キャパの十字架

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (335ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163760704

作品紹介・あらすじ

フォトジャーナリズムの世界でもっとも有名かつ最高峰といわれる「崩れ落ちる兵士」。だが、誰もが知るこの戦争写真には数多くの謎がある。キャパと恋人ゲルダとの隠された物語がいま明らかになる。

感想・レビュー・書評

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  • 一枚の写真からこれほどの考察と調査ができることの面白さ。
    仮説と反論への考察など、1つの物事における執着が面白かった。

  • 嫁さんが図書館で借りてきてくれた「沢木耕太郎」のノンフィクション作品『キャパの十字架』を読みました。

    「沢木耕太郎」作品は昨年の5月に読んだ『一号線を北上せよ』以来なので、ほぼ一年振りですね。

    -----story-------------
    ~40年にわたる「旅」の終着点。渾身のルポルタージュ~

    史上最も高名な報道写真「崩れ落ちる兵士」。
    その背景には驚くべき物語があった。
    「キャパ」はいかにして「キャパ」になったのか。

    写真機というものが発明されて以来、最も有名な写真――戦場カメラマン、「ロバート・キャパ」が1936年、スペイン戦争の際に撮影した「崩れ落ちる兵士」。
    銃撃を受けて倒れるところを捉えたとされる写真はしかし、そのあまりにも見事な迫真性が故に、長く真贋論争が闘われてきた。
    学生時代より半自伝『ちょっとピンぼけ』を愛読し、「キャパ」にシンパシーを抱き続ける著者は、その真実を求めて、スペイン南部の〈現場〉まで実に4回にわたる旅に出る。
    粘り強い取材の結果、導き出された驚くべき結論。
    そして、戦場で死んだ女性カメラマンで「キャパ」の恋人だった「ゲルダ・タロー」との隠された物語とは。
    76年間、封印されていた「真実」がついに明らかになる。
    -----------------------

    ルポライターとして最も好きな作家「沢木耕太郎」と、最も尊敬する写真家「ロバート・キャパ」のコラボレーション… こりゃ、面白くないわけがないですよね。

    どんどん先が読み進みたくなり、一日で読み終えてしまいました。
    発売から僅か1ヵ月での拝読、図書館で借りてきてくれた嫁さんにまずは感謝です。

    スペイン戦争で「キャパ」が撮影されたとされる、世界的にも有名な写真「崩れ落ちる兵士」… とても印象的な作品ですが、あまりにも見事なタイミングで撮られているが故に、真贋についての議論が絶えないらしいです。

    私も、この写真を初めて見たときには、凄いなぁ… と、ただただ驚きましたが、、、

    同時に本当なんだろうか… という疑念を抱き続けていたのは事実。

    違和感があるというか、なんだか喉に小骨がひっかかっているような違和感を感じるんですよね… 真実は「キャパ」と、その恋人だった「ゲルダ・タロー」にしかわからないことですが、現地や資料を調べ上げ、丹念に情況証拠を積み上げることにより、「沢木耕太郎」が辿り着いた結論を読んで、モヤモヤが吹き飛ばされた感じがします。

    素晴らしい推理だと思います。

    本作品は、以下の八篇が収録されています。

     第1章 崩れ落ちる兵士
     第2章 真贋
     第3章 彼の名前
     第4章 小麦とオリーブ
     第5章 その丘で起こったこと
     第6章 突撃する兵士
     第7章 ゲルダ
     第8章 影は語る
     第9章 ラスト・ピース
     第10章 キャパへの道

    真実を知りたいという欲求を満たすため、写真界のタブーに真っ向から挑んだ、その姿勢や行動には感心しました。

    現地を何度も訪ね、「崩れ落ちる兵士」が撮られた場所で同じ構図でライカを使用して写真を撮り、インタビューを重ね、写真を何度も調べ返し、公文書を探し、そして仮説を立てて検証していく… そのプロセスは、まるでミステリー作品を読んでいるかのようで、一緒に真実に近づいて行く過程が楽しめましたね。

    さすが「沢木耕太郎」ですねぇ。


    そして、これまで定説とされていた内容を次々と覆していきます。

     ○撮影された場所(セロ・ムリアーノ ⇒ エスペホ)

     ○撮影された民兵(フェデリコ・ボレル ⇒ 別な民兵)

    そして、「突撃する兵士」の背後に「崩れ落ちる兵士」がいたことを発見したことにより、次の結論に至ります。

     ○使われたカメラ(ライカ ⇒ ローライフレックス)

     ○撮影された場面(銃撃された瞬間 ⇒ 演習中のポーズ ⇒ 演習中に偶然倒れた瞬間)

