宇宙が始まる前には何があったのか?

  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163768700

感想・レビュー・書評

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  • 原題は「A universe from nothing -why there is something rather than nothing-」

    ポイントは原題の英語の"A" universeの冠詞である。
    "A"とはつまり、宇宙が多数存在するうちの中の一つの宇宙について考えている。つまり、我々の宇宙である。
    つい最近まで、宇宙は静的であると考えられてきたし、宇宙が多数存在するなんていうのは創造もしえなかっただろう。
    しかしながら、最新の素粒子理論では宇宙は多数存在し、我々が存在する宇宙はその中の一つにすぎないという。

    最近、この手の書籍は多数ある。
    例えば、Braian Greenの「エレガントな宇宙」やS.Hawkingの「Hawking宇宙を語る」等挙げればきりがないが、特に本書を読んで目新しさは感じなかった。
    というよりも。多宇宙解釈を説明するのなら、String theoryを導入せねばなるまい。
    あまり、本書では詳しくつっこまず、「最新の理論によると・・・」と逃げ口上が多い。
    翻って、一般の読者にとっては超対称性をラグランジアンに導入すると・・みたいに書かれるとチンプンカンプンなので、本書が売れた理由はここらへんになるのかとも思うが。。

    まったく物理学なんて知らないぜ。という人で宇宙に興味がある人は面白く読むことができるが、少し物理学(といっても大学の学部の教養以上の知識は必要であるが・・)を知っている人ならば先に上げたBraian Greenのエレガントな宇宙、隠れていた宇宙をおすすめしたい。

    しかしながら、人間の探究心は限度を知らない。
    なぜ宇宙はこのような環境なのか。
    物理法則が数学で記載されるのはなぜなのか、なぜ空間は3次元で時間は1次元であるのか。

    そして今、我々はこれらの質問に答えられる聖杯を手に入れる段階まできているのかもしれない。

  • 本書の原題はA UNIVERSE FROM NOTHING - WHY THERE IS SOMETHING RATHER THAN NOTHING-
    無から生まれた(一つの)宇宙。
    そして副題のWHYが議論を呼ぶ物理学者のなぜはどうやって、どのように生まれたのか、そのための条件は何でそれを証明するためにはどのような観測が必要かなのだが「なぜ」と聞くと神様が顔を出すのだ。ビッグバン仮説の提唱者ルメートルは司祭でもあり本人は物理と信仰は分けていたが、ビッグバン仮説と天地創造神話は一般には対立する事柄のように思えるがビッグバンこそ天地創造を裏付けるものと考える人もいる。しかし、ローレンス・クラウスも言うように「宇宙は、われわれが好むと好まざるとにかかわらず、あるようにある。」と言うことで物理学の理論と観測から導きだされたのがこの本に書かれていることだ。しかし、答えが全てわかったというわけではもちろんない。

    ビッグバン仮説は現在ではかなり確からしいものとして多くの宇宙物理学者に支持されている。そして、その証拠は少し前なら多くの人が見ていた。夜中の放送後に現れるテレビの砂の嵐、ザーザーッと音がするのはアンテナが色々な電波を拾っているからでその一部は宇宙のあらゆる方向から飛んでくる同じ波長の放射線でバックグラウンド放射線と呼ばれている。しかし宇宙の膨張が続くとこの波長はドップラー効果のためいずれは計測できないほど振動数が小さくなる。それどころか2兆年後には同じ銀河系以外の星は遠すぎて見えなくなってしまう。まあ50億年後には太陽が寿命を迎えるので考えても仕方が無いのだが。ところで宇宙の年齢は137億2千万と上から4桁ははっきりしたらしい。それがはっきりしたのは宇宙の膨張が減速しているのか加速しているのかがわかったからでもある。

