その日まで 紅雲町珈琲屋こよみ

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 294
感想 : 54
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  • Amazon.co.jp ・本 (261ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163805603

感想・レビュー・書評

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  • 全話を通して温かみを感じるストーリーで、前半、話はおだやかに進んで行きます。その中に、ちらちらと商売敵の悪いうわさやつながりが伏線として話に入り込んできました。

     後半になると、人の裏の部分や予想外なつながりが次々と表面化していき、ストーリーの展開もスピードアップ。引っ張られているような気分になりました。

     そして主人公・お草さんの歩んできた人生やその人柄には、好奇心をそそられましたが、その小粋なおばあちゃん・お草さん像が浮かびませんでした。

     ストーリーの中には絵本に関するくだりがあって、それが大好きな絵本だったのが嬉しくて、途中からその絵本を引っ張り出して脱線してしまったこと、登場人物がイメージできないこと、もっとミステリー色のあるものを期待していたことが重なって、読みやすいのにもかかわらず読了するのに時間がかかってしまいました。

     この作品には前作があり、そちらの方はミステリー要素がもっと強いみたいです。一作目から読まないと楽しめないかと思うと、とても残念です。

  • 最初の何話かは、おもしろく読めたけど、
    最後のお話がごちゃごちゃしていてすうっと
    入ってこなかった。
    小蔵屋には、もう少しほのぼの系が似合うと思う。

  • 主人公がおばあさん、というのがいい。しかも矍鑠としていて、あまりおばあさんらしくない。独身女性が年を重ねた、という雰囲気。
    人とのつながりがしつこくなく描かれている。ほのぼのと言う感じよりは、現実的な小説だった。

    そういえばシリーズモノだったらしいが全く気づかなかった…。

  • 和雑貨&コーヒーのお店を営むお草さんのコージー・ミステリー第二弾。


    表紙の持つ温かみ&芯の通ったお草さんという人、にひかれて第二弾も読んでみました。

    お草さんのお店のすぐ傍に、同じ和雑貨を扱う「つづらや」が開店。
    自分が気にいったものを厳選して店に置くお草さんとは違い、どうもえげつない商売ぶりらしい…と、のっけから波乱含みなのだけど、それが、どんどんきな臭い方向に進んでいく、という、う~~~ん、これはやっぱりコージーじゃないぞぉ~~~!

    不動産がらみの詐欺の加害者・被害者とか、放火とか、産廃の不法投棄とか、ヤクザとか・・。
    これは普通のお婆さんが首を突っ込んでどうにかなる問題ではないでしょう!!

    ・如月の人形
    ・卯月に飛んで
    ・水無月、揺れる緑の
    ・葉月の雪の下
    ・神無月の声
    ・師走、その日まで

    といった和テイストの小題はとても素敵なのに、出てくる人たちが“善人以外はみんな悪人、もしくは問題あり”ってちょっと疲れる。

    福祉作業所で作られたキャンドルを売り込みにきたボランティアの近所の男性の造形には、彼が熱心なだけに、いいことをやってるんだ!だからみんなで協力するべきだ!という気持ちが透けてみえて、痛かった。そのキャンドルは悪くはないのだけど、それでなくては、という個性がなく、お草さんがお店に置きたい、という気持ちにはなれなかっんだよね。そんなお草さんがワルモノみたいに取られてしまうのはイヤだなぁ、と思っていたら、実はその彼にも背景があったという…。なんていう話も、もっと面白くなったと思うのに、なんか中途半端な気がしちゃって。

    せっかくの素敵なお店と、お草さんという素敵なお婆さん、お店のスタッフや出入りの運送業者など、気持ちのいいキャラクターが揃っているのだから、もう少し、いわゆる日常生活の謎と解き明かす、みたいな方向に行ってくれないかなぁ。

    経営困難にあえぐお寿司屋さんのおかみさんに、お草さんがアドバイスした“繁盛の秘訣”、

    「無料でできることは、掃除と笑顔。お金をかけなきゃできないことなら、同じ業種のいい店を回ること。何が必要か痛いほどわかるから」

    というようなフレーズが好きだったから、尚更、惜しい!と思ってしまう。

  • 「紅雲町のお草さん」第二弾。今回は、ちょっとほのぼのが少なくて最後はドロドロで、しかも決着つかず。ちょっと残念。
    気持ちよく終わりたい感じが残ってしまった。気持ちよく終わるのは次作かな。
    お草さんの魅力は、生きてきた道を、前向きに、後悔せずに
    いつも、すっきり生きている。ということではなくて、
    後悔して引きずって、抱えて、泣きながら、それでも一生懸命前を向こうとするから、優しい、そういうところかなぁと思う。