     ○撮影者(ロバート・キャパ ⇒ ゲルタ・タロー)

    う~ん、真実は確認のしようがありませんが、説得力のある結論だと感じました。


    「沢木耕太郎」の推理が正しかったとしたら(私は正しいと思いますが)、、、

    偶然が重なったにせよ、撃たれていない兵士の写真が撃たれていると誤解され、それも他人の撮った写真が自分の写真として扱われ、それを否定しなかった「キャパ」… その後の人生の中で大きな重荷(十字架)を背負ったことでしょうね。

    その重荷が、「キャパ」の行動に色濃く影響していたことは、その後の生き方からも感じ取れますねぇ。


    この内容はNHKスペシャルでも放映されたとのこと… 観てないんですよねぇ、残念。

    再放送されることを祈っています。



    余談ですが、、、

    本書の初版では写真の解説が誤っています。

    正解は上の写真が『ヴュ』で、下の写真が『ライフ』ですね。

  • あの写真の真相は? 詳細かつ丹念な調査によって紐解いていく。いつの世も重層的な理由によって歪められていく事実というものがあるのだ...。諸氏の知見も盛り込みながらこのボリュームで収まっているのは流石です! 他作品も読み直そうかな。

  • 「キャパ その青春/その死」を翻訳した沢木さんが、有名な「崩れ落ちる兵士」は、所謂やらせ作品ではないかと疑問を持ち、徹底的な取材で真実を解き明かすというドキュメンタリー。
    決して、キャパを否定するものではなく、キャパへの親愛の情は全く変わらないという沢木さんの取材は、しかし鋭く、執拗です。ジャーナリストとしてのキャパに親愛の情を感じつつも、また同時に、ジャーナリストとしてのキャパの作品に対して、真実を追求する。彼のプライドが感じ取れるように思います。ノンフィクション作家としての沢木さんの実力が遺憾なく発揮された作品と思います。

  • ノンフィクションミステリーって感じて面白かった!作者はキャパの撮影した『崩れ落ちる兵士』をこれでもかってくらい研究していたのがこの作品の面白い所でした。最後の章でキャパがノルマンディー上陸作戦へ参加した時に撮影した『波の中の兵士』の写真を見たときはちょっと震えた。
    こんな情熱を出せる仕事をしたいものだ

  • キャパの有名な「崩れ落ちる兵士」という写真は、いつどのように撮られたのかを考察した本。1枚の有名な写真を巡るミステリーを、ノンフィクションライターである著者の視点で謎解きを行っている。
    「崩れ落ちる兵士」はスペイン戦争の象徴的な写真で、銃弾が当たった瞬間を見事に捉えたものとして有名だが、撮影したはずのキャパ自身もこの写真へのコメントはなく、その撮影状況はよく判っていない。筆者は関係者にインタビューしたり、実際に現場に足を運んで、本当は誰がいつどのように撮影したのかを考察している。
    自分の意図を作品に反映できる芸術写真家と違って、報道写真家が撮る写真は、ほとんどが偶然の産物である。写真の価値を決めるのは、それを掲載するマスコミ等の受け手側の意図による。この写真も、受け手側によって評価が高まった事例であり、それが撮影者を有名にすると共に、撮影状況を秘密にしなければならないことで、或る意味十字架を背負わされることになった。
    多くの写真と簡単な図解を盛り込んでいて大変読みやすく、謎解きは多少くどい感じもするが、筆者の主張はとても判りやすく面白かった。

  • ノンフィクション

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  • おもしろい。
    キャパの有名な「崩れ落ちる兵士」が実は演習中に偶然斜面を滑ったもので、しかも、撮影者は同行していたゲルダ(恋人でもあった)という。
    この話はむしろきちんと英語で発表した方がいいと思う。

  • 70年以上も前の世界的に有名な写真の真実が、今頃になって、しかも日本のノンフィクション作家によって暴かれる、というのは何か違和感がある。

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著者プロフィール

1947年東京生まれ。横浜国立大学卒業。73年『若き実力者たち』で、ルポライターとしてデビュー。79年『テロルの決算』で「大宅壮一ノンフィクション賞」、82年『一瞬の夏』で「新田次郎文学賞」、85年『バーボン・ストリート』で「講談社エッセイ賞」を受賞する。86年から刊行する『深夜特急』3部作では、93年に「JTB紀行文学賞」を受賞する。2000年、初の書き下ろし長編小説『血の味』を刊行し、06年『凍』で「講談社ノンフィクション賞」、14年『キャパの十字架』で「司馬遼太郎賞」、23年『天路の旅人』で「読売文学賞」を受賞する。

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