一致したときに内から発信される「もうよし!」のシグナルを聞くことなのである。しかしほんとうにやらなければならないのは、そんなことではない。規範的に言うなら、類似のケース全体について精度の高い判断が下せるような判断プロセスを確立することである。


    3 誤差方程式
    バイアスとノイズが誤差に果たす役割は、誤差方程式と呼ばれる二つの方程式で表すことができる。第一の式は、単独の計測値で表された誤差をバイアス(平均誤差)とノイズによる誤差に分解する。
    ●誤差(単独の計測値)=バイアス+ノイズ

    第二の方程式は、平均二乗誤差(MSE)――個々の測定誤差の二乗を平均した値――を構成要素に分解したものである。
    ●平均二乗誤差(MSE)=バイアスの二乗+ノイズの二乗

    この式は、「バイアスとノイズのどちらを優先して減らすべきか?」という疑問に答えを与えてくれる。互いは独立した要素であり、どちらを減らしても全誤差に対する寄与度は(互いの重みが等しいとすれば)同じである。ただし、バイアスがノイズより大きくても、全誤差への寄与度はノイズと同程度に収まる。通常、基準値を大幅に外れるバイアスはそうそうないと考えれば、ノイズのほうがバイアスより大きい状況があっても不思議ではない。

    誤差方程式と、そこから導き出した結論は、全誤差の計測値としてMSEを使うことが前提になっている。このルールは、純粋な予測的判断には適切に当てはまる。純粋な予測的判断とは、予想や見積もりなど、できるだけ正確(バイアスを最小化)且つばらつきなく(ノイズを最小化)真の値に近づけることを目的とするものをいう。
    ただし誤差方程式は、評価的判断には当てはまらない。なぜなら、真の値に左右される誤差というものが、評価的判断にはなじまないからだ。そのうえ、仮に誤差を特定できたとしても、そのコストはまずもって対称ではないし、二乗に正確に比例するということもない。


    4 ノイズの種類
    ・レベルノイズ…判断者ごとの判断の平均的なレベルのばらつき(たとえば厳しめの裁判官と甘めの裁判官)。
    ・パターンノイズ…特定のケースにおける判断者の反応のばらつき(再犯者に厳しい、共犯者に甘い、など)。
    ・機会ノイズ…一過性の原因による判断のばらつき(今日はたまたま天気がよかった、判断者の虫の居所が悪かった、など)。

    ●システムノイズの二乗=レベルノイズの二乗+パターンノイズの二乗

    量刑調査では、レベルノイズとパターンノイズはおおむね等しいことがわかった。だがパターンノイズには一過性の原因による機会ノイズが含まれている可能性が高く、機会ノイズは偶発的なランダムエラーとして扱う必要がある。


    5 人間の判断は正確か?
    臨床的判断…患者の訴える症状や、医師が自分の感覚などに基づいて判断すること。要は人間的判断のこと。

    臨床的予測と機械的予測の両方が可能な場合、果たして人間による判断は単純な数式にまさるのか?
    1954年にミネソタ大学の心理学教授ポール・ミールがある研究結果を発表した。ミールは、学業成績や精神科の診断などに関する臨床的予測と統計的予測を対比した20の調査報告を分析・評価し、一般に単純な機械的ルールのほうが人間の判断よりすぐれていると結論を下したのである。

    予測的判断には妥当性の錯覚がついて回る。というのも予測は二段階に分けて行われるのに、人間はその二つをごちゃまぜにしているからだ。第一段階では与えられた情報に基づいて現時点の評価を行い、第二段階で将来の結果を予測する。人間が自信たっぷりにやっているのは、たいていの場合、二人の候補のうちAのほうが現在よさそうに見えるという評価である。にもかかわらず、Aのほうが将来もよいと言ってしまう。だが、それとこれとは別物だ。
    一方、機械的予測(線形回帰モデル)では、同一のルールが全てのケースに適用され、予め決められた最適の重みがつけられる。