    暗黒物質<ダークマター>と言うものが有る。フォースの暗黒面とは関係がないがなんだかおどろおどろしいイメージだ。ビッグバンで始まった宇宙がこれからどうなるかを考える時にこの暗黒物質が関係してくる。宇宙が十分に小さく、拡がる力が弱いと仮定してみよう。宇宙に存在する物質の引力で膨張は止まり逆に収縮する。実はいくら大きくても基本的には同じことで引力は宇宙を縮めようとし、膨張速度にブレーキをかけている。銀河の質量を求める試みから得られた結果としてわかったのは暗黒物質が銀河間の暗い空間に存在し、目に見える星や星間物質の質量の40倍にのぼるというものだった。そして超新星の観測からドップラー効果が距離に比例しているのかどうかからプロットすると宇宙の膨張が加速していることが明らかになった。

    宇宙の膨張が加速するとはどういうことか?ただでさえ引力が膨張にブレーキをかけていると言うのに。アインシュタインが一般相対性理論に一度組み込み、「人生最大の過ち」として捨て去った宇宙項を復活させればこの宇宙の膨張を説明できる。つまり宇宙空間には斥力が働いていると言うことだ。空っぽの宇宙空間に負の圧力がかかっていると考えてもいい。空間が膨張すればするほど不の圧力は増大する。(正の圧力は膨張すると下がる)この圧力を生み出すために必要なエネルギーを計算すると驚くべきことに物質が30%に対して空っぽの空間に70%存在することになる。つまり宇宙空間のエネルギーのうち目に見える物質が占める割合はわずか1%にしか過ぎないと言うのだ。30%は暗黒物質として質量として存在し、残りは暗黒エネルギーと呼ばれるようになった。並のSF小説のプロットが吹っ飛んでしまいそうなことがわかってきている。

    何もない空間から物質が生まれる現象はじつはそんなに珍しいことではない。色即是空空即是色 色不異空空不異色。
    しかし一瞬で消えてしまうが大型加速器実験でいくつか発見されている。映画「天使と悪魔」で爆発したあれだ。(あんなに見える様な量ではないが)陽子と反陽子、電子と陽電子という電荷以外は同じ性質を持つ粒子が対生成し対消滅していく。ではその物質を生み出す空間は本当に”無”と言えるのか?空っぽの空間=物質だけでなくエネルギー放射もない空間も真空のエネルギーを持っている。無から物質が生まれても問題は無く、負のエネルギーを含め物質が生成してもトータルのエネルギーが変わらなければ量子論的には問題ない。

    そして最後にはこの宇宙を決める様々な定数や物理法則ですら多元宇宙を持ち出すと絶対のものではなくなってしまう。ここら変では完全に理解の外なのでまあ良しとしよう。この宇宙は唯一絶対の宇宙ではなく例えば反物質からなる宇宙や閉じた宇宙(重力が勝ち収縮する)など色々なものが有るのかもしれない。だから”A” UNIVERSE FROM NOTHINGだったのだろう。リチャード・ファインマンが言ったように物理法則はタマネギの皮の様なものでむいてもむいても先がある。要するにまだ何もわかってないのだ。わからない宇宙論をなぜ読むかというとわからないことが少しだけわかるからとしか言いようが無いのだが。

  • 宇宙論は今一番面白いテーマのひとつではないでしょうか。宇宙の外側はどうなっているのかとか、ビッグバンの前はどうなっていたのかとか、かつては大人を困らせるだけの質問が、今では科学的に解明されつつあることに、驚かずに入られません。

    さらに驚きなのが、それら科学的な知見は、私(「私たち」といってもいいと思うのですが)の常識に反するものがすくなくないことです。その筆頭が量子論という、原子レベル以下の非常に小さなスケールの話の部分です。詳細は本書を読んでくださいということになりますが(私もよくわかりませんし)、宇宙というこの世のもっとも大きなスケールのものを理解する上で、原子より小さなスケールの理論が重要となるという構図だけでも、興味深いものがあります。

    本書は、最新の宇宙物理学の成果を一般向けに紹介するものです。私はこのテーマの本を何冊かよんだことがあったので、わりとすんなり読めましたが、それでもよくわからない部分もありましたので、初めてこの分野に触れる人は、ぜひじっくり読んでみてください。

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