希望の国のエクソダス

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (422ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163193809

感想・レビュー・書評

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  • 2000年代に書かれた近未来の日本の事を予測を含め書かれた一冊。
    すでに、2017年になっておりこの舞台となる2008年も過ぎているのだけど、意外と書かれていることが当たっている部分もあり、凄いなと思う。

    この本をいま国会で話題になっている前川次官が読んで、危機感を持ったとニュースで話されていたのが、わたしが読み始めた時点のことでなる程と思った。

    2001年に日本の中学生たちが集団不登校になっていて、その若者たちがネットワークで連帯して新しい価値観を持って生きて始めていく。

    通過も新しく作ったりするのがビットコインと重なったりと村上龍氏の先見性や想像力に驚かさせられた。

    そして、狂った日本の政治や世界も重なってくる。
    さすが文部科学省次官の前川氏が本当に若者たちのことを考え彼らの目線にも近づこうと読まれた本だと思った。

  • 2022/6/26-7/10読了

  • スウェーデンの高校生が環境問題を訴えるための授業ボイコットが世界中に拡大していることが話題に。それでこの本のことを思い出し再読。中学生の一斉登校ボイコットに端を発し閉塞し崩壊する大人社会を尻目に彼らが新しい社会を作っていくお話です。閉塞社会の変えるのは劇的な革命ではなく、このお話のように変わるべき時に静的に滑るように変わっていくものなのでしょうか。。。

  • 保守派には反感買いそう。
    まあ世代が変わればモノゴト変わるんで、こういうことを謙虚に受け止め仕組みを変えていくことで組織や共同体は長く続くんだろうけど。
    同調意識の高さゆえか一党独裁が続く政権だと難しいやね。
    彼らが集った場所も世代気質とも言える将来的弱点はあるわけだが、それを受け止め補っていける許容度はあるだろうか。

    海外流出は仕方ないよ。手応えも魅力もないことを強いるわけにはいかないもの。

  • 経済や政治に関する内容がかなり占めていて、読むのが少し大変でしたがとても面白かったです。新書ではないのにそうではないかと思わせる色褪せない内容についページをめくる手が止まりませんでした。中学生たちが国の経済を動かして変えていくお話でしたが、本書を読み終わった時に、これが現実になったら今の日本はもっと良くなるのかな…なんて考えちゃいました。

  • この本が出版されたのが、2000年7月。

    今読んでも色褪せないですね。
    というか、様々な人に取材をして書いたというこの内容は、
    2000年からいろんなことがあったことを思えば、
    よくここまで踏み込んでいるな、という内容です。

    いじめと自殺についても、
    教師の体罰についても、
    原発とリスク管理についても、
    リーマンショックや金融についても、
    教育の役割と経済界の要望についても、
    すでにその芽はこの本の中で触れられていたのだと思います。



    この国の教育を変えるために、中学生達が集団で不登校を起こします。
    そして、自分たちで学び、自分たちで会社をつくり、自分たちの経済圏をつくって、独立します。

    さてさて、
    リアリティがあるかといえば、うーん、僕はないように感じました。

    しかし、本書のような書き方をすることで、
    日本の病巣は何かは、
    はっきりと浮き上がっているように思いました。



    金融と教育、
    資本主義経済と教育・道徳、
    といった感じですが、
    経済力や資本主義経済の勝者こそが正義だ、
    みたいなのは、やっぱりおかしいと思うんですよね。

    集団不登校した中学生たちだって、乗り越えられていない壁があります。

    この本が出されてから、13年。
    教育は変わっていないけれども、不登校とは違ったかたちで、
    経済は変わってきているのではないでしょうか。

    その上で、仕事のための教育、経済のための教育が優れているのかは、
    よく考えるべきだと思います。

    “「この国には何でもある。本当にいろいろなものがあります。だが、希望だけがない」”

  • 2013/04/15

  • のっぺりした中学生たちの顔かたちを想像して、思わずぞっとした。

    中学生たちが学校を捨て、自分たちのコミュニティを立ち上げて、いつの間にか擬似国を作り上げるという近未来小説。
    (現時点では近過去だが)

    この国の経済、金融、教育、立法、保障、メディアの在り方に疑問を投げかける。
    スマートになればなるほど、心は寛容になれない気がする。
    スマートになれない人を軽蔑し、受け入れることができなくなるような気が。
    老人を敬わない中学生たちのくだりは、なんだか吐き気を催す。

    作者の言う通り、結果的に理想郷を作った中学生たちだが、彼らには欲望が欠如しているということが、彼らから表情を奪っていったのだろう。
    金銭欲や所有欲や食欲や性欲みなぎったドロドロした人間こそ、本当に人間らしいのかもしれないなあ。

  • 面白かったー!!
    経済の話とか難しかったけど、すごく皆に読んで欲しい作品。物語はASUNAROにとってハッピーな流れだったけど、現実にはASUNAROなんて現れないかも知れない。
    むしろ日本人は今読んだ方がいい。

    そして何よりすごいのは、この本が刊行されたのは10年以上前ということ。この中にはすでに起こっていることもあればまだ起こっていないこともある。

  • 確か高校1年くらいのときに一度読みかけて、途中で飽きて読むのをやめてしまった記憶があります。
    ですが今回は、終盤に多少飽きがきたものの最後まで興味深く読めました。
    日本の閉塞感を実際に感じるようになったからでしょうか。

    最後に飽きてしまったのは少年たちの構想が軌道に乗り十分発展し「これからどうなるのだろう」というワクワク感が無くなってしまったのと、淡々としたシステムの説明が増えたのが原因かと。
    それまでは物語がダイナミックに展開しとても楽しめます。

    前半で現代日本社会に対する問題提起、後半でその一つの帰結の提示といった感じです。
    既存のシステムに対する批判は小気味いいです。

    少年の「この国には希望だけがない」という言葉に象徴される現代日本の閉塞感、また、希望とは何か、理想の社会とは何かについて考えさせられる本だと思います。

著者プロフィール

一九五二年、長崎県佐世保市生まれ。 武蔵野美術大学中退。大学在学中の七六年に「限りなく透明に近いブルー」で群像新人文学賞、芥川賞を受賞。八一年に『コインロッカー・ベイビーズ』で野間文芸新人賞、九八年に『イン ザ・ミソスープ』で読売文学賞、二〇〇〇年に『共生虫』で谷崎潤一郎賞、〇五年に『半島を出よ』で野間文芸賞、毎日出版文化賞を受賞。経済トーク番組「カンブリア宮殿」(テレビ東京)のインタビュアーもつとめる。

「2020年 『すべての男は消耗品である。 最終巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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