    では、何故人間の判断のほうが機械に劣ってしまうのか。

    人間の決定的な弱点の一つは、ノイズが多いことである。
    大学院の成果を予測するという研究がある。まず98人の実験参加者は、大学院生90人の10項目の評価に基づき、将来の成績平均点(GPA)を予測した。次にこの予測に基づいて、実験主催者が各参加者の判断の線形回帰モデルを構築する。その後、このモデルで予測を行い、本人の予測と照合する。つまり、「あなたの予測をもとに粗雑なモデルをつくり、あなたの予測の代わりをさせた」のだ。
    すると、98人の実験参加者全員について、モデルのほうが予測精度が高かったという結果が出た。数十年後に50年分の研究報告の評価が行われたが、このときもまた判断者モデルの予測精度は、そのもとになった本人を上回ることが確認された。

    なぜこんなことが起こるかというと、人間の判断にはパターンノイズや恣意的なエラーが常に介入しており、それを排したモデルのほうが正確だったからである。もっと言えば、もし判断において複雑で微妙で「人間的」なルールを用いていたとしても、それはノイズの悪しき影響を埋めるには至らないということだ。複雑で微妙なルールに利点があるとしても、それはあっという間に誤差に飲み込まれてしまう。

    また、膨大な量のデータが存在すると、高度なAIは予測に有効なパターンをすぐさま見つけ出し、単純なモデルを上回る予測精度を示す。このようなAIモデルは、単にノイズがないだけでなく、多くの情報を活用する能力(明らかな外れ値を検出するなど)の点でも人間より優位に立つ。


    6 ヒューリスティクス
    ヒューリスティクス…人間は困難な質問に直面したとき、簡単な質問に便宜的に置き換えて答えを出すこと。

    ヒューリスティクスを起動させるのは、だいたいにおいて速い直感的思考の「システム1」である。システム1はとても役に立つし、まあまあ適切な答えをひねり出すことができる。だがときに、次のようなバイアスを生じさせることもある。
    ・置き換え…難しい判断を簡単な判断に置き換えてしまい、本来判断すべき情報に正しい重み付けをしない。
    ・結論バイアス…はじめから結論ありきで物事を決め、あとから選択的に証拠を集めて都合よく解釈してしまう。
    ・過剰な一貫性…第一印象に引きずられ、後から異なる情報が出てきても、一貫性を保持し続けてしまう。

    心理的バイアスは、多くの人に同じバイアスがかかっている場合には統計的バイアスを生む。だがそれぞれにちがう方向にバイアスがかかっていれば、システムノイズを生むことになる。

  • ノイズ(Noise)とは、原因不明な異音、転用して、判断に含まれている説明のつかない誤り

    628頁、29章にも及ぶ大作、統計学、心理学、行動経済学にまたがる
    理解困難な難書でした。見慣れない用語が、複数の章にまたがって、現れるので
    その確認を含めて、一読に1週間以上も時間がかかってしまいました。

    冒頭には、本書をまたがる、大きな地図があり、また、各部の冒頭、各章の終わりにはまとめがあって理解を助けてくれます。

    刑罰への量刑とか、病気への診断とか、人事評価とか、似たような状況なのに、人間によって、その判断が大きくことなっていて、理解不能な不平等がこの世に広がっている。その差は人々が考えている以上に大きく深い。

    その原因は、何か。また、その不平等を改善するために、判断の質を上げるためにはどうすればいいのか が本書の目的です。

    その判断を誤らせるものは、バイアスとノイズの2つがあると説きます。

    バイアス 偏見 偏りがある
    ノイズ 説明のつかないランダムなばらつき

    上巻の範囲は以下
    第1部 ノイズとバイアスとの違い、
    第2部 人間の判断というのはどういうものかの分析
    第3部 予測的判断の分析
    第4部 人間心理に立ち戻り、ノイズが生じる根本原因の検討(途中まで)

