キャパの十字架

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (335ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163760704

感想・レビュー・書評

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  • ロバート・キャパの有名な写真「崩れ落ちる兵士」の真贋を作家沢木耕太郎が調査する。
    著者が「崩れ落ちる兵士」に疑問を抱いたのは、キャパの伝記の翻訳を頼まれたことから始まる。
    それまでもキャパに関心があった著者だが、その伝記を訳していく過程で疑問が生まれたのである。
    そこから緻密な調査が始まる。
    最初の疑問は、兵士は本当に銃弾に倒れたのか、それともポーズを取らされたのかという単純なものだった。
    しかし、調査が進むに従って、意外な結論が導かれる。
    つまり、銃弾に倒れたわけでも、ポーズを取らされたわけでもなかった。
    そこには意図しない偶然があった。
    兵士が、(実戦ではなく)演習中に地面に足を取られて倒れたところを運よく捉えたのがあの写真である。
    さらに、写真を撮ったのは、キャパではなく同行していた恋人のゲルダであるという。
    非常に緻密な取材や検証で、執念というほどの情熱を感じた。
    その情熱に圧倒され、途中からどっちでもいいような気持になったぐらいだ。
    著者の一応の結論は出ているが、結局のところ確証は無いので謎は謎のままである。
    とても慎重に検証されているが、若干著者の思い込みがあるように見受けられる箇所もあった。
    けれど、キャパ本人が「崩れ落ちる兵士」について多くを語らなかったことを考えると、何がしかの理由で十字架を背負っていたことは間違えないのかもしれない。

  • ☆3つ
    先に新刊の『キャパへの追走』を読んだ。 面白かった。 その中でこの『キャパの十字架』が上梓されていることを知った。
    しかし沢木耕太郎は忙しい忙しいと言ってスペインやフランスへ出向いてみづからの足と耳目で調べることをづるづると年単位で先送りしている。
    そしてその間に他人が発表した関連するニュースや論評を巧みにもちいて本書を構成している。 流石である。 遣り方がせこい、あいや上手い。
    中盤で写真の縦と横の比率がどうやらこうやらの、1.5センチメートルが重要かどうかのと・・・そこでわたしの読書読み進め思考は滞ってしまって大変困ったのだった。 すまぬ。

  • 滅多に読まないこの分野、思ったより惹き込まれた、、。写真の真贋へのあくなき探求の旅。あらゆる角度からの5W1Hでの掘り下げ、取り憑かれた様な執念のドキュメンタリーは、終章の十字架の謎解きに結びつく♪。

  • 著者の入念な調査は素直にすごいと思う。
    仕事と言えば仕事なのだろうが、
    若い時に気になっていたことを、
    時間が経ってから取り組めたチャンスと行動力は羨ましい。

  • 男性目線による徹底的なまでに冷静で客観的な、ある一枚の写真の真実の検証。
    特別なドラマやストーリーがあるわけでもなく淡々と検証が進められるが、その奥にある作者自身の「真実が知りたい」という熱い情熱が印象的だった。
    余計な感情を削ぎ落とした沢木氏の文章は好きだ。
    2015/02

  • 買いたいけど綴じ方が固すぎて・・・文庫化に期待。

  • NHKでのスペシャル番組を見てから読みたいとずっと思っていた。

    作者の丁寧かつ執念深い謎解きがすごかった。
    ほとんどのページがその謎解きに割かれている。しかしスペイン戦争以降のキャパの人生に触れている、本書終盤のわずかな部分がカメラマンとしては響いた。
    世界に知られる、自分の代表作となってしまった一枚を越えようとするキャパの苦悩はどのようなものだったのかなと、想像してしまった。

    2017.06.09再読。文章を書く仕事をするようになって、こういった長い時間をかけて取材したものを1つの本として、世に送り出すことができれば本望だろうな。たとえ世に出なくても、自分の中で納得がいったものを。

  • 【四十年にわたる「旅」の終着点。渾身のルポルタージュ】史上最も高名な報道写真「崩れ落ちる兵士」。その背景には驚くべき物語があった。「キャパ」はいかにして「キャパ」になったのか。

  • NHKのTVで先に見ていたので、ネタバレ済み。
    十字架とタイトルとした部分をモット書き込んであると期待してた。

  • 20140421読了
    2013年出版。戦争写真家ロバート・キャパの有名な作品「崩れ落ちる兵士」に迫るドキュメンタリー。●かなりおもしろい。著者がこの写真がどのように撮影されたのかを解明していくもの。そのそもこの兵士が撃たれているのか、本当に戦場で撮影されたのか、どこでどのような状況で撮影されたのか。導き出された結果は、スペインの人たちにとっては確かに喜ばしくないものなんだろうが、謎を謎のまま残しておくのも気持ち悪い。出版当時、テレビ局のスタッフと最新の映像技術によって検証作業を進めているそうなので、結論が気になるところ。

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著者プロフィール

1947年東京生まれ。横浜国立大学卒業。73年『若き実力者たち』で、ルポライターとしてデビュー。79年『テロルの決算』で「大宅壮一ノンフィクション賞」、82年『一瞬の夏』で「新田次郎文学賞」、85年『バーボン・ストリート』で「講談社エッセイ賞」を受賞する。86年から刊行する『深夜特急』3部作では、93年に「JTB紀行文学賞」を受賞する。2000年、初の書き下ろし長編小説『血の味』を刊行し、06年『凍』で「講談社ノンフィクション賞」、14年『キャパの十字架』で「司馬遼太郎賞」、23年『天路の旅人』で「読売文学賞」を受賞する。

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