死神の浮力

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (436ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163823003

感想・レビュー・書評

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  • 前作は数編の短編だったと思うが、本作は長編作であり、密度が半端じゃなく読むのに苦労した。今回は25人に1人いるというサイコパスが相手であるが、直接対決するわけでなく、主人公に纏わり付く死神という役である。そして最後の最後に「死神の浮力」である、思わず笑ってしまった。金城武で映画化されているので、自転車で疾走する金城武がイメージされた、今回も映像化してほしい、香川は黒木メイサあたりがいいと思う。死に向き合う題材も深かったし、どちらかと言うと喜劇寄りなのに感動できた。最後は美樹を迎えにきたということか?

  • ユニークな死神
    生きるか死ぬかという場面でも音楽のことで頭いっぱいで笑えた

  • 伊坂幸太郎が何を伝えたいかわかる傑作でありました。
    今まで理解していなかったのが申し訳ないぐらいに。本編に書いてありますとおり、彼は剣と見せかけて扇子を出したいのだ。殺伐とした時代に殺伐としたことを表現するのは面白くもなんともない。ということである。

    伊坂作品において共通する悪は狡猾で法の裁きを逃れてのうのうと生きているようなやつってイメージがある。
    未成年で守られている、権力で守らている、金で守られている、などそんなやつらから理不尽にも痛い目に合う善人という構図が多い。どうしようもできない怒りや後に来る無力感、本作の序盤でもそれを感じていた。
    法で裁けなかったやつ、そいつに裁きを与えるのは自分たち被害者の親だろうと思っていたが伊坂幸太郎は法の外側システムの外側人間の側ではない、死神というキャラを配置した。
    千葉が来ると雨にはなるが、鬱屈した物語上で彼は登場人物も読者にも晴れた気分を与えてくる。死神の精度を昔読んだが、本作序盤ではホントにこれ千葉出てくるのかって心配の中。
    伊坂幸太郎は、社会の自分たちではどうしようもできない暴力や悪意に対して物凄い無力感を感じているのだと思う。山野辺みたく復讐を考えた上で振るえる暴力の、はるか上を行くのがサイコパスのようなやつらのふる暴力だ。そんな奴らを痛い目に合わすのが、外側にいる死神であり物語を書くという行為なのだと思う。

    それと、お化け屋敷が怖い所か先に見てきてやるという流れから死ということについても先に見てきてやるっていう話の流れは物凄く勇気付けられた。
    大まかな話の流れがとても気分がいいものとは言えないため辛い本なのだけれど、物凄くいい本。

  • 久しぶりに読んだ死神シリーズ。
    参勤交代の話は笑わせる。

    しかし、怖い話だよなあ・・・
    ありそうで、いやだなあ~

  • あの千葉が帰ってきた!
    と、ワクワクして読んだが、前作ほどではなかったかなぁという印象。
    やたらとミュージックを押してきたのも可愛かったけれども、回数が多かっただけに「それでこそ千葉!」というよりお約束化してきたかなーと。
    終わり方は嫌いではない。好きなようにとらえておこうと思う。

  • 千葉さんのキャラが何とも言えず、いいなぁ。会いたくはないけどね。

  • 人気あるミステリー系の作家は大抵シリーズものをいくつか持っているものだけれど、伊坂さんは単発の作品が多くてシリーズもせいぜい2冊くらいずつ。これもその一つになるのか。悪質な殺人鬼という一種の専門家に、アマチュアの夫婦が命をかけていどむというお話なんだけど、命をかけているわりには「アマチュア」なので、失敗も多く、間の抜けた展開になる。そういう凄惨な設定の中での滑稽な失敗に加えて、敵でも味方でもない第三者の異能の人物(死神)が事態を予測不能な方向で掻き回す。死神が一緒についている間は死なない、ということが読者には知らされているので、サスペンスフルな展開も安心してみていられるのだが、所詮それは死神なので、死の影がずっとつきまとう。往年のフランスのフィルム・ノワールを、日本らしくかわいくポップにしたような印象。

  • 死神の千葉さん再登場。
    あいあかわらず人間との意思疎通が難しそうな千葉さん。
    山野辺夫妻との頓珍漢な(死語?)会話が楽しい。
    最後は山野辺さんの為に(本人曰く音楽を聴くために)千葉さんが漕ぐ自転車と本城のワゴンカーとのカーチェイス。
    登り坂で更に加速する様子に笑ってしまう。映画ならクライマックスになるところだ。何㎞あったのか判らないが、とうとう二人乗り自転車が自動車にダムで追いついてしまう。
    オチは伊坂さんらしい、ちょっと捻りのある結末。
    途中で死神の同僚さんが本城を20年延長した事が判りやきもきさせるが、ある意味納得。山野辺さんはちょっと可哀想な気はするがエピローグでほっとする。また会いたいな。(千葉さんに現実に会うのはイヤだけど)

  • 図書館で借りた本。

    幼い娘を殺した犯人、「あの男」は1年たった今なお、山野辺を苦しめ続けていた。娘の亡くなる瞬間の映像を巧妙に山野辺にだけ送りつけてきておいて、裁判では無実に持ち込み、あの手この手で嫌がらせをしてはゲームを楽しんでいるようだった。 実は「あの男」は、サイコパスと呼ばれる、25人に1人の、良心をもたない人間ではないかと気が付き始めるが、そんな山野辺をさらに巧みに罠屁を誘い込むが、山野辺には千葉と名乗る死神がついていた。
    娘を殺され、「あの男」のゲームに巻き込まれさらに精神的に追い詰められていく山野辺だったが、ちょっとずれている千葉の言動が悲壮感を和らげてくれている。
    最後にはとてつもないオチがあったが、なぜこのような目に遭わなければいけなかったのか、「あの男」がちゃんと考えてほしいと本気で思います。
    ところで、「あの男」って、誰だっけ?

  • 死神の精度の続編です。
    前回は千葉が関わった6つの人生の連作集でしたが、今回は長編。娘を殺され、その犯人は無期懲役。そんな夫婦のもとに仕事に来た千葉。6日間共に行動し、判定するのだが、さすが伊坂幸太郎!いろんな伏線が。
    犯人の本城に「見送り」判定が出て、どうなっちゃうかと思ったけど、「20年死なない」というのがまたミソでした!
    ただ個人的には、連作集のあの絡み合う感じの方が好きですが…

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著者プロフィール

1971年千葉県生まれ。東北大学法学部卒業。2000年『オーデュボンの祈り』で、「新潮ミステリー倶楽部賞」を受賞し、デビューする。04年『アヒルと鴨のコインロッカー』で、「吉川英治文学新人賞」、短編『死神の精度』で、「日本推理作家協会賞」短編部門を受賞。08年『ゴールデンスランバー』で、「本屋大賞」「山本周五郎賞」のW受賞を果たす。その他著書に、『グラスホッパー』『マリアビートル』『AX アックス』『重力ピエロ』『フーガはユーガ』『クジラアタマの王様』『逆ソクラテス』『ペッパーズ・ゴースト』『777 トリプルセブン』等がある。

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