    上巻にて気になったことばは次です。
    ・世界は複雑で不確実であり、判断は難しい
    ・不一致の度合いは一般に予想されるよりははるかに大きい
    ・「もしこうだったら」「もしこうでなかったら」と事実と異なる仮定を立ててみれば、きっとそこにはノイズが見つかるはずだ。
    ・判断とは、「人間の知性がものさしとなるような計測」と定義することができる。
    ・判断には、「予測的判断」と「評価的判断」がある。
    ・バイアス、各ノイズの各量は、標準偏差で分布すると仮定し、平均二乗誤差(MSE)で計量化しています。
    ・ノイズは、システムノイズ(レベルノイズ、パターンノイズ)、機会ノイズ、

     システムノイズ 誤った判断からバイアスを差し引いて残るもの
     レベルノイズ 各人の平均的な判断のばらつき、レベルエラーのばらつき
     パターンノイズ システムノイズからレベルノイズを差し引いて残るノイズ
     機会ノイズ 1回目の判断と2回目以降の判断が異なるというノイズ

    ・カスケード効果 順番に前の人の選択情報を参照しながら判断する場合に、自分自身のもつ情報に基づかず、多数派の選択肢を選ぶ傾向。

    ・置き換え 2つの事実の順番を変えることによって、判断がことなってしまうこと

    目次は以下です。(上下巻 通し)

    上巻
    序章 二種類のエラー
    第1部 ノイズをさがせ
     第1章 犯罪と刑罰
     第2章 システムノイズ
     第3章 一回限りの判断

    第2部 ノイズを測るものさしは?
     第4章 判断を要する問題
     第5章 エラーの計測
     第6章 ノイズの分析
     第7章 機会ノイズ
     第8章 集団によるノイズの増幅

    第3部 予測的判断のノイズ
     第9章 人間の判断とモデル
     第10章 ルールとノイズ
     第11章 客観的無知
     第12章 正常の谷

    第4部 ノイズはなぜ起きるのか
     第13章 ヒューリスティクス、バイアス、ノイズ
     第14章 レベル合わせ
     第15章 尺度

    下巻

     第16章 パターン
     第17章 ノイズの原因

    第5部 よりよい判断のために
     第18章 よい判断はよい人材から
     第19章 バイアスの排除と判断ハイジーン
     第20章 科学捜査における情報管理
     第21章 予測の選別と統合
     第22章 診断ガイドライン
     第23章 人事評価の尺度
     第24章 採用面接の構造化
     第25章 媒体評価プロトコル

    第6部 ノイズの最適水準
     第26章 ノイズ削減のコスト
     第27章 尊厳
     第28章 ルール、それとも規範?

    まとめと結論 ノイズを真剣に受け止める
     終章 ノイズの少ない世界へ

  • 本書は、ノーベル経済学賞を受賞した「ファストアンドスロー」の著者であるダニエルカーネマン等が
    ヒューマンエラーである「ノイズ」について考察した本です。
    多角的に研究された内容が多数紹介されており、この本を読めるというのは「めちゃくちゃ、お得だー❕」と思いました。
    医者や裁判官の判断でさえ、ノイズがあるとは、、、
    ぜひぜひ読んでみてください。

  • バイアスについての名著『ファスト・アンド・スロー』の内容の繰り返しにならないかを懸念してたのですが、杞憂どころか、ノイズという全く新しい視点で書かれた目から鱗の内容でした。統計学的な中央値のずれがバイアスなのに対し、標準偏差の大きさがノイズです。

    経営判断や司法判断などの一度きりの判断は、繰り返しや結果の検証がされないために、信じられないほどのバラツキを持っていることが認識されていません。本書はその衝撃の事実をデータで示してくれむす。さらに、判断者ごと、判断ケースごと、または偶然性によるもの、などの要素にノイズを分解して、ノイズ全体がその要素の二乗和になっていることが説明されます。