  • 「無花果の実のなるころに」と似ているかなと思って読んでみました。

    「紅雲町のお草さん」シリーズの新刊らしく、

    前作を読んでいないのですが、未読でも問題なく読めました。

    しかし、話の最後がどれもイマイチ。

    表紙の絵がお草さんのイメージに合わないし・・・。

    全体的にイマイチでした。

  • 最初の二編ぐらいまでは面白かったのですが、
    途中から読むのが疲れたぁ。

    もう設定というか悪者が多すぎて、
    頭の中がぐらぐらしていきました。

    そういう話として読む覚悟ができていれば、
    別にかまわないのですが、
    あの表紙の愛らしさでこの内容は・・・
    ちょっと裏切られた感があります。

  • 草さん,ハツラツとした老女だ.人とのつながりが面白い.

  • 「紅雲町珈琲こよみ」の続刊。ライバルのお店が登場、このお店がかなりタチが悪く、不動産の話もからめて話が大きくなっていく。ただ一介の店主(それもおばあさん)が解決できるような話ではなく、なんとなく尻すぼみのような終わりかたになった。

  • (No.11-54) 「紅雲町ものがたり」(文庫版題名「萩を揺らす雨」)の続編です。
    連作短編の形をとっていますが、全体でひとつの話になっています。

    『主人公は杉浦草(そう)。人生の最後にやりたいことをと思い、両親が亡くなったのを機に日用雑貨を扱っていた生家の小蔵屋を、コーヒーと和食器の店に建てかえ経営している。
    若い時に一度結婚し、子供を残して離婚。婚家に残してきた息子は小さい時に事故死した。そのことは70代の今でもずっと心の傷になっていて、不幸そうな子供をみると気になって仕方がない。
    最近気になっているのは、近くのアパートで見かけたタケルという男の子。人を拒絶するような目をして、ぼさぼさの長い髪と汚い服。ところが事情が分かってみるとタケルは虐待されていたわけではなかった。今タケルの面倒を見ているのはタケルの母の弟、つまり叔父さん。タケルの両親の離婚協議中預かっているのだが、そのことに抵抗してストライキ。近所の人が通報したらしく、児童相談所から連絡を受けたりした叔父の田沼は、そのことを草にこぼした。』

    読み始めてすぐ、あれ~?由紀乃さんがいる!九州に行ったんじゃなかったの?
    うーん、前作から時間的に話が続いている感じなので、由紀乃さんを登場させるのなら「こういう理由でまたここで暮らすことになった」という、読者を納得させる文章を入れて欲しかったな。別にどういう理由でもいいのよ。私は由紀乃さんが好きだし、彼女と草の会話はこの話を豊かにしてくれるから、草の近くにいてくれたほうがいいと思うんだ。でも九州行きを無かったことにするのは、やっぱりすっきりしないわ。

    でも由紀乃さんのこと以外では、不満はありません。
    この年齢まで過去を引きずっているのに、前向きに生きる強さを持つ草にとても魅力があるのです。若い店員の久実が、いつも草を思いやっているのも良いし、再登場してくれた由紀乃の存在は大きいし。

    草がかかわる諸々の事件はそれぞれが重くて、すっきりした終わり方にはなりません。そして話はぐるっと回っていきます。
    切ない読後感ですが、それも悪くない・・・。草の胸にこみ上げてきた熱いものを私も感じました。

    吉永さんの本は何冊か読みましたが「紅雲町ものがたり」が一番良いと思ったので、その続編が出てすごく嬉しいです。
    期待通り面白かったのがまた嬉しい!

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著者プロフィール

1964年、埼玉県生まれ。群馬県立女子大学文学部美学美術史学科卒業。2004年、「紅雲町のお草」で第43回オール讀物推理小説新人賞を受賞。著書に「紅雲町珈琲屋こよみ」シリーズ『誘う森』『蒼い翅』『キッズ・タクシー』がある。

「2018年 『Fの記憶 ―中谷君と私― 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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