    バイアスを減らす重要性が広く認識されてきた中で、本書はノイズという新たな課題を突きつけます。下巻でその方法論がどの様に語られるか、楽しみです。

  • # 意思決定の精度に関する秘孔を突いた一冊

    ## 面白かったところ

    - 「狙った的が外れる」という事実は見る切り口を変えたらカテゴライズでき、「バイアス」と「ノイズ」で表現されていて膝を打った

    - 「一晩寝かせるといいアイデアが浮かぶ」というアレの正体の根源が「群衆の叡智」であると力説していて面白い

    ## 微妙だったところ

    - 正規分布や公式など、統計学を始めとした、大きな主語で言う「数学」の知見が多く散りばめられていて難しい

    ## 感想

    組織が正しく前に進むための決断について興味があったため読み始めたが、かなり面白い。

    人間という1単位で見た場合と、組織で見た場合では決断の際にバイアスがかかる。初めに発言した人間の意見が通りやすいのは、それ以外の人のシステム1が起動してしまうからと言う理屈も興味深い。

    人はコンピュータのように様々なカテゴリの数値を分析することは難しいが、階層的にハンドリングしやすい数値で比較することは割りと得意という論も納得がいった。20種類のピザのランキングを付ける際も、闇雲に20種類レビューするんじゃなくて、「魚介系」「肉系」のようにカテゴライズして評価点をつけるほうがやりやすいのは自分でもわかった。

    絶対評価ではなく相対評価のほうがマシ。ということである。これはストーリーポイントの概念にも通ずることがあるな。

    書いてある内容や引用してある概念は簡単ではないが論じられている内容はかなり面白いため、下巻も楽しみである。

  • 行動経済学の権威であるカーネマンの書籍。全般的に保険や司法の話が多いので少し読み進めるモチベーションに苦労した。ただしさすがの著者の説得力で参考になる部分も多い。前提としてファストアンドスローは読んでおいた方が良い。
    ノイズを減らすための統計的思考は実践したい。
    興味がある人には薦められるが、万人には薦めづらい本。
    ノイズとあるが、おもにバイアス+ノイズの話。

  • 難しい。じっくり読みたい

  • バイアスはだいぶ知っていたが、ノイズは全くノーマークだった‼️素晴らしい啓蒙書だなー‼️

  • ・どんな意思決定にも予測的判断がかかわってくる。予測的判断においては、正確性が唯一の目標であるべきだ。だからあなた個人の価値観は事実から切り離しておくように
    ・人間はご機嫌だとでたらめを受け入れやすくなり、また全般的に騙されやすくなる。つまり、つじつまの合わないところを探し出したり、嘘を見抜いたりする気がなくなってしまう
    ・カスケード効果:情報カスケードとは大勢の人が順番に前の人の選択情報を参照しながら判断する場合に、自分自身の持つに基づかず、多数派の選択肢を選ぶ傾向を指す
    ・機械学習アルゴリズムは、ほかのモデルが見落としてしまうような変数の組み合わせの中に重要なシグナルを見つける。データに隠れているある種の極めて稀なパターンがハイリスクと強く創刊しており、アルゴリズムはそれを発見できる
    ・結論バイアス:初めから特定の結論を目指して判断プロセスを開始すること
    ・過剰な一貫性:予断を持っているとき、それを裏付ける証拠ばかり探し矛盾する証拠は無視する各省バイアスも、後から出てきた重要な証拠を過小評価する点で似ている

  • 前著「ファストアンドスロー」が人間のバイアスについて書かれた本であったのに対して、本著は「ノイズ」(=標準偏差。ばらつき)について書かれた本。
    同じ人間でも、判断する気分・時間・外部要因によって答えを変えてしまう。それに対応するためにはどうすればよいのか?

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著者プロフィール

心理学者。プリンストン大学名誉教授。2002年ノーベル経済学賞受賞(心理学的研究から得られた洞察を経済学に統合した功績による)。
1934年、テル・アビブ(現イスラエル)に生まれへ移住。ヘブライ大学で学ぶ。専攻は心理学、副専攻は数学。イスラエルでの兵役を務めたのち、米国へ留学。カリフォルニア大学バークレー校で博士号(心理学)取得。その後、人間が不確実な状況下で下す判断・意思決定に関する研究を行い、その研究が行動経済学の誕生とノーベル賞受賞につながる。近年は、人間の満足度(幸福度)を測定しその向上をはかるための研究を行なっている。著作多数。より詳しくは本文第2章「自伝」および年譜を参照。

「2011年 『ダニエル・カーネマン 心理と経済を語